■犬の避妊手術(雌)について
統計上は避妊手術をしてストレスを少なくした避妊した雌のほうが、未避妊の雌より多少長くいきるというとは知られています。私が開業したころは(1991年)「外で飼育している犬が発情して、夜に壁越しに雄犬が入り交尾して、その後妊娠に気づかず、朝起きたら子供を生んでいて電話を頂いた経験もあります。」このような経験をされた方が、避妊手術で来院する場合もありました。しかし今本院の付近でもまず野良犬は見ませんし、上記の理由で避妊することはなくなりました。
犬の初発情は4-6ヶ月位に初めては起こります。最初は発情は年2回おきるので半年に1回発情があると勘違いされている方もいますが、加齢と共に7-8ヶ月と徐々に次回発情は長くなり7-8才頃には年1回になります。(犬種や個体差はありますます。)またヒトと異なり閉経はありません。生きている間は性周期はおきます。稀なケースですが16歳の犬が子供を産んだケースもあります。
犬は種を残すことが目的で生まれてきています。人に飼われる為ではありません。そのためこの年1-2回しかない発情期は種を残す意味では交尾のチャンスを探っています。ペットは交尾したいけど、チャンスがない、このストレスは大変なことなので、避妊手術を薦める意見が多いです。そのため避妊した雌のほうが穏やかにすごせると考えられています。
また長所として子宮・卵巣疾患・乳腺腫瘍(注意1)・偽妊娠、別名想像妊娠(注意2)・糖尿病(注意3)などの未然の予防になります。手術も比較的安全におこなえることではあります。
しかした避妊手術をしないから犬が生きてゆけない訳ではありません。全身麻酔が必要なので幼くして大病のある犬には薦められません。手術後、肥満になることが多いことが欠点です。食事量、体重測定などケアーしないと、肥満になり、多くの病気を併発しやすくなります。犬ちャんがポッチャリならいいですが、肥満(ヒトで言うお相撲さんクラス)になると早く死亡することが多いので注意が必要です。
以上、メリットがデメリットより多くあるので、避妊手術は昔から推奨されることではあります。手術を希望されるかどか、上記の記載などを参考の上決め手ください。診察されてインホームドコンセントをとって、手術に入ることをお薦めします。最近は避妊・去勢手術でも術前に血液検査など術前検査を希望される方は多くなりました。
(注意1)犬の乳腺腫瘍の疫学調査は学会などで多く報告されており雌犬500頭中に1匹の割合で発生します。1歳以内に避妊手術をすれば、大部分が未然に防げるとされています。 犬の乳腺腫瘍の半分は良性で、半分は悪性(癌)です。
(注意2)偽妊娠(別名想像妊娠)を繰り返すと将来的に子宮蓄膿症、乳腺腫瘍になりやすい意見もあり、避妊を勧める場合は多いです。ただしすべての犬が罹患する訳ではありません。偽妊娠(想像妊娠)はすぐ死亡する疾患ではありませんので、犬の寿命、健康状態、年齢をよく考えて決めてください。
(注意3)黄体ホルモン(プロジュステロン)がインスリン分泌を妨げます。そのため糖尿病は雌に多い疾患です。
避妊により黄体ホルモンの分泌は抑えられます。糖尿病の雌犬はインスリン治療が安定したら避妊手術を行うことは良いでしょう。ただし犬の状態、年齢をよく考えて決めてください。(備考・糖尿病の発症はさまざまな原因があり、避妊手術は予防の一因はなりますが、避妊雌でも糖尿病を発症する場合はあります。)
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【避妊手術・去勢手術】
■犬の避妊手術(雌)
■犬の去勢手術(雄)
【猫・避妊手術・去勢手術の助成金】
■ 本院は川崎市獣医師会に所属しいる関係で
時期は限定されますが、猫の去勢・避妊手術に
①川崎市、②川崎市獣医師会、2団体の補助が可能です。
■川崎市獣医師会
■川崎市健康安全部生活衛生課
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