■条虫、吸虫駆虫剤
プラジクアンテル(Praziquantel)とは
昔はこれらの条虫・吸虫の駆除剤は投与前後に絶食が必要だったり、また投与後には下剤が必要な薬剤も多くありました。
1985年ごろ犬猫用のプラジクアンテル(Praziquantel)が販売されてから副作用は少なく、絶食などに関係なく安心して投与可能になりました。
注意点は条虫、吸虫の種類により、プラジクアンテルの投与量が異なることです。
条虫・吸虫は神経系の発達が悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン等は効果を示しません。
プラジクアンテルの作用機序は 条虫の外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。
実際は駆虫剤投与より中間宿主と接触させないことが大切です。
◇プロファンダー®スポット 猫用 皮膚滴下剤
◇ドロンタール®プラス錠 犬用 錠剤
◇ドロンタール錠® 猫用 錠剤
これらの薬剤は線虫駆虫薬(エモデジプト、パモ酸ピランテル、フェンバンテル)との複合剤で良い点もあります。
しかし瓜実条虫の駆虫量でプラジクアンテルが製剤されており、高用量が必要なマンソン裂頭条虫、壺型吸虫駆虫には向きません。
また複数の寄生虫がいる場合はプレパテントピリオド(線虫類の48-56日、瓜実条虫14-21日)が異なり、再投薬時期に悩むこともあります。
■またプラジクアンテル単独製剤として
◇ドロンシット® 犬猫用 錠剤・注射
◇ビルトリシド® ヒト用 錠剤
■本院で診られた条虫、吸虫の種類と駆虫薬、用量、使用形態薬剤
◆マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)、
◆壺型吸虫(Pharyngostomum cordatum)
マンソン裂頭条虫の駆虫薬には瓜実条虫駆虫量の約6倍量、吸虫類は約5倍量の投与が必要なため、用量が調節しやすい注射剤が最適です。
注射がむりな場合は、力価の高い経口剤のビルトリシド®の使用も可能です。
薬剤より重要なことは、この2種類の寄生虫は第二中間宿主(カエル、ヘビなど)との接触を避けることです。マンソン裂頭条虫はヒトでも感染例が希にあります。
◆瓜実条虫(Dipylidium caninum)
注射・経口薬・皮膚滴下剤どれでも駆虫可能です。薬剤より重要なことは、中間宿主のノミの駆除が大切です。ヒトでも感染例があります。
◆文鳥の条虫
経口剤が便利です。しかし中間宿主が不明なため、完全駆除には至りません。
◆小型条虫
本院ではハムスターで診られました。経口投与も可能ですが、プロファンダー®スポットの皮膚滴下剤が便利です。ヒトにも希に感染例があります。
■薬剤各論
■プラジクアンテルの注射剤
◆ 商品名・ドロンシット®注射液 犬猫用
瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆除に使用される薬剤です。特にマンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆虫には高用量が必要なため、注射剤は投与量が調節でき使用しやすいです。
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■プラジクアンテル含有の皮膚滴下剤
◆商品名・プロフェンダー®スポット 猫用
成分名・線虫駆虫薬エモデプシド21.43mg/ml(1.5-3mg/kg)、条虫駆虫薬プラジクアンテル85.75mg/ml(5.4-9.8mg/kg)が含有され、グリセリン類似物質に溶解している皮膚滴下剤です。猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、多包条虫をほとんど同時に駆除可能です。
7週齢、500g以上の犬猫から使用可能です。とくに猫は経口投与が大変な場合もあり重宝な薬剤です。
プロファンダー®スポット 背中にたらすのみです。
猫回虫、猫鉤虫、瓜実受注の駆虫ができます
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■プラジクアンテル含有の経口剤
◆商品名 ドロンタール®プラス 犬用
犬用駆虫薬、3種類の合剤で生後2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除可能です。
瓜実条虫→プラジクアンテル
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用
で駆除を行います。
◆商品名 ドロンタール® 猫用
猫用で駆虫薬2種類の製品で、4週齢から使用可能です。
猫回虫、猫鉤虫はパモ酸ピランテル、
瓜実条虫はプラジクアンテルが駆除します。
パモ酸ピランテルは猫回虫の産卵前の未成熟な寄生虫に対しても高い駆除効果があります。
◆商品名 ドロンシット®犬猫用、 ビルトリシド®ヒト用
共にプラジクアンテルの単独経口剤です。
ドロンシット®は犬猫用で瓜実条虫感染の場合は便利な薬剤ですが、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆虫には猫で3錠も飲ます必要があり、利便性の良い薬剤とは言えません。
ビルトリシド®はヒトで使用されている条虫・吸虫の駆除剤です。動物用より力価が高いことが特徴です。
しかし猫では錠剤・粉薬は投薬に抵抗して涎をだして、飲ませにくい場合があります。
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