■ ウサギのエンセファリトゾーン
(Encephalitozone Cunicrli)
ウサギのエンセファリトゾーン斜頚を主訴によく診られる疾患です。この疾患は特に全容が解明されている訳ではなく、獣医師により、診断基準は様々です。この項目は本院の治療経験 ・文献をもとに私感を述べます。
Encephalitozoneはミクロスポーシアに属します。細胞内寄生原虫でミトコンドリアと中心体を欠き、細菌とカビの中間に入る生命体で、Encephalitozone Cunicrli(感染部位・脳腎、感染動物・広範囲動物)、Encephalitozone hellem(感染部位・角膜、感染動物・鳥)、Encephalitozone intestinalos(感染動物・犬)、Encephalitozone bienus(感染動物・豚)など約100種ぐらいあります。
今回のテーマのEncephalitozone Cunicrliは伝染病表示でレべル2に入り、別名「微胞子虫」とも呼ばれ、以前は「寄生虫」に分類されましたが現在はゲノムの解析も進み「真菌」に分類されます。広範囲動物に感染能力はありますが、小動物臨床では、うさぎを中心に1990年ごろより感染が診られる疾患です。実験動物のうさぎより感染したとされていますが、正式な感染経路は不明です。Encephalitozone Cunicrliは
人での感染報告はありませんが、HIVの人は感染する可能性もあるとされています。
うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)疑いのうさぎは、
斜頚症状の場合、本院の経験で約70%は治りますが、奥の深い疾患です。
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うさぎのEncephalitozone Cunicrliライフサイクル
感染したうさぎが胞子を尿中に排泄します。別のうさぎが感染うさぎの尿に感染したフードや水の摂取する「経口感染(経気道感染もあり)」します。体内では、白血球の単球に感染して血液を流れ標的臓器の脳。腎臓 水晶体に運ばれ、マクロファージに変化する。末梢でマクロファージが崩壊して胞子をだします。感染後①臨床症状を出す。②不顕性感染、③ストレスを受けたら発症にわかれます。統計上は②が多いとされています。臨床症状を出すうさぎはエンセファリトゾーン感染より、その部位における肉芽腫性の炎症反応で悪くなるとされています。
臨床症状は炎症を生じた部分に依存します。斜頚(小脳症状はなので疑問な意見もある。)・白内障・後肢の不全麻痺・完全麻痺、尿失禁・腎不全・てんかんをおこすとされています。
また毛玉症などすべての疾患に関係していると主張する方もいます。
E.cuniculiの病原体の同定は不可能です、剖検でも不明です。病理では過去の非特異的炎症からE.cuniculiを推察しているとされています。
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●うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)の疑われる症状
斜頚
白内障
後肢の完全麻痺
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うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)の診断
うさぎの斜頚の原因には①末梢性と②中枢性があります。
①末梢性 内耳・中耳疾患
エンセファリトゾーンは中耳に感染はしません。斜頚は末梢性の場合は内耳・中耳を経由している第8脳神経の異常でおきると考察されています。
②中枢性
中枢神経が原因で、斜頚を起こす場合は、病変部は小脳にあります。小脳異常なら、振戦・不全麻痺・PCの欠損がみられるはずです。うさぎの斜頚にはこのような小脳中枢性の症状はありません。
エンセファリトゾーンはおもに大脳に感染することされています。もしうさぎの大脳にエンセファリトゾーンが感染したなら活動低下、精神の異常、振戦、 不全麻痺があります。また神経学的に大脳疾患では斜頚はみられないことです。エンセファリトゾーンは大脳には時間的に少ししかいないので病原体の検出は不可能です。
しかしエンセファリトゾーンを疑う疾患をみていると、横転などがみられ中枢性の疾患を疑う場合も多くあります。剖検では延髄よりエンセファリトゾーンを推測する病変が検出されています。
●ではどうする
うさぎのエンセファリトゾーンは斜頚だけでなく、その他、振戦など中枢神経系症状、腎疾患のある場合により厳密に神経検査をおこないます。
臨床症状 中枢性 末梢性
バランスの欠如 |
ある ある |
斜頚 |
ある ある |
横転 |
ある なし |
垂直眼振 |
ある なし |
精神状態 |
たぶん抑制 たぶん抑制なし |
企図振戦 |
可能性ある なし |
末梢性・中枢性は身体検査で判断が可能な場合もあり、「末梢性は予後よい。」「中枢性は予後悪い」とされています。
そのほか本院では頭部レントゲン検査で鼓室胞の状態の把握。エンセファリトゾーンIgG抗体を測定してエンセファリトゾーン症の診断をおこなっています。
正確にはCT・MRI検査により、中耳・内耳を除外しなければなりませんが、料金などの面もあり、現実性が低い検査になっています。エンセファリトゾーンの診断は本当に難しのが現状で、判断がつきにくい症例は、メロキシカムのような非ステロイドを投与して様子をみる方法も提案されています。
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抗体価の測定 IgG抗体の解釈
IgG抗体は過去に病気にかかった証明で今を反映する検査ではありません。
●抗体価 IgG抗体陽性
IgG抗体は感染3-4週に上昇して9週でピークになります。IgG抗体は現在の病気の存在より、過去の暴露を示唆します。しかし「E.cuniculiの臨床症状あり、抗体価陽性なら」 E.cuniculiと仮診断しても良いという意見も多くあります。
●抗体価 IgG陰性なら否定も
しかしIgG抗体は感染3-4週で上昇するので、4週間後には再測定をすすめています。(ペア血清)
●抗体価IgG抗体の解釈はさまざまです
陰性が陽性で症状に変化。→エンセファリトゾーン不顕性感染型
陽性が高くなり臨床症状ある→エンセファリトゾーン臨床症状型
抗体価かわらない→エンセファリトゾーンと別の疾患を疑う。
抗体価陰性。>40以下パスツレラを疑う
など獣医師により様々。抗体価の倍率は関係ない話も
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E.cuniculi、IgG抗体の全国調査
北海道、沖縄まで全337羽のうち約62%位が陽性でした。単独飼育の175羽のうち42%位が、複数飼育では162羽中62%位が陽性でした。
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●IgG抗体単独飼育の飼育状況と病気
無症状74羽中22%位、神経症状あり75羽中78%、その他疾患26例中40%が陽性でした。無症状121羽中70%。神経症状は30羽中88%、その他疾患11例中30%が陽性でした。
●IgG抗体複数飼育の飼育状況と病気
新規購入兎(7例陰性、2例陽性)従来うさぎ(17例陽性、2例擬陽性、2例陰性)新規の場合は陰性高い。複数飼育の場合、無症状でも不顕性感染がおおく、発症時の胞子排泄により、感染の拡大がある。隔離してかうことが重要であるかもしれない。
●IgG抗体30羽飼育している方の結果
IgG抗体新規購入兎(7例陰性、2例陽性)従来うさぎ(17例陽性、2例擬陽性、2例陰性)•新規の場合は陰性高いです。しかしその後新規購入兎の陰性も多く陽性に転回しました。複数飼育の場合無症状でも不顕性感染がおおく、発症時の胞子排泄により、感染の拡大があり、隔離して飼うことが重要と推察されます。尚、胞子は水環境に弱く、塩素で不活化します。
•E.cuniculiのIgG抗体は東京のモノリスにて測定可能です。
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