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犬の抗てんかん剤、フェノバルビタールからゾニサミドへの変換法
症例は犬7才 プードル 雄です。てんかんで、3歳時からフェノバルビタールを使用により、コントロールしてました。
2年前からてんかんのコントロールが上手にいかない為、フェノバルビタールにゾニサミドを追加投与しました。しかし。最近、てんかんがおさまらず、ほぼ毎日おきるため、本院に転院してきました。
(写真1、上 ヒト用ゾミサミド、エクセグラン® ・下 ヒト用フェノバルビタール)
フェノバルビタールは昔から犬のてんかんに使用されている薬剤ですが、長期使用により効能が薄れてくる傾向があり、必要に応じて、ゾニサミドなど他剤へ変換が必要な場合もあります。またゾニサミドは犬のてんかんに良い薬です。ヒト用(主に大型犬などに使用)もありますが、2年前に2社から犬用も販売されています。
大切なことはゾニサミドからフェノバルビタールに変更すり場合は注意が必要な点です。その理由はフェノバルビタールはゾミサミドを分解する酵素を作るからです。この症例は2年間もゾニサミドとフェノバルビタールを併用したことが、てんかんをコントロールできない主因と考えられます。また本症例は以前肝臓病に罹患したこと、またコレステロールが高い理由で他に2剤処方されていましたが、本院での血液、生化学検査では異常なく、これら薬剤もやめてもらいました。
まず長期使用の抗てんかん薬をやめる場合は徐々に減量する必要があります。そのためフェノバルビタールに加え、ゾニサミドを一時併用しなければなりません。大切なことは、2剤併用しててんかんがある程度コントロールが可能でしたらフェノバルビタールを徐々に減量して最後は辞める必要がある点です。フェノバルビタールの減量中、てんかんが再発し大変なこともありますが、2剤を併用を続けるとゾニサミドの効果が半減してしまいます。個体差はありますが、本院では1ケ月位をかけて、薬剤をチェンジしています。
(写真2 味が良いゾニサミド製剤のエピルス®)
本症例は初診時測定したゾニサミドの血中濃度は10.6μg/ml(推奨濃度10-40μg/ml)で最低ぎりぎりでした。この犬ちゅんは錠剤の投与が大変だったとオーナーが話していたので、本院では味が良いメイプルシロップが含有されているゾニサミド製剤の犬用エピルス®を処方しました。まずゾニサミドを併用しながら、フェノバルビタールを2週間かけて徐々に減量していきました。投与を変更して、2-4週間はときどきてんかんがおき、必要に応じて自宅でジアゼパムの坐薬や、また来院してもらいフルニトロゼパムの注射でてんかんを抑えました。本院に来院して4週間たって、ゾニサミド単独投与でてんかんはなくなりました。血中濃度はてんかんはなくなった4週間後、20.5μg/ml(推奨濃度10-40μg/ml)、8週間後、32.1μg/ml、12週間後、28.7μg/mlで、いずれも推奨濃度を維持できました。
また肝臓病もコレステロール値も薬剤を投与しなくても正常のままです。
本症例はエピルス®を使用しましたが。ゾニサミド製剤にはほかにヒト用エクセグラン®、犬用コンセーブ®などがあり、いずれも良い薬剤です。しかし100%犬のてんかんをコントロール可能な薬剤ではありませんので、使用の際は担当獣医師とよくお話しください。
最終更新:平成18年4月12日(火)