小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.26更新

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tiger検便で発見される寄生虫・原虫・細菌を本院の経験に沿って記載しました。 


 私の動物病院のある川崎市多摩区はJR川崎駅から離れた川崎市北部に位置しています。
 
 複合商業施設のような大きな建物はありません、また田んぼも多くありませんが、昔ながらの商店会があり、近くに多摩川が流れ、藤子不二雄ニュージアムに代表される緑地公園のある場所で開業しています。

 このような地域なため寄生虫疾患の来院は多い訳ではありませんが、頻度のある虫卵として犬回虫猫回虫ウルザネ条虫・原虫類がいます。そして希にマンソン裂頭条虫壺型吸虫の症例が来院します。
 犬鉤虫・猫鉤虫・犬鞭虫はあまり診ません。

■検便で発見される寄生虫・原虫・細菌を本院の経験に沿って記載しました。
 私の動物病院のある川崎市多摩区はJR川崎駅から離れた川崎市北部に位置しています。
 
 複合商業施設のような大きな建物はありません、また田んぼもありませんが、昔ながらの商店会があり、近くに多摩川が流れ、藤子不二雄ニュージアムに代表される緑地公園のある場所で開業しています。

 このような地域なため寄生虫疾患の来院は多い訳ではありませんが、頻度のある虫卵として・犬回虫猫回虫ウルザネ条虫・原虫類がいます。そして希に・マンソン裂頭条虫壺型吸虫の症例が来院します。
 犬鉤虫・猫鉤虫・犬鞭虫はあまり診ません。

 寄生虫は以前に比べて最近はあまり見ないと感じてますが、関東の施設の結果をみると、まだまだいるようで注意は必要です。

①埼玉県の動物愛護施設のデーターですと
 猫は全体の42.1%(456/1079)に寄生虫がいました。(1999-2007年調べ) 猫回虫・猫鉤虫・マンソン裂頭条虫・コクシジウム・クリプトスポラジウム・壷型吸虫の順に多いそうです。
 
②東京都中野区周辺の猫の寄生虫調査では、 寄生虫陽性率は48%で、猫回虫のみ50.1%、猫回虫+コクシジウム33.3%、猫鉤虫+コクシジウム8.3%、コクシジウムのみ8.3%あり、猫は回虫とコクシジウムが多いみたいです。
 
また本院の経験では6ヶ月から1歳の間にトリコモナス性の下痢も多いとおもいます。

■人と寄生虫 
 医学部の寄生虫学教室(医学部では医動物の呼称)も10年前より減少しており、特に都市部では寄生虫はないと考えている方もいるとおもいます。
 
 しかし人の大学病院に「寄生虫外来」の看板をみるように、油断していると寄生虫疾患は人に罹患します。そして罹患した場合は難しい状態になっています。
 また動物の毛にアレルギーのある方はの動物飼育は薦められません。

 そしてその原因は
①人が豚・鳥・牛の生レバーを食べたり、
②ペットと過度なスキンシップにより偶発的な感染(ペットとキス、同じ食器で食事を食べるなど)
③不明
で人に動物の寄生虫の感染がうつると分析されています。
減少はあっても絶滅はできないのが寄生虫の特長です。

①の原因は防げます。大切なことはペットとは節度ある関係を保って生活することです。

 ◆腸内の細菌 
 下痢便をグラム染色すると、腸内細菌の異常がおき、グラム陽性の長桿菌・芽胞菌が多く診られます。
 クロストリジウム属(Clostridium)の増殖と仮診断して抗菌剤を使用すると良い成績があがっていますが、再発の多い場合は基礎疾患を考慮しなければなりません。



■猫回虫Toxocara cati 

使用薬剤
■レボリューション® ファイザー株式会社、皮膚滴下剤 
成分名 セラメクチンが猫回虫、ノミ、耳ダニの駆除とフィラリア予防が可能です。
子猫でノミと回虫がいることは好んで使用します。
6週齢の子猫から投与できます。


■商品名 プロフェンダー®スポット(バイエル薬品、皮膚滴下剤)
成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
 7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
 
  両薬剤とも頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。 
 

■ドロンタール®(バイエル薬品、錠剤・駆虫寄生虫はプロフェンダースポットと同じ) 
 猫は経口投与が大変な場合もあります。虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。


■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違 
 猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現

◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダースポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
 ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。

◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2週間あけて、2回の投与は必要です。
  
稀に人にも感染します。2006年調べで1例(人が動物の生肉を食べた場合は除く)



■猫鉤虫 
 猫鉤虫は本院の付近では多くは診ません。成虫は1-2cmで白色の細長い虫で小腸粘膜に食いついて猫の血液を吸って栄養にしています。

 そのため動物病院来院時は軟便や血便の症状を多く診ます。
 また重症化すると貧血、栄養不良を伴い子猫は死亡する場合もあります。


■感染経路 
 糞便とともに外界に排出された虫卵が第3期感染幼虫となり経口感染します。
 また鼻粘膜。皮膚の毛穴から体内に入り感染することもあります。
 猫回虫同様、胎盤感染、経乳感染もします。
 そして何れも小腸に寄生します。

■診断
 検便で可能です。(写真は検便で診られた猫鉤虫卵です。)

■駆虫
回虫と同様の薬剤で可能です。



■猫のコクシジウムcoccidium 
 猫のコクシジウムは無症状で偶然、糞便検査で発見されるケースが最近は多いです。
しかし、頻回の下痢で来院してコクシジウムが陽性の場合は死亡する可能性が高い寄生虫です。


■コクシジウムの駆虫はサルファ剤の投与になります。
 しかしサルファ剤はコクシジウムの特異的駆虫剤ではありませんが無性生殖生活環の最後部分のtrophozoiteからschizontの発育最終段階の抑制に有効です。
 免疫状態は猫のより異なり、環境の掃除も必要なので投与期間は様々です。最低7日はかかります。

 具体的にはサルファ剤はスルファジメチキシン(アプシード®)よりスルファモノメトシキン(ダイメトン®)製剤が良いように感じています。
 
 他にトリトラズリル®の投与も可能かとおもいますが、筆者は猫では経験はありません。


■環境 
 猫の糞に残っているコクシジウムの卵(写真)が猫砂に付いてて、卵の付いた足を舐めて再感染がおきます。
 糞は1日経たないと感染型になりませんが、早く始末することが大切です。
 また消毒薬には抵抗を示すので使用した器具は熱湯などかけるのが最適です。駆虫は時間がかかる場合があります。 



■猫トリコモナスTrichomonas fetus  
 猫トリコモナスは動物病院の現場では、慢性の大腸性下痢になり来院します。
 本院の経験では6ヶ月-1年の間の猫がこのような症状で来院します。
 
◆良く動物病院で使用する直接検便ではトリコモナスはやっかいなことに14%と検出率がよくありません。 
 
 そこで費用はかかりますが、RealPCR検査という遺伝子検査をする場合もあります。
 この遺伝子検査ですと86%のトリコモナスは診断可能です。
 しかしRealPCR検査は高いので本院では殆どオーナーの了解がとれません。
 
 そこで、私が猫トリコモナスに駆虫効果があると想う薬剤のトライアル治療もしているのが現状です。

 このトリコモナスがなぜ大変かといえば、抗原虫薬の定番メトロニダゾールが効能を示さないことが多いからです。 
 また100%治る薬剤はない考えられています。本院でも手探り状態で治療薬を選択しています。
 
 またトリコモナスの排泄便は、次の感染の源になります。すぐに処理する必要があります。
 しかしシストはないので、乾燥下での状態で長く生きられません。
 猫が湿った糞便をさわったときに二次感染は多いとされています。多頭飼いの場合は特に注意が必要です。
 
 今回の症例はタイミングが良く、検便でトリコモナスとおもはれる虫体が発見されました。動きが早く確定には至らなかったので、確定診断のためライトギムザ染色して診断しました。(写真)

 トリコモナスは臨床症状がないときは、感染猫の90%が無治療で2年以内に改善しますが、その後生涯キャリアとなります。

 この症例は運よく駆虫薬を投与して2日目には下痢が改善しました。その後5年たってますが再発はありません。



■条虫類は究極の寄生虫と言われています。  
 なぜかと言えば体壁と動物の腸の体壁は同じような構造をしています。そのため条虫は動物の餌を「少しだけ頂く」ことで生活をしています。
 この「少しだけ頂いく」がポイントで、「多く頂ければ」動物は下痢・栄養失調などおこし、条虫自身も寄生体を失い一大事です。
 しかし「少しだけ頂ければ」動物の下痢・栄養失調は少なく、動物も生活はでき、条虫にとっても無条件に栄養が採れて、好都合です。

 そのためウリザネ条虫・マンソン裂頭条虫は固有宿主の感染では濃厚感染でない限り、下痢など臨床症状が少ないことが特長です。

 ウリザネ条虫は体節を排泄するので、「米の様な虫がいる」主訴で、
 マンソン裂頭条虫はカエル・ヘビを補食する癖のある犬猫に検便をして発見されます。
 
 最近これら寄生虫はノミ駆除剤の進歩、また室内飼いが多いので本院ではあまり診ません。




■ウリザネ条虫Dipylidium caninum  
 ウリザネ条虫は円葉条虫類に属し頭頂に吻があります。それに鉤を有するものもあります。ノミが中間宿主になり重要なウエイトを示します。
 
 ウリザネ条虫は体壁に子宮孔(産卵孔)がなく、片節内に虫卵は貯まり、組織内の代謝活性が低下して、老熟片節が写真のように契れて、便と共に排泄されます。
 すなわち殆どが変節の中に卵が含まれたまま体外に出されます。

 そしてこの変節が外界で壊れて虫卵が露出します。

 殆どはこの変節を「米粒のような虫が糞についてきた」という主訴て来院します。
 よって診断は検便ではなくオーナーの主訴です。
 
 なお腸管内でこの変節が壊れ、検便で検出可能な場合も希におきます。

 ノミが中間宿主です。排泄された虫卵はノミに補食され体内で育ちます。

 犬猫はノミが感染すると皮膚を口でグルーミングします。そのとき経口感染します。
 
 よってノミとウリザネ条虫の2つの駆虫が必要です。

 ウリザネ条虫の駆虫にはプラジクアンテルが最適です。注射・経口・皮膚滴下などの方法が可能です。

 ノミはフィプロニール・セラメクチンなど皮膚滴下剤、経口剤を投与しています。

 ウリザネ条虫は犬猫も臨床症状は少なく、診断がオーナーの目視が中心なので、感染率が過小評価されています。
2013年8月に開催されたバイエル社のゼミでは解剖で発見された犬が事前の病理では、殆ど発見されてなことが報告されていました。
 人のも感染する可能性があり、積極的な定期駆虫が理想です。
 ◆稀に人にも感染します。


■マンソン裂頭条虫 Diphyllobothrium mansoni
 マンソン裂頭条虫は擬葉条虫類に属し、頭節の背腹両面中央に縦に走る扱溝があることが特長です。
 吸盤、吻など固着器官はありません。
 
 マンソン裂頭条虫は体壁に子宮孔(産卵孔)があり虫卵が腸管内に排泄され、ウリザネ条虫のように体節の排泄は殆どありません。
 
 そのため診断にはウリザネ条虫のようにオーナーの目視ではなく検便が必要です。虫卵は未発育の状態で排泄されます。 

◆生活史 
 中間宿主は2つもちます。虫卵から出た幼虫はミジンコの体内で成長し(第一宿主)、次にカエルの体内で成長し、犬猫に食べられることを待ちます。(第二宿主)
 また、カエルがヘビに食べられた場合はも同様に、理論上は犬猫へに食べられることを待ちますが、ヘピを食べる犬猫に遭遇した経験は私はありません。(待機宿主)。

◆注意点 
 駆虫はプラジクアンテルを使用します。瓜実条虫の約6倍量で可能です。1回の駆虫でほぼ完治はします。投与量が多くなるので、注射液の使用が最適です。
 しかしマンソン裂頭条虫は再寄生がら虫卵排出まで7-10日と早く、外に出てカエル・ヘビを食べる癖のある犬猫は注意が必要です。
 そのため7日以上たってマンソン裂頭条虫卵が検便で診られた為、駆虫薬が効果ないと勘違いして本院に転院されてきた症例もありました。
 プラジクアンテルの6倍量は駆虫剤としては治療費は高額になりますので、可能なら外に出ないなど、この点は十分な配慮が必要です。

 本症例は推定4-5才の雌猫です。多摩川を散歩していたら猫を保護したので自宅で飼育するため、健康診断目的で来院しました。
 検便でマンソン裂頭条虫が診られため、プラジクアンテルの6倍量の投与をしました。その後7日後、14日後と検便では陰性になりました。その後室内のみで飼育されていると聞いています。

◆人への感染 
 稀に人にも待機宿主として感染します。
 待機宿主の感染なので、犬猫から直接感染ではなく、主にカエルの刺身・加熱が不十分なヘビ料理を食べての感染になります。
 人に感染すると、人の腸はマンソン裂頭条虫の生育には適していません。そのため腸管から逸脱して、皮膚や肝臓、酷いときは眼などに感染します。
 この状態をマンソン孤症と定義され、駆虫薬プラジクアンテルは効果なく、処置は外科のみになります。



■壺型吸虫
◆生活史 
 中間宿主は2つもちます。 

◆駆虫 
 駆虫はプラジクアンテルを使用します。瓜実条虫の約5倍量で可能です。投与量が多くなるので、注射液の使用が最適です。
 水田地帯や湖沼川のある地域では第二中間宿主が類似しているためマンソン裂頭条虫と混合感染がよく診られます。



■クロストリジウム属(Clostridium)の増殖疑い
 3ヶ月の猫で購入して1週間たったところ、軟便になったため来院しました。
 写真はグラム染色です。
 グラム陽性の長桿菌が多く診られました。
大きさのみでは確定診断はできませんがクロストリジウム属(Clostridium)の増殖が疑われます。

 そこでクロストリジウム属に抗菌力のある薬剤を処方しました。
3日位で回復はしました。






 



投稿者: オダガワ動物病院