小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2015.04.20更新

オダガワtiger猫回虫(Toxocara cati)


 当院では多摩川など屋外で保護された猫で診ます。ペットショップから猫を購入された場合はまず診ることはありません。希にヒトに感染する可能性もあり、発見したらすぐに駆虫することがベストです。
 家庭では下記のcamera写真Ⅱ,Ⅲの幼虫・成虫状態で発見されます。動物病院では顕微鏡下でcamera写真Ⅰの虫卵の状態でも発見できます。虫卵は1日に2万ー20万個産みますが、産む日と産まない日があり、また便に均一に分布している訳ではないため、1回での検便での検出率は約70%位とされています。


cameraⅠ)猫回虫,虫卵、68-75×60-67μm 顕微鏡所見 

 
cameraⅡ)嘔吐した猫回虫第4期幼虫
   

camera
Ⅲ)駆虫薬で排泄後の猫回虫成虫、雄3-7cm 雌4-12cm ---------------------------------------------------------------------

あ
 猫回虫は ①直接被嚢子虫の経口感染、②経乳感染、③待機宿主の補食から感染し幼猫期に多い寄生虫です。 直接被嚢子虫経口感染した場合、猫は犬と異なり、年齢に関係なく気管移行型、体内移行型の両方が起こることが特徴です。

 気管移行型camera写真Ⅳ)は未分化卵で外界に排泄したのち①10-30時間で幼虫形成卵になります。②この幼虫形成卵を経口摂取すると1-3時間で小腸にて孵化します。③そして2日間で肝臓・肺に移行します。④6日以後に肺へ移行(第3期幼虫)⑤10-21日で胃・腸に移行(第4期幼虫)します。(cameraⅡ)⑥そして28日で成虫が出現します。⑦56日で虫卵が排泄されます。猫免疫不全ウィルス感染の症例で回虫卵が時々発見されるのはこの経路のためです。  

 温度によりますが、糞は1-3週間ぐらいたつと感染卵に変わりますので便は随時処置が必要です。排便してすぐに処理をすれば、他の猫への感染は未然に防げます。プリパテント・ピリオドは諸説ありますが48-56日位で犬回虫よりやや長めの報告が多いです。

 体内移行型camera写真Ⅳ)犬と同じような経路を採ると推察されます。しかし猫回虫は胎盤感染がなく、子猫が乳汁を飲み腸管内で直接成虫になる経乳感染が起きます。 猫は補食動物なため待機宿主(齧歯類など)からの感染が多いとされているが、現在動物病院に来院する9割程が室内飼いのため少なくなっていると考えています。待機宿主からの感染した場合も幼虫は腸管で直接成虫に成長します。寿命は犬回虫と同様1-2年です。

あ

camera写真Ⅳ)

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tiger駆虫剤
■レボリューション® ファイザー株式会社、皮膚滴下剤 

成分名 セラメクチンが猫回虫、ノミ、耳ダニの駆除とフィラリア予防が可能です。子猫でノミと回虫がいることは好んで使用します。6週齢の子猫から投与できます。

あ
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■商品名 プロフェンダー®スポット(バイエル薬品、皮膚滴下剤)
成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
 7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
 
  両薬剤とも頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。

あ当院では駆虫にプロヘンダー®スポットを使用します。猫用の薬剤です。
あ
肩甲間部の皮膚に滴下すれば、終了です。簡単にできます。

 4週間あけて2回の投与を薦めています。 プロフェンダー®スポットは主に猫回虫成虫のみに効能を示します。 またほかに④⑤の幼虫ステージと⑥の成虫に約94%の効果を示します。

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■ドロンタール®(バイエル薬品、錠剤・駆虫寄生虫はプロフェンダースポットと同じ) 
 猫は経口投与が大変な場合もあります。虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。--------------------------------------------------------------------

■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違 
 猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現

◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダースポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
 ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。

◇しかしどちらの薬剤も猫回虫にはプレパテントピリオド(経口感染 55-60日、乳汁感染35-42日)を考慮して、2週間位あけて、2回の投与は必要です。
  稀に人にも感染します。2006年調べで1例(人が動物の生肉を食べた場合は除く)


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最終更新:平成27年4月20日(火)5時15分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あdogイヌのコクシジウムcamera


 生後4ヶ月のダックスフンドが東京都世田谷区からみえました。
 下痢など臨床症状はありませんが、幼イヌなため検便もしたところコクシジウムが発見されました。

 この寄生虫は原虫類に属し、イヌの糞便中に排出したコクシジウム卵がイヌの口から入ることで感染します。幼イヌに多く、そのため子犬を多頭飼育している施設では水平感染がおきる可能性が高く注意が必要です。

 コクシジウムはアイメリアとイソスポラと呼ばれる2種類があり、イヌでは後者が原因となります。
 急性の場合は、水様性の下痢をする場合が多く、粘液や血がまじった下痢もすることもあり脱水で死亡する個体もいます。しかし本症例のように目立った症状が現れないケースもいます。


あcamera検便でみられたコクシジウム

 治療はサルファ剤を投与しました。またイヌちゃんが使用しているものは可能なものは熱湯消毒してもらいました。
 サルファ剤は駆虫には1-2週間(またそれ以上)薬剤を飲ます必要がありますが、1回で駆虫可能なトルトラズリルの投与をする場合もあります。本院でイヌに使用した経験では副作用なく、良好な駆虫効果が得られていますが、まだ症例数が少なく、詳細は不明です。


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最終更新:4月20日(月)16時9分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あchick文鳥(学名:Padda oryzivora)の条虫(Taenia)感染


あ

 条虫感染は文鳥で稀に診られます。写真のように便に『しらす』がついた状態で、家庭で発見されて、来院するケースが多いです。

■条虫と中間宿主
 条虫感染は中間宿主の昆虫類の経口摂取で成虫になります。犬猫のウリザネ条虫はノミ、鶏条虫(膜用条虫)ではアリ・ゴミムシ・トビムシ・ミミズが中間宿主であることが判明しています。しかし文鳥は中間宿主が不明です。

■文鳥条虫の予後  
 条虫駆虫には駆虫剤と中間宿主の撲滅が大切です。中間宿主が不明なため、この症例も駆虫剤投与で条虫はいったんいなくなりましたが、3ヶ月後、再発し、その後何度か駆虫剤処方を繰り返しました。


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;最終更新:平成27年4月20日(月)10時30分

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あ
■烏骨鶏の回虫症
回虫症は鳥類では烏骨鶏のみでなく、アサクサインコ・オカメインコ・ハトなどで診られます。


 
烏骨鶏が血便をするとこことで、川崎市宮前区より4羽がみえました。
 
 
持参された便、血便の状態でした。

 
 どの烏骨鶏かかりませんが、持参された便は血便をしていました。検便ではコクシジウムと回虫が発見され血便の原因はどちらの虫卵か不明です。両方の駆虫剤(回虫はパモ酸ピランテル、コクシジウムはトリトラズリル)を4匹分処方しました。
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 烏骨鶏の回虫は楕円形を示します。
しかし円形の回虫もいました。
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10日後の再来院時の検便で回虫は陰性になりました。
鶏回虫のプリパテント・ピリウド(37日)を考慮して、20日後に再駆虫をしました。

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最終更新 平成26年4月20日 8時51分 


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

a
tiger猫鉤虫 (Ancylostoma tubaeforme)

 猫の鉤虫の感染は希です。今回保護された仔猫で発見されました。症状は軟便のみが診られました。
 
成虫
 猫鉤虫は犬鉤虫と極めて似ています。成虫は♂10-11mm、♀12-15mmで犬鉤虫よりやや小型で細長く、交接刺が長いことが特徴です。
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虫卵
顕微鏡 100倍

 
顕微鏡 400倍

 虫卵の大きさは55-76×34-45umで顕微鏡所見では犬鉤虫とは区別はできません。
 感染様式は犬鉤虫とほぼ同様ですが胎盤感染は証明されていません。猫鉤虫の成虫寿命は約2年で、雌は最盛期に1日5千-2万個の虫卵を排泄します。ただし虫卵の排泄は変動がある点、また糞便中に均等に分布しているわけではないため1回の検便で必ず検出が可能ではありません。排泄した虫卵は7-10日で感染型幼虫(第3期フィラリア型子虫)になります。土壌や湿った環境に存在し、猫では鼻粘膜、皮膚の毛穴など経皮感染が主要な経路と考えられていますが、専門書によっては経皮感染は否定的で経口感染が主な意見もあります。寄生部位は小腸です.
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駆虫剤

皮膚滴下タイプ
 
経口薬
 
 猫鉤虫の駆虫は線虫類の猫回虫と同じ薬剤になります。猫鉤虫が経口感染したときプレパテント・ピリオドは14-21日と報告されており、この期間を目安に再投薬を行なっています。
 
 駆虫剤は昔は猫に使用しない方がよいとされているジゾフェノール製剤(商品名 アンサイロールなど 製造中止)しかありませんでしたが、薬剤の進歩で今は副作用は殆ど心配なく行えるようになりました。

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犬の診療
ウサギの診療
フェレットの診療

最終更新:平成27年4月20日(月)5時15分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あrabbitウサギの便の特徴


 ■ウサギの消化管寄生虫
 本院の診療でみられたウサギの消化管寄生虫を説明いたします。
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■ウサギの腸のコクシジウム(Coccidia

あ

 コクシジウムはアイメリアとイソスポラに分かれます。うさぎはコクシジウム感染が多い動物ですが最近は減少傾向になっているように感じます。コクシジウム類は動物の消化管などの細胞内に寄生する原虫類です。
 うさぎはアイメリア(Eimeria.Spp)の感染になります。うさぎのアイメリアは12種以上の属が同定されています。アイメリアは肝臓と腸に感染します。肝臓の感染は動物病院では確定診断はできません。(肝コクシジウム Eimeria.Stiedai )
腸に感染するコクシジウムを検便でオーシストが発見して診断します。(腸コクシジウム Eimeria.Perforans Eimeria.Magna Eimeria.Media Eimeria.Irresidueなど)腸コクシジウムの病原性は種によって異なりますが、 特にEimeria stiedaiの感染した場合は、最も病原性が高く、激しい下痢、食欲不振を示す場合が多いですが顕微鏡所見では「種」までの同定はできませんのでそこでコクシジウム虫卵を発見したら駆除します。子うさぎではコクシジウムで下痢が始まってからでは、薬剤投与しても体力がもたず、死亡するケースが多いからです。(参考 学術記号は例をとると一般的にEimeria stiedaiと標しますが、正確にはEimeria属でstiedai種になります。)

 診断は検顕微鏡検査(直接検便・ショ糖浮遊法など)でオーシスト (oocyst)の発見でできます。 コクシジウム卵の検便での検出率は方法、日時で虫卵の排泄が変わる場合もあり70%前後とされています。この症例は購入先のペットショップの専属獣医師は陰性とのとこでしたが、本院ではコクシジウム卵が検出された例です。そのため検便は可能なら2-3回行うことをお勧めします。以上、複数回の検便などの併用で、コクシジウムの診断はある程度可能ですが100%の診断は存在しないので、下痢が続く場合は必要に応じてトライアル治療もおこなっています。
 
  治療にはサルファ剤を使用します。尿がアルカリ性のうさぎではサルファ剤は殆ど副作用のない薬剤です。サルファ剤は直接コクシジウムに作用する特異的駆虫剤ではありませんが 、、真核動物であるコクシジウムの染色体への浸透がよい薬剤です。コクシジウムの無性生殖生活環の最後、無性生殖の二期のtrophozoiteからschizontへの発育段階を遮断し、抗体産生を待ちます。駆虫にはサルファ剤が必要ですが1週間位たたないと効果は表れません。また希にサルファ剤に抵抗性が疑われるうさぎの診療をしたこともあります。種の相違のよる治療法の変更はありません。

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■うさぎの蟯虫 (Passalurus ambiguus
 蟯虫(Passalurus ambiguus)は肉眼で確認できる5ミリ位の寄生虫です。便の中に「シラス」のようにみえます。検便をすると虫卵が検出される場合もあります。犬猫の回虫の方法で駆虫は可能ですが、生活史が複雑なので駆虫しても、時間がたってまたでてくることはあります。 この寄生虫は一見、気持ち悪いですが、うさぎと共存しているとされており、うさぎには被害がないことが殆どです。

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■ジアルジア (Girdia duodenalis) 
 まれにうさぎの健康状態が悪いと、ジアルジア(Girdia duodenalis)が診られます。
 ジアルジアは約7~13×5~10μmで上記したコクシジウムの数千分の一の大きさで、非常に小さく肉眼では発見できません。顕微鏡検査で偶発的に発見されます。

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■酵母様真菌(Cyniclomyces guttulatulus)

あ

消化管寄生虫ではありませんが、ウサギの便の特徴は、酵母様真菌Cyniclomyces guttulatulus)正常で検出される点です。消化管の常在菌です。

 

 酵母様真菌は希に犬にも感染します。症状は犬では軟便程度です。偶然うさぎの便を補食してしまったことが考えられています。治療は抗真菌薬が良い見解もあります。

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寄生虫とは異なりますが、希に3-5ヶ月頃に細菌性の下痢が診られます。 

 


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投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あ
chickハト回虫虫卵と成虫標本
知人の獣医師宅で飼育しているハトに回虫の虫卵がみられ、またハト回虫の成虫の標本がありました。
犬猫の回虫の標本はみる機会は多いとおもいますが、ハトの標本はこんな様子です。


image1ハト回虫虫卵

image2ハト回虫成虫

image3ハト回虫成虫
 

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最終更新 平成26年4月20日 8時51分 


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

お
dogtigermousechick小動物臨床の条虫類camera


 条虫類は扁形動物に属し雌雄同体で無体腔動物です。呼吸、循環、骨格、消化管はなく、線虫のような激しい運動性もありません。頭節のみ寄生体へ固着しているため、吸溝、吸盤、嘴、小鉤など吸着器官があり、その後方に片節が未熟、成熟、老熟と滑車のように連なって体表にクチクラはありません。
 
 条虫が消化管に寄生したときの片節の繊毛は、寄生動物の腸の繊毛と似たような構造をしています。そして条虫は動物の消化管の『餌』を『少しだけ頂く』ことで栄養を吸収しています。この『少しだけ頂いく』が ポイントで、『多く頂ければ』寄生された動物は下痢・栄養失調などおこし、条虫自身も寄生体を失い一大事です。しかし『少しだけ頂ければ』寄生された動物も生活はでき、条虫にとっても無条件に栄養が採れて好都合です。そのため濃厚感染でない限り下痢など臨床症状がない特徴があります。

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 小動物臨床でよく遭遇する条虫類は、写真①の瓜実条虫に代表される円葉条虫類と、写真②のマンソン裂頭条虫に代表される擬葉条虫類です。

 ①のウリザネ条虫は体節を排泄するので、便中に「米の様な虫がいる」主訴で、②のマンソン裂頭条虫はカエル・ヘビを補食する癖のある犬猫の検便をして発見されます。最近これら寄生虫はノミ駆除剤の進歩、また室内飼いが多いので本院ではあまり診ません。両者は条虫駆虫剤プラジクアンテルの薬用量が異なります。    

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(外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)

 前者、
瓜実条虫片節の最も重要な点は体壁に子宮孔(産卵孔)がない為、写真③片節内の卵嚢内に虫卵が貯まります。そして組織内の代謝活性が低下して、後部の老熟片節が契れて便と共に排泄されます。写真①そのため、診断は視診が主で「米粒のような虫が糞についてきた」という主訴で来院します。 

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(外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)

 後者、マンソン裂頭条虫片節は瓜実条虫に比べて横に約1.5倍長くなっています。体壁に子宮孔(産卵孔)があり虫卵が寄生体の腸管内に排泄される点で、(写真④)片節の排泄は殆どなく、診断にはまず検便が必要な点です。写真②

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プラジクアンテル製剤 

 駆虫剤プラジクアンテルの薬用量は対象にする条虫・吸虫で投与量は異なります。マンソン裂頭条虫を駆虫する場合瓜実条虫の約6倍も必要です作用機序は条虫の繊毛から侵入して外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。
 

 なお条虫類は神経系の発達は悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン類は効果を示しません。 
 条虫の生活史には必ず中間宿主が必要です。再寄生の防止のためにはプリパテントピリオドを考慮した再駆虫より、中間宿主と接触させないことが大切です。          
     


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最終更新:3月7日(土)18時11分


投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.19更新

お
        rabbitウサギのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)
 

ウサギのエンセファリトゾーン斜頚を主訴によく診られる疾患です。この疾患は特に全容が解明されている訳ではなく、獣医師により、診断基準は様々です。この項目は本院の治療経験 ・文献をもとに私感を述べます。

 
Encephalitozoneミクロスポーシアに属します。細胞内寄生原虫でミトコンドリアと中心体を欠き、細菌とカビの中間に入る生命体で、Encephalitozone Cunicrli(感染部位・脳腎、感染動物・広範囲動物)、Encephalitozone hellem(感染部位・角膜、感染動物・鳥)、Encephalitozone intestinalos(感染動物・犬)、Encephalitozone bienus(感染動物・豚)など約100種ぐらいあります。
 
今回のテーマのEncephalitozone Cunicrliは伝染病表示でレべル2に入り、別名「微胞子虫」とも呼ばれ、以前は「寄生虫」に分類されましたが現在はゲノムの解析も進み「真菌」に分類されます。広範囲動物に感染能力はありますが、小動物臨床では、うさぎを中心に1990年ごろより感染が診られる疾患です。実験動物のうさぎより感染したとされていますが、正式な感染経路は不明です。Encephalitozone Cunicrliは
 
人での感染報告はありませんが、HIVの人は感染する可能性もあるとされています。

 うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)疑いのうさぎは、
斜頚症状の場合、本院の経験で約70%は治りますが、奥の深い疾患です。---------------------------------------------------------------------
うさぎのEncephalitozone Cunicrliライフサイクル
感染したうさぎが胞子を尿中に排泄します。別のうさぎが感染うさぎの尿に感染したフードや水の摂取する「経口感染(経気道感染もあり)」します。体内では、白血球の単球に感染して血液を流れ標的臓器の脳。腎臓 水晶体に運ばれ、マクロファージに変化する。末梢でマクロファージが崩壊して胞子をだします。感染後①臨床症状を出す。②不顕性感染、③ストレスを受けたら発症にわかれます。統計上は②が多いとされています。臨床症状を出すうさぎはエンセファリトゾーン感染より、その部位における肉芽腫性の炎症反応で悪くなるとされています。

 臨床症状は炎症を生じた部分に依存します。斜頚(小脳症状はなので疑問な意見もある。)・白内障・後肢の不全麻痺・完全麻痺、尿失禁・腎不全・てんかんをおこすとされています。
また毛玉症などすべての疾患に関係していると主張する方もいます。
 E.cuniculiの病原体の同定は不可能です、剖検でも不明です。病理では過去の非特異的炎症からE.cuniculiを推察しているとされています。---------------------------------------------------------------------
●うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)の疑われる症状

斜頚

白内障

後肢の完全麻痺

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うさぎのエンセファリトゾーン(Encephalitozone Cunicrli)の診断

うさぎの斜頚の原因には①末梢性と②中枢性があります。

①末梢性 内耳・中耳疾患
 エンセファリトゾーンは中耳に感染はしません。斜頚は末梢性の場合は内耳・中耳を経由している第8脳神経の異常でおきると考察されています。


②中枢性
 中枢神経が原因で、斜頚を起こす場合は、病変部は小脳にあります。小脳異常なら、振戦・不全麻痺・PCの欠損がみられるはずです。うさぎの斜頚にはこのような小脳中枢性の症状はありません。
 
エンセファリトゾーンはおもに大脳に感染することされています。もしうさぎの大脳にエンセファリトゾーンが感染したなら活動低下、精神の異常、振戦、 不全麻痺があります。また神経学的に大脳疾患では斜頚はみられないことです。エンセファリトゾーン大脳には時間的に少ししかいないので病原体の検出は不可能です。
 しかし
エンセファリトゾーンを疑う疾患をみていると、横転などがみられ中枢性の疾患を疑う場合も多くあります。剖検では延髄よりエンセファリトゾーンを推測する病変が検出されています。

●ではどうする
 うさぎのエンセファリトゾーンは斜頚だけでなく、その他、振戦など中枢神経系症状、腎疾患のある場合により厳密に神経検査をおこないます。

臨床症状         中枢性       末梢性

 バランスの欠如  ある        ある
 斜頚  ある        ある
 横転  ある        なし
垂直眼振   ある        なし
 精神状態  たぶん抑制    たぶん抑制なし
 企図振戦  可能性ある    なし




 




 末梢性・中枢性は身体検査で判断が可能な場合もあり、「末梢性は予後よい。」「中枢性は予後悪い」とされています。
 そのほか本院では頭部レントゲン検査で鼓室胞の状態の把握。
エンセファリトゾーンIgG抗体を測定してエンセファリトゾーン症の診断をおこなっています。
 

 正確にはCT・MRI検査により、中耳・内耳を除外しなければなりませんが、料金などの面もあり、現実性が低い検査になっています。エンセファリトゾーンの診断は本当に難しのが現状で、判断がつきにくい症例は、メロキシカムのような非ステロイドを投与して様子をみる方法も提案されています。---------------------------------------------------------------------

 抗体価の測定 IgG抗体の解釈
 IgG抗体は過去に病気にかかった証明で今を反映する検査ではありません。
●抗体価 IgG抗体陽性
 IgG抗体は感染3-4週に上昇して9週でピークになります。
IgG抗体は現在の病気の存在より、過去の暴露を示唆します。しかし「E.cuniculiの臨床症状あり、抗体価陽性なら」 E.cuniculiと仮診断しても良いという意見も多くあります。
●抗体価 IgG陰性なら否定も
 しかし
IgG抗体は感染3-4週で上昇するので、4週間後には再測定をすすめています。(ペア血清)

●抗体価IgG抗体の解釈はさまざまです
陰性が陽性で症状に変化。→エンセファリトゾーン不顕性感染型
陽性が高くなり臨床症状ある→エンセファリトゾーン臨床症状型
抗体価かわらない→エンセファリトゾーンと別の疾患を疑う。
抗体価陰性。>40以下パスツレラを疑う

など獣医師により様々。抗体価の倍率は関係ない話も---------------------------------------------------------------------
E.cuniculi、IgG抗体の全国調査
  北海道、沖縄まで全337羽のうち約62%位が陽性でした。単独飼育の175羽のうち42%位が、複数飼育では162羽中62%位が陽性でした。---------------------------------------------------------------------

IgG抗体単独飼育の飼育状況と病気
 
無症状74羽中22%位、神経症状あり75羽中78%、その他疾患26例中40%が陽性でした。
無症状121羽中70%。神経症状は30羽中88%、その他疾患11例中30%が陽性でした。

IgG抗体複数飼育の飼育状況と病気

  新規購入兎(7例陰性、2例陽性)従来うさぎ(17例陽性、2例擬陽性、2例陰性)新規の場合は陰性高い。複数飼育の場合、無症状でも不顕性感染がおおく、発症時の胞子排泄により、感染の拡大がある。隔離してかうことが重要であるかもしれない。

IgG抗体30羽飼育している方の結果

IgG抗体新規購入兎(7例陰性、2例陽性)従来うさぎ(17例陽性、2例擬陽性、2例陰性)新規の場合は陰性高いです。しかしその後新規購入兎の陰性も多く陽性に転回しました。複数飼育の場合無症状でも不顕性感染がおおく、発症時の胞子排泄により、感染の拡大があり、隔離して飼うことが重要と推察されます。尚、胞子は水環境に弱く、塩素で不活化します。

E.cuniculi
IgG抗体は東京のモノリスにて測定可能です。


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投稿者: オダガワ動物病院

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