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ネコのマンソン裂頭条虫感染、セカンドオピニオン症例
最近保護施設から譲りうけた推定4歳の日本猫、雄です。他の動物病院でマンソン裂頭条虫がいると診断されたが、①1ケ月たって駆虫がうまくいかないこと、②マンソン裂頭条虫は人畜共通の疾患ですが、ヒトへの感染の説明がよくわからなかったため、セカンドオピニオンで来院しました。
マンソン裂頭条虫の特徴は駆虫剤
プラジクアンテルの投与量が
瓜実条虫駆虫の5-6倍量が必要な点で、プラジクアンテルが含有されているドロンシット注射剤®が投与量の調節が容易なため広く使用されています。この症例は前の動物病院では薬量が
瓜実条虫駆虫量のため、駆虫できなかったと考察しています。
マンソン裂頭条虫は発育に中間宿主にケンミジンコ(第一中間宿主)、カエル、ヘビなど(第二中間宿主)が必要なため、特に水田地帯、湖沼のある地域で屋外飼育しているネコに多く診られます。寿命はネコへの感染例で約1-2年です。当院のある川崎市多摩区では宅地化が進み、この寄生虫は希に来院がある位です。
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①第一中間宿主のケンミジンコに捕食されるまで
生活史は排便とともに外に排泄された虫卵は未成熟卵で中に卵細胞と卵黄細胞を含みます。虫卵はその後、水中に入いり、虫卵は数週間で絨毛をもつ、コラシジウム(内に六鈎幼虫をもつ)を形成します。光の刺激をうけると卵内から泳ぎだし、次に第一中間宿主のケンミジンコに捕食されます。
ケンミジンコは節足動物門甲殻綱キクロプス目の海産小動物の総称で、湖沼と地下水および海洋にいるプランクトンです。一般に体長 1~2mmで、本邦にも多くの属種が分布しています。捕食後、外皮を脱いだ六鉤条虫はケンミジンコの消化管を突破して体腔内に入り、約20日でプロセルコイド(200×80μm)になり、この状態で第二中間宿主に摂取されるのを待ちます。
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②第二中間宿主はカエル、ヘビ、鳥類(モズ、アヒル、ニワトリなど)、キツネ、タヌキ、イタチ、ネコ、ブタ、イノシシ、ネズミ、サル、ヒトなどで、沢山の動物がいます。
第二中間宿主の間で捕食しあう待機宿主感染も診られます。
感染したケンミジンコが上記の第二中間宿主に摂取されると、プロセルコイドは尾胞を失って、腸壁を通過して、腹腔、皮下、筋肉で、プレロセルコイドになります。
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③この状態で終宿主のイヌ、ネコ、キツネ、イタチ、ダヌキ、トラなど肉食獣がで第二中間宿主を食べると、腸管で急速に発達して、感染が成立します。そして10日後には糞便中に虫卵が診られます。
動物病院でマンソン裂頭条虫を診断する場合は屋外で飼育しているネコが多いです。注意点として、ネコの体内で
マンソン裂頭条虫の全ステージの生活史がある訳ではなく、終宿主のネコは第二中間宿主を捕食して虫卵を排泄するのみです。
プラジクアンテルを適量投与して駆虫しても、屋外でカエル、ベビなどを捕食することが癖になっているネコは約10日後に再感染してまたプラジクアンテルを投与しなければならないケースもあります。
理想は駆虫剤より、終宿主に第二中間宿主を食べさせないことが大切です。
マンソン裂頭条虫のいた便
この寄生虫に感染した動物は濃厚感染でないと下痢など消化菅症状はありません。感染すると少し元気なく、軽度の嘔吐が診られることが多いです。
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ヒトへの感染
ヒトへは①プロセルコイドに感染したケンミジンコを含む水を飲んだり(第二中間宿主)、②プレロセルコイドに感染した第二中間宿主のカエル、ヘビなどを生で食べることで感染します。(待機宿主)
以上の理由でヒトに感染するので、飼育しているネコにマンソン裂頭条虫が感染しても、直接ヒトに感染することは殆どありません。ただし便などは素早く片付けることは大切です。
感染した場合、ヒトの体内で成虫にはならず、プレロセルコイドのまま体内を移行します。そのため腹腔に近い、皮下識、腹膜下、鼠径部などに大きさ、0.5-70cm~0.3-1.0cmの結節を作るマンソン孤虫症になることもあります。
ヒトでの診断、治療は日本医師会などにお問い合わせください。
■この症例の続き、ネコ回虫も混合感染してました。
【他の動物の条虫】
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