小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.26更新

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dog私の開業している地域で診る犬の消化管寄生虫を説明します。

都市近郊の動物病院では、寄生虫疾患は最近はあまり見なくなりました。
当院では線虫・条虫は減少傾向ですが、原虫類の感染は多く診ます。
またいろいろな施設の結果をみるとまだまだ寄生虫はいるようです。
ペットショップ・愛護施設などで1-2回検便が終了していても、生活史の関係で購入してから発見される寄生虫もいます。また屋外で保護された動物は寄生虫はいることが多いです。
 まれにヒトに感染する寄生虫もいますので、必要に応じて、かかりつけ獣医師で複数回の検便(直接法・遠心法など)また特殊検査を受けることをお勧めします


◆駆虫とは
 多くの寄生虫がいるので、その寄生虫にあった薬剤を使用します。
犬回虫・犬鉤虫は線虫類に属し、同じ薬剤で効果があります。
ペットショツプで一般的言はれる「駆虫」はこの犬回虫・犬鉤虫の駆除を指す場合が多いです。
 
 犬鞭虫も線虫類ですが駆虫薬の種類が異なります。
また線虫類の駆虫薬は親虫には効いても、卵には全く効きません。そのままにすると卵が孵り子虫が成長して再び症状を出します。
 そのため各寄生虫虫のプレパテントピリオド(犬回虫・犬鉤虫2-4週間、犬鞭虫2-3ヶ月)を考慮して駆虫薬を再投与が必要です。
 また原虫類の(ジアルジア・コクシジウムなど)はその原虫に適した薬剤を使用します。
 また条虫・吸虫類は適した駆虫薬に加え中間宿主と隔離が大切です。


■犬回虫 
 犬回虫本院でもよく診ます。

 成虫は「そうめん」状で雄雌がいます。
 交尾して写真のような形状の卵(顕微鏡所見)を生みます。
 
 犬回虫卵は1日の10kg雌犬の推定便量130g中に900-2000個の犬回虫卵を産みます。糞1gあたり154-1540個に相当します。
 直接法で検便を診るとプレバラート1枚当たり便量は2-3mgになり、0.3個-4.6個の犬回虫卵が見れる計算になります。そのため直接法で検便をしても検出率はよくありません。 
 浮遊法・遠心法の中で最も検出率のよいとされる硫酸亜鉛遠心法は便0.5gの回収率を50%として計算するとプレバラート1枚当たり39-390個の犬回虫卵が見れる計算になります。
 以上犬回虫は単回の検便では検出ができない場合もあり、診断には複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用することがベストです。
 また試験的に回虫の駆虫剤を投与して様子を診ることも可能です。 
  
 犬回虫卵は25度2週間で感染卵になります。鶏の回虫と異なり産卵の季節性はありません。
 土の中では犬回虫卵は1-2年生存します。 
 よって冬場に排泄された卵も春先まで生存して新たな感染源になります。
稀に人にも感染します。


■犬鉤虫Ancylostoma caninum  
  この寄生虫は私の開業している場所では多くは診ません。 

 犬鉤虫は体長約1-2cmの寄生虫が小腸の絨毛に咬みついて寄生しています。
 鉤虫は口に3対の大きな鉤があるのが特徴です。
 この鉤があるので吸血の際に小腸壁に傷がつき
①小腸壁からの出血、
②栄養素の吸収不全がおきます。
 そのため動物病院には血便を呈して来院します。
鉤虫の栄養源は血液の血漿成分です。

◆犬鉤虫症の感染経路は、経口感染・経皮感染・経乳感染・胎盤感染があります。 
 犬回虫症と異なる点は排泄された卵が外界で孵化・脱皮して感染幼虫になる点です。感染幼虫は外界でも生存可能で、再感染源になる可能性がありますので、罹患した犬は定期的に周辺環境の熱湯消毒などして清潔に保つ事が重要です。
(感染幼虫は高温や低温、乾燥には弱いため)

 母犬から胎盤や母乳を介して感染することがあるため、子犬でも発症することがあります。
 体の未熟な子犬が鉤虫に大量に寄生すると、重い貧血を起こし、命に関わることもあります。

 鉤虫は犬鉤虫は生存力が高いため、散歩コースを変えるなどの対応が必要です。
 実際あったケースで、地域のOO公園に散歩にいく犬は犬鉤虫に感染するケースも。

 人には感染幼虫が皮膚から侵入し、皮膚炎を起こすことがあります。幼虫移行症に発達する場合もあります。

 駆虫薬は親虫には効いても、卵には全く効きません。そのままにすると卵がかえり子虫が成長して再び症状を出します。
 そのため犬鉤虫のプレパテントピリオド(経口感染15-26日、経皮感染17-21日、経乳感染10-14日、胎盤感染10-14日)、(参考 猫鉤虫の経口感染14-21日)を考慮して駆虫薬を再投与してください。


■犬鞭虫 
 この寄生虫は私の開業している場所では多くは診ません。

 犬鞭虫 虫卵 70-80×37-40μmグラタン皿様  
、犬鞭虫 成虫 雄40-50mm 雌50-70mm
    
 
 犬鞭虫は7ヶ月以上の犬で感染が診られます。軽度では無症状です。重症では激しい下痢、血便を呈し生命に関わることも生じます。
 虫卵検出は少数寄生で下痢が長く続くと厄介な場合がある。都市近郊の動物病院は「犬鞭虫はいない」ことを前提に考える傾向が有り、慢性下痢が治らず二次診療施設を訪れた際、意外に検出されるのがこの犬鞭虫です。
 犬の慢性下痢では検便は数多く行う必要がある。感染ルートは虫卵の直接経口感染でおきます。
 排泄された犬鞭虫卵は約10日で感染型虫卵になります。外界に強く比較的高温下で発育する。しかし4度以下では発育はしません。土壌では5年間は感染能力がある報告もあります。一度感染すると1年間は便中に虫卵の排泄がみられ、家の庭、犬が集まる近所の公園が汚染源になり1回の駆虫では完全に除去はできないことが多い。そのため犬鞭虫のプリパテントピリオドの2-3ヶ月を考慮し、ドロンタール®プラス、フェンベンダゾールの再投与、またフィラリア予防にリンクして月1回投与のミルベマイシンを2倍量にして経過観察する必要がある。

 犬鞭虫卵の産卵能力と検便の検出率について述べます。10kg雌犬の1日の推定便量130g中に975-1950個の犬鞭虫卵を産みます。
糞1gあたり7-15個に相当します。
 
◆直接法で検便を診るとプレバラート1枚当たり便量は2-3mgになり、0.01個-0.05個の犬鞭虫卵が見れる計算になります。そのため直接法で検便をすると検出率は良い検査とはいえません。
 
◆浮遊法・遠心法の中で最も検出率のよいとされる硫酸亜鉛遠心法は便0.5gの回収率を50%として計算するとプレバラート1枚当たり1.8-3.8個の犬鞭虫卵が見れる計算になります。
 
◆そのため犬鞭虫は単回の検便では検出が大変であり、診断には複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用する必要があると考えられています。

◆また犬鞭虫卵は外界に強く、3-6ヶ月感染能力があります。
庭で犬ちゃんを飼育されている方が犬鞭虫場合に感染した場合は、定期駆虫が必要です。


■犬のコクシジウム 
 コクシジウムは
①頻回の下痢で発見されたり
②また偶然検便で診られることもあります。

 特に子犬で下痢が続く場合は、脱水して死亡する場合もありますので注意が必要です。
 
◆駆虫にはサルファ剤を使用します。 
◇サルファ剤投与の主な効果は、生体の免疫が成立するまで増殖を抑えることで コクシジウムの生活環の遮断です。
 コクシジウムを直接殺滅する訳でありません。 
 そのため動物により免疫状態は異なるため薬用量・期間の報告は異なります。



■ジアルジアはランブル鞭毛虫に起因する疾患です。  
 
◆注意 人にも感染する可能性があります。
 犬ちゃんを飼育の際は必ず検査を受けてください。

◆ジアルジアは全国14ヶ所371頭27種類の犬種の調査では、陽性率は6.7-59.3%と高い値を示しています。
(年齢別では1-9ヶ月 54.9%、成犬では30.9%がジアルジア陽性です。 だぶん一番犬が感染する寄生虫と推測されます。)

◆症状
 ジアルジアの吸着円盤が消化管の管腔内壁に付着します。
 腸管の栄養を吸収する上皮に吸盤が付着するため、食べ物の吸収がうまくいかず、浸透圧下痢をおこし脂肪便になることもあります。

◆生活環
 ジアルジアの生活環は単純で栄養体(トロフォゾイト)とシストの2形態からなり、感染様式は典型的な糞から口への感染で,シストを経口摂取することにより感染します。

◆診断
 顕微鏡では栄養型(トロフォゾイト)は直進性運動をします。
またシストはラグビボール様に診られます。
 
◆治療
 抗原虫薬(メトロニダゾール Metronidazole)の投与で70%はよくなります。
 残りの30%はメトロニダゾールの同族体、誘導体の薬剤、また一部の抗生剤を使用しています。

 また年齢から診ると、90%の犬は1歳位になると自己免疫力で治癒する場合が多い意見もあります。
 
 しかし原虫の感染数が多かったり、飼育環境が劣悪だと、軟便が継続して、駆虫薬も効果を示さない場合もあります。
 
 新たな薬剤を追加したり、環境中のシストの除去のため、環境の熱消毒・乾燥が必要です。
 ジアルジアはもともと水中で生活する原虫で乾燥には弱く、シストであってもただちに死滅し、感染力はなくなるそうです。

■硫酸亜鉛7水和物による浮遊法
 硫酸亜鉛7水和物33.3g/水道水100ml(比重1.18)①液を作成、スピッツ管に便O.5gと①液を1/3-1/2位加え十分攪拌する。
 ガーゼ1枚で別のスピッツ管にろ過し、ろ過液に①液を加え管口から1cm位に調節する。
 2000-2500rpmで5分遠心すると虫卵、シストは最上層に浮遊する。管口よりかずかに盛り上がる程度まで①液を加え、ただちにカバーガラスを乗せて5-10分間後に鏡検する。
 硫酸亜鉛12水和物の使用は禁忌、必ず7水和物を購入のこと。



■3ヶ月軟便の犬が来院しました。 
 寄生虫疾患とは異なりますが、犬細菌性下痢が疑われた症例です。3ヶ月軟便の犬が来院しました。
グラム染色にて、長桿菌が診られたため抗生剤を投与しました。











投稿者: オダガワ動物病院