■ネコのミミダニ症、最近の見解(2022年)
ミミダニ、またはミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)は主にネコの外耳道の表面に寄生して黒い耳垢が沢山見られ、激しい痒みが生じる疾患です。
(なお本稿ではミミダニの呼称で統一します。)
ミミダニは種特異性が低いこと、また感染力が非常に強いため、ネコの他にもイヌ、ヒト (稀)などにも広がります。
宿主から宿主への接触によりおこります。子ネコのときは親から、成長してからは感染動物との接触によっておこります。なおヒトに耳ダニに感染した場合は一過性の皮膚炎を起こすことが多いそうです。
(写真1,2)当院のミミダの症例、右耳、左耳
症状
ミミダニの摂食で外耳道の上皮が刺激され、耳垢、血液およびダニの残骸で満たされ、『典型的なコーヒーかす、またコールタール状』と称される黒い耳垢が沢山見られ、激しい痒みが生じます。(写真1,2)
(写真3)本症例の耳垢
(写真4)顕微鏡所見 ミミダニ成虫(
Otodectes cynotis)
診断
これら耳垢を顕微鏡観察するとミミダニが見られ診断できます。(写真3,4)
珍しい症状
ネコでは大量の耳垢を認めても臨床症状を示さない症例や、耳垢は少ないが強い掻痒を示すネコも存在します。イヌは耳介からわずかな分泌物のみで掻痒を示す症例もあります。
外耳道以外でも首、尻、尾の粟粒性皮膚炎(異所性寄生)をおこすことも報告されています。
(写真5)レボリューション®
治療
上記しましたがミミダニは伝染力が強く、宿主特異性が低いため、複数動物を飼育してる場合、感染動物および接触した動物すべてに対して治療を行う必要があります。
卵→幼ダニ→第1若ダニ→第2若ダニ→成ダニと脱皮を繰り返し3週間で成虫になり、そして約2ケ月の成ダニ期間を動物の外耳で過ごします。
注意点としてどの駆虫薬も卵に効果ある薬剤はなく、成虫のみの駆虫になります。そのため最低3種間位を開けて2回以上必要になります。
なお宿主外の耳ダニの生存期間は最長で12日です。その期間、飼育付近や、ケージなどを高圧洗浄機による熱消毒をお薦めします。
駆虫薬の種類
2016年位まではイベルメクトン系を中心とした大環状ラクトンが主流でした。
当院は現在(2023年)でも上記のイベルメクトン系のレボリューション®を好んで使用して良い駆虫効果を示しています。
肩甲骨の間の皮膚に滴下してもらうタイプで薬剤は血中に吸収され耳ダニにも効能を示します。(スポットオン製剤)
当院では経験してませんが、ネコではいろいろな薬剤で治療しても虫体が消えない難治性症例も存在しているそうです。 研究会での報告では2017年に登場したイソオキサゾリン系薬剤の使用が推奨されています。(例、ネクスガード猫用®など)
ミミダニを放置しておくと
中耳炎、内耳炎に進行することが多く、治療しても耳はもとには戻らず大変なことになります。耳に痒みが多い場合や黒い耳垢が多い場合は早く動物病院にかかってください。
なお当院ではミミダニを駆虫したあとも、鼓膜が汚れている場合もあり診療を受けることを薦めています。
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