小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2015.04.20更新

すdogtigermousechick条虫、吸虫駆虫剤 
プラジクアンテル(Praziquantel)とはcamera


■条虫・吸虫の駆虫について
 昔はこれらの条虫・吸虫の駆除剤は投与前後に絶食が必要で、また投与後には下剤が必要な薬剤も多くありました。1985年ごろにプラジクアンテルPraziquantelが販売されてからはその必要はなくなり副作用は少なく安心して使用可能になりました。
 
 注意点は条虫、吸虫の種類により、駆虫剤プラジクアンテルの投与量が大きく異なることです。(マンソン裂頭条虫の駆虫薬には瓜実条虫駆虫量の約6倍量、吸虫類は約5倍量) 条虫・吸虫は神経系の発達が悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン等は効果を示しません。プラジクアンテルの作用機序は 条虫等の外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。また駆虫剤投与より中間宿主と接触させないことが大切です。
 
 プラジクアンテルが含まれている薬剤には含有複合剤として◇プロファンダー®スポット皮膚滴下剤(犬猫用) ◇ドロンタール®プラス錠(犬用) ◇ドロンタール錠®(猫用)があります。これらの薬剤は線虫駆虫薬との複合剤で良い点もありますが、瓜実条虫の駆虫量でプラジクアンテルが製剤されており、高用量が必要なマンソン裂頭条虫壺型吸虫虫には向きません。また複数の寄生虫がいる場合はプレパテントピリオド(線虫類の猫回虫48-56日、瓜実条虫14-21日)が異なり、再投薬時期に悩むこともあります。
 また単独製剤として◇ドロンシット® 犬猫用錠剤・注射 ◇ビルトリシド® ヒト用 錠剤があります。
 
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■本院で診られる条虫、吸虫の種類と駆虫法
dogtigerマンソン裂頭条虫Spirometra erinaceieuropaei)、
tiger壺型吸虫Pharyngostomum cordatum
 瓜実条虫の5-6倍の投与量が必要です。調節しやすいプラジクアンテル注射剤、力価の高い経口剤ビルトリシド®の使用が適切です。また第二中間宿主(カエル、ヘビなど)との接触をさけることも大切です。マンソン裂頭条虫はヒトでも感染例があります。

dogtiger瓜実条虫Dipylidiasis)には 
 プラジクアンテルの注射・経口薬・皮膚滴下剤の駆除と中間宿主のノミの駆除が必要です。ヒトでも感染例があります。

chick◆文鳥の条虫
 プラジクアンテルの経口剤が便利です。しかし中間宿主が不明でなかなか完全駆除には至りません。

mouse◆小型条虫
 ハムスターで診られます。経口投与も可能ですが、プロファンダー®スポット皮膚滴下剤が便利です。ヒトでも感染例があります。

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■薬剤各論
■プラジクアンテルの注射剤 商品名・ドロンシット®注射液 
ウルザネ条虫・マンソン裂頭条虫壺型吸虫の駆除に使用される薬剤です。特にマンソン裂頭条虫・壺型吸虫の駆虫には高用量が必要なため、注射剤は投与量が調節でき使用しやすいです。

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■プラジクアンテル含有の皮膚滴下剤 商品名・プロフェンダー®スポット 犬猫用
分名・線虫駆虫薬エモデプシド21.43mg/ml(1.5-3mg/kg)、条虫駆虫薬プラジクアンテル85.75mg/ml(5.4-9.8mg/kg)が含有され、グリセリン類似物質に溶解している皮膚滴下剤です。犬猫回虫、犬猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫をほとんど同時に駆除可能です。7週齢、500g以上の犬猫から使用可能です。とくに猫は経口投与が大変な場合もあり重宝な薬剤です。瓜実条虫の駆虫量でプラジクアンテルが製されており、マンソン裂頭条虫などの駆除にはエモデプシド量がオーバードーズになり使用は薦められません。

 プロファンダー®スポット 背中にたらすのみです。猫回虫の駆虫も同時可能です。

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■プラジクアンテル含有の経口剤 
 dog商品名 ドロンタール®プラス 犬用
 駆虫薬3種類の犬用合剤で2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除できる幅広い効能を発揮します。
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用
瓜実条虫→プラジクアンテル
の駆除を行います。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除できる幅広い効能を発揮します。

 tiger商品名 ドロンタール® 猫用
 猫用で駆虫薬2種類の製品で
4週齢から使用可能です。猫回虫、猫鉤虫はパモ酸ピランテルが、瓜実条虫はプラジクアンテルが駆除します。ドロンタール®に含まれるパモ酸ピランテルは猫回虫の産卵前の未成熟な寄生虫に対しても高い駆除効果があります。短所はマンソン裂頭条虫壺型吸虫の駆除にはパモ酸ピランテル量がオーバードーズになり使用は薦められません。この場合はドロンシット®の注射がお薦めです。

 dogtiger商品名 ドロンシット®犬猫用、 ビルトリシド®ヒト用 
 ドロンシット®は瓜実条虫感染の場合は便利な薬剤ですが、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫駆虫には猫の例で3錠も飲ます必要があり、利便性の良い薬剤とは言えません。ヒトで使用されている条虫・吸虫の駆除剤は動物用より力価が高いことが特徴です。しかし動物では錠剤・粉薬は投薬に抵抗して涎をだして、飲ませにくい場合があります。またビルドリシド®はなるべく粉砕しないで使用することがお薦めです。


 
ビルドリシド®


【関連記事】
線虫類の駆虫
瓜実条虫
マンソン裂頭条虫
壷型吸虫

最終更新:平成27年4月20日(月)9時28分


 

 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あsheep犬のジアルジア(Giardia)症


 

あ
camera写真① ジアルジアのシストとトロフォゾイト

 ●ジアルジアは幼犬を中心に多く感染が予想されている寄生虫です。
 ジアルジアは全国14ヶ所371頭27種類の犬種の調査では、陽性率は6.7-59.3%と高い値を示しています。
(年齢別では1-9ヶ月 54.9%、成犬では30.9%がジアルジア陽性 だぶん一番犬が感染する寄生虫と推測されます。)

あ
camera写真②(アイデックス社資料より)

しかし写真①の新鮮便の直接塗抹を鏡検ではジアルジアの直接法の検出率は27-31%しかありません。
そこで遺伝子検査が使用されています。するとcamera写真②のように検出率は90-96%になります

 

あcamera写真③、遺伝子検査(スナップ・ジアルジア)陽性例

 この症例は購入したばかりの子犬が下痢がとまらず来院しました。検便では陰性でしたが、遺伝子検査(スナップ・ジアルジア)では陽性を示し、(写真③)メトロニダゾールの投与でよくなりました。
この症例は下痢の症状がありましたが、遺伝子検査が陽性でも無症状な犬もいます。

 ■生活史
 ジアルジア虫卵はシストという小さな形式で排泄され、1歳位になると90%は免疫力で自然治癒する場合が殆どです。しかし下痢が激しい症例は駆虫薬の投与が必要です。メトロニダゾールは70%のジアルジアに効果を示します。やたら苦い薬剤で投薬に苦労がいるケースもあります。他にドロンタール・プラス®、フェンベンダゾール、パロモマイシンが抗ジアルジア作用があります。
 ジアルジアは排泄と同時に感染力を獲得しますので家庭では早めに便の処置が必要です。トイレは可能なら熱湯消毒がベストです。
 多頭感染しているケースでは軟便が継続して、駆虫薬も効果を示さないケースもあります。動物系専門学校(沢山犬がいる環境)のジアルジア駆虫を相談されたケースでは、駆虫剤が効いても、他の犬の排便から経口再感染がおこり完全駆虫には再度の駆虫と環境の消毒で半年ぐらいかかりました。
ジアルジアの対策として動物病院で遺伝子検査をうけて、そして見つけたら早めの駆虫・消毒がベストです。


cameraバイエル社資料より

最近、ジアルジアも遺伝子研究が進み、犬と人は共通のジアルジアがいる場合もあるそうです。 


【関連記事】
セキセイインコのジアルジア症 
トリコモナスは猫に見られる原虫疾患です。
遺伝子検査で発見された猫トリコモナス症
猫のコクシジウム

最終更新:4月20日(月)9時43分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あ dog犬の糞線虫


  私の開業している地域では糞線虫まず診ません。東京・神奈川では少ないのかもしれません。
 犬では九州・沖縄地方が多いことが記載されている本もありますが、東北地方の動物病院の研究報告も診ます。
 犬はしつこい下痢で来院します。粘膜に穿孔している寄生虫ではないので、血便は殆どありません。診断は新鮮便でラブジチス型幼虫をみつけます。(L1・雌2mm)しかし検出率は良くなく、複数検便が必要な場合もあります。

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■寄生は雌のみ  
 この寄生虫は動物(犬・人にも)感染しすると、ラブジチス型幼虫(R型)という形式で小腸に感染します。寄生すると雄は必要なくなり、処女生殖で数時間で卵内に幼虫が形成され孵化していきます。この孵化した幼虫をラブジチス型幼虫(L1)と呼び、腸腔に出て糞便を食べて成長しラブジチス型(L2)になり外界へ排便と共に出されます。

■外界での発育  
 ラブジチス型幼虫(L2)は、その時の環境で二つの道(①寄生世代・②自由世代)のいずれかをとって発育します。
 おおまかな検討はされていますが、どちらの世代をとるか詳細はよくわかっていません。

■外界での発育①  
 ①不利な条件下では24時間で寄生世代(別呼・直接発育)になることが多いです。
 ラブジチス型幼虫は二回脱皮をして古い皮を被ったフイラリア型(F型・L3)の感染幼虫になります。フイラリア型の特長はラブジチス型幼虫と異なり、口が閉ざされ栄養物を取れないので、一定期間しか生きられないことです。
 その間に犬・人の皮膚から侵入したり、また経口感染できればフイラリア型から動物体内でラブジチス型幼虫になり、次の世代を残せますが、感染の機会がなければ死んでしまいます。

■外界での発育② 
 ②食事が十分にあって、温度も適温で(20-30度)、混み合っていないときは自由世代(別呼・間接発育)を選ぶ傾向が多いです。
 この経路はラブジチス型幼虫(L2)のまま4回脱皮を重ねて36時間前後でラブジチス型幼虫(L5)にまでなり、雌雄の各々の成虫に変化し交尾します。しかし雄はすぐに死亡し、雌も同様卵を産むとすぐに死亡します。寿命は二日間ぐらいしかないそうです。
卵はすぐ孵化してラブジチス型幼虫(L1)として生まれますが5-6日でラブジチス型幼虫(L2)を経て、フイラリア型幼虫(L3)となり、寄生世代との共通経路に入り同様の運命を辿ります。

■その他の発育
 ③他にラブジチス型幼虫が腸内で自家繁殖する経路が知られています。この経路が活発になると人では重傷化します。

 以上糞線虫はこのようなバリエーションの多い生き方をしているので、駆虫薬が効きにくい訳です。

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【関連記事】
壺型吸虫
ウリザネ条虫
猫回虫
酵母様真菌
当院への道順

最終更新:平成27年4月20日(月)22時15分


 

 

 

 

 

 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

お

  dogtigerマンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei) 


 

あ
camera写真①、当院の症例で猫の肛門から排泄されたマンソン裂頭条虫の成虫

あcamera写真②、頭部拡大図
マンソン裂頭条虫は犬猫の腸管内では頭節、片節を形成しいる長い寄生虫で体長は6-15cmあります。(camera写真①②)
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camera写真③、擬葉条虫類の模式図
(外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)

 マンソン裂頭条虫は擬葉条虫類に属し、寄生体との固着ために、頭節の背腹両面中央に縦に走る扱溝があることが特長で、吸盤、吻など他の固着器官はありません。体壁に子宮孔(産卵孔)があり(写真③)虫卵(写真⑤)が寄生体の腸管内に排泄される点で診断にはまず検便が必要です。
{備考・円葉条虫類のウリザネ条虫は子宮孔(産卵孔)がなく、片節で便中に排泄されます。最大の相違はこの点です。}
 まれに
縦横比が1対1.5で中央に子宮塊が明瞭な成熟した横長(円葉条虫類に比べると)の片節が数個連なり成虫として肛門から排泄される場合もあります。(写真②)

 中間宿主は2種類が必要です。虫卵は未発育の状態で排泄されます。1-4週間水中で発育してコラシジウム(六鉤幼虫有り)を形成します。コラシジウムが泳ぎ出て第一中間宿主のケンミジンコに食べられ体内でプロセルコイドになります。(10日間)、a

次に第二中間宿主カエル・ヘビ・などに補食され体内の腸管を穿通して体腔内で臓器、組織に移行してプレロセルコイドになり、終宿主の犬猫に食べられることを待ちます。感染すると犬猫の消化管で約1.5年生きます。
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camera写真④、マンソン裂頭条虫と壺型吸虫、虫卵
 また水田地帯や湖沼川のある地域では第二中間宿主が類似しているため壺型吸虫(写真④右)と混合感染が多いです。
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camera写真⑤ マンソン裂頭条虫、別の症例で濃厚感染があったケース
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camera⑥ マンソン裂頭条虫、虫卵 55-65×30-40μmで非対称性です。

 感染は野外へ行く猫や、散歩する犬が第二中間宿主のカエルなどを食べる場合に診られます。院では室内飼育の犬猫の来院が殆どなので多くは診ませんが症例の殆どが猫です。

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■マンソン裂頭条虫感染の臨床症状
 今回紹介した3例は寄生虫疾患に多い嘔吐、下痢などの臨床症状はありません。マンソン裂頭条虫は中間宿主が2種類も必要なため、1回感染したら次いつ感染できるわからない『ヤドカリのような寄生虫』です。動物に少量感染したのみで頑固な嘔吐、下痢など臨床症状が現れたら、条虫自身も生死を彷徨うことになります。そこで寄生動物の腸管の栄養を多くは採らず、少しだけ頂き、臨床症状を出さず、気づかれないように寿命を全うする寄生生活を送っています。そのため片節は動物の腸管の円柱上皮と同じような構造をしています。
 しかし普段は臨床症状がないマンソン裂頭条虫ですが、外傷などストレスをうけると、嘔吐、下痢などの症状を伴う場合が多くなり検便により診断できます。

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■マンソン裂頭条虫の駆虫 
 マンソン裂頭条虫駆虫にはプラジクアンテルを瓜実条虫駆虫の約6倍量が必要です。
そのためプラジクアンテル注射剤の
ドロンシット注射剤®が投与量の調節が容易なため広く使用されています。

 注意点として、犬猫の体内でマンソン裂頭条虫の全ステージの生活史がある訳ではなく、終宿主の犬猫は第二中間宿主を捕食して虫卵を排泄するのみです。生活史途中からのステージ参加なのでプリパテントピリオドが5-10日位と短いことが重要です。カエルなどを食べる癖のある犬猫は駆虫して外に出すとすぐに捕食してしまい5-10日過ぎてまた虫卵が便中に排泄されることもあります。プラジクアンテル効果なし』と勘違いしてセカンドオピニオンで当院を訪れたケースもありました。そのため可能な限り外に出ないなど第二中間宿主と接触させない十分な配慮が必要です。

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■人畜共通の疾患です。
  マンソン裂頭条虫はヒトにも感染する場合もありマンソン孤虫症と呼ばれています。(下記の備考参照)
原因は犬猫同様第二中間宿主のカエル・ヘビなどを食べることでおきます。またどうしても食べるときは十分加熱するなど注意は必要です。飼育しているイヌ、ネコに感染が診られてもヒトには直接は感染しません。重要なことはヒトはマンソン裂頭条虫の固有宿主ではないので、感染した場合は成虫にならずに、幼虫のまま体内にいることがほとんどです。そのためマンソン裂頭条虫の発見はヒトの皮下などに幼虫が『こぶとして』診られる場合が多いです。また脳や内臓に寄生していて大変な場合もあり、疑られる場合は人畜共通の疾患に詳しい医師にお尋ねください。

備考・ヒトの皮下などに『こぶとして』診られる寄生虫は多くは以前同定できなかったので、『孤虫症』という病名がつきました。その後の研究でマンソン裂頭条虫の幼虫と判明したので、現在ヒトへのマンソン裂頭条虫の感染は『マンソン孤虫症』の呼称が使用されています。

あ
camera写真⑦ 目黒寄生虫博物館に展示されているマンソン裂頭条虫
左⇒イヌ、ネコ、右⇒ヒト、
ヒトはマンソン裂頭条虫の固有宿主ではない為、幼虫で皮下などに存在するので虫も小さい。


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プラジクアンテル


 

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ノミの生態
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 最終更新:平成27年4月20日(日)16時00分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

あ book線虫類は蠕虫の中で最も発達した線形動物で、雌雄異体の擬体腔動物です。 


 ■作用部位
 線虫類の体表は細長い円筒形で全身はクチクラに覆われているため、体表から駆虫薬の吸収はできません。そのため駆虫剤の作用点は栄養の摂取・吸収が行われる三放射相称の口、筋肉質の食道、消化管の経路を介して吸収されて、神経節また神経筋接合部に働くと推察されています。

 神経の中枢は脳ではなく、食道を囲む神経環で前方と後方に6本の神経幹が走り、所々に神経節があり、はしご状の神経繊維が全身に分布します。そして背筋、腹筋にまたがる神経繊維を交互に弛緩、収縮させて、腸管の蠕動運動に逆行して寄生生活をしています。

 線虫の駆虫薬は主にこの逆行運動を阻害する目的で、神経節また神経筋接合部のシナプス前部に働くパモ酸ピランテル・エモデジプトなどが使用されています。。

 線虫類は駆虫のためにプリパテントピリオドを考え複数回の投与が必要です。犬鞭虫は同じ線虫類でも犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫と駆虫薬が多少異なります。

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各論
■商品名 プロフェンダー®スポット 猫用(バイエル薬品、皮膚滴下剤)
成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
 7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
猫は経口投与は大変な場合もあるので、重宝な薬剤です。頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。

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■商品名 ドロンタール®プラス 犬用(バイエル薬品、錠剤・駆虫寄生虫はプロフェンダースポットと同じ)  
3種の薬剤が入っている犬用経口剤です。
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)、
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用、
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel
が駆除を行います。犬は2週齢から使用可能です。
 1回の投与で線虫類(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫)の成虫を効果的に駆除できます。しかし虫卵には効果ないため、寄生虫のプレパテント・ピリウドを考慮して、犬回虫、犬鉤虫は2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が、犬鞭虫は2-3ヶ月あけて複数回の投与が必要です。プラジクアンテルも含有されているので、ウリザネ条虫も効果的に駆除できます。ウリザネ条虫は再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
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■ドロンタール® 猫用(バイエル薬品、錠剤・駆虫寄生虫はプロフェンダースポットと同じ) 
 2種の薬剤が入っている猫用経口剤です。猫は鞭虫の感染がないので犬用と異なり2種類の合剤です。猫は2週齢から使用可能です。
猫回虫、猫鉤虫→パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel)の駆除を行います。
 パモ酸ピランテルは虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。1回の投与で線虫類(回虫・鉤虫)の成虫を効果的に駆除できます。虫卵には効果ないため、プレパテント・ピリウドを考慮して、2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が必要です。
 プラジクアンテルも含有されているので、ウルザネ条虫も効果的に駆除できます。ウルザネ条虫は再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
 猫は経口投与が大変な場合もあります。粉にしても効能はありますが、猫が嫌がって涎をだして抵抗される場合があり、筆者の動物病院では駆虫には主にプロフェンダー・スポットを使用しています。

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■商品名 コンバントリン® 
 
成分名 パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate) ヒト用のパモ酸ピランテル製剤もあります。動物でも効果はあります。単独製剤である点は症例によっては魅力です。ヒトの回虫症はパモ酸ピランテルよりアルベンダゾールの使用が多いみたいです。---------------------------------------------------------------------
■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違 
 猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現
◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダー®スポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
 ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。
◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2週間あけて、2回の投与は必要です。
◆ノミ・ダニの駆虫剤と併用 ノミ・ダニの駆虫剤と併用する場合はプロフェンダー®スポットを滴下して皮膚が乾いたことを確認した後、離した箇所の皮膚に滴下してください。
 ぶ形剤は薬剤で相性が異なるので、皮膚上でぶ形剤の共有をさけ、薬剤の吸収、分布に影響を与えない為の処置です。---------------------------------------------------------------------
■商品名 イベルメック®

あ
■成分名 イベルメクチン(Ivermectin)、パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)含有
 本来はフィラリア予防剤ですが、パモ酸ピランテルも含有されているため犬回虫、犬鈎虫の駆除も同時にできます。イベルメクチンは伊豆の川奈の土壌から抽出された成分で高用量を使用すれば単独でも線虫類の駆除は可能です。この薬剤はパモ酸ピランテルが併用されているので、イベルメクチン量は少量です。チュアブルタイプなので嗜好性は良いです。(98%の犬が食べてくれます。)
■注意 
 ①フィラリア陽性犬、
 ②またチュアブル製剤のため食事アレルギーのある犬には積極的には薦められません。
 コリー・オーストラリアンシェパードなどでは、この薬剤はフィラリア予防量での使用可能ですが、高用量の使用は控えた方が良いです。
■備考 チュアブルとは 
 チュアブルとはかみ砕くことが(chew)できる(able)の造語です。かみ砕いても味良く吸収できることが特長です。くれぐれもチュアブル錠を動物の届くところに置かないでください。1年分のフィラリア薬を誤飲されたケースはよくあります。---------------------------------------------------------------------
■ミルベマイシン Milbemycin 
 ミルベマイシンは北海道の美瑛の土壌から抽出された成分です。
本来はフィラリア予防ですがフィラリア予防量で犬回虫、犬鈎虫の駆除にも使用できます。最大の利点はフィラリア予防量の2倍量で鞭虫駆除が可能で、フィラリア予防量と鞭虫駆除量の差が一番少ない薬剤です。そのため当院では鞭虫卵が庭や散歩コースに多くいるケースにフィラリア予防と兼ねて使用しています。
◆備考 鞭虫卵
 鞭虫卵は地面に便と共にでると、1年以上は感染力があります。鞭虫の感染した場合は便は早めにかたづけることを薦めます。また他からの感染疑いの場合は散歩コースの変更を薦めています。
■注意
 フィラリア陽性犬は投与は禁忌です
コリー・オーストラリアンシェパードではフィラリア予防量・鞭虫駆虫量では使用可能ですが、それ以上の高用量は控えた方が良いです。
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■商品名 レボリューション®犬猫用 (ファイザー株式会社 皮膚滴下剤)あ
 成分名のセラメクチンが猫回虫、ノミ、耳ダニ、猫回虫の駆除とフィラリア予防をおこないます。イベルメクチンの第三世代とも称されます。薬剤がまずいため、頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤のみの販売になりました。
6週齢の仔犬仔猫から投与できますが、犬回虫には効果はあまりありません。 


■寄生虫の人への感染 
 寄生虫は時代と共に減ってはきており、医学部の寄生虫学教室(医学では医動物の呼称ですが)も年々減少しています。 特に都会では寄生虫はないと考えている方もいるとおもいますが、人でも油断していると寄生虫疾患は存在します。減少はあっても絶滅はできないのが寄生虫の特長かもしれません。

■そこでこの項では動物の回虫が人に感染したケースを中心に話します。 人の寄生虫外来の医師の話では、犬回虫・猫ウルザネ条虫の感染は時々あるそうです。人では動物の回虫は居心地が悪く、人の眼、消化管などに迷入しますので、重症な寄生虫感染になります。検便では殆ど意味なく、視診、レントゲン検査、血清診断などを総合して診断します。
原因として
①人でも豚・鳥・牛の生レバーを食べたり、
②ペットと過度なスキンシップにより偶発的な感染(ペットとキス、同じ食器で食事を食べるなど)
③原因は不明
で人に動物の回虫の感染が報告されています。
 
 また寄生虫卵は産み落とされると結構長い期間感染力を持ちます。
 例えば研究でよく調べられている豚回虫の虫卵は土の中に入れば1年たっても感染力があるそうです。そのため生まれた年に駆虫したのみでは日頃散歩する犬や沢山ペットが集まる場所にいくことが多い場合や、また寄生虫駆虫薬の網の目を潜って、「ペットが回虫・条虫などの寄生虫に感染している可能性は考えられる。」これが人の寄生虫疾患を診療している医者の見解です。生まれた年だけ駆虫して100%駆虫できていれば、人の寄生虫外来にペットが原因の寄生虫で来院する訳ないからです。(生レバーを食べた場合は除く)ペットに少数の回虫が寄生した場合は、発見は検便のみでは不十分と考えられ、現実的にはできませんが、ペットも血清診断が可能なら、診断の補助に使用できるかもしれません。

■そこで現実的にはペットの定期駆虫が重要な訳です。
(ペットの定期駆虫期間はバイエル社のホームページに記載されているように3ヶ月に1回が理想です。
しかし治療費の件もあるので、著者の動物病院ではせめて年1回は薦めてますが、なかなか浸透はしません。)
 また必要に応じて、便の消毒を兼ねて、寄生虫卵の消毒も必要です。
寄生虫卵の消毒は100度の熱湯が一番です。 
 床がステンレス・タイルなどしっかりしていれば、100度の効果で虫卵は絶滅します。
 しかし熱湯をまく場所が土だと温度は80度ぐらいに下がり、虫卵はあまり死にません。複数回まく必要になります。 
 そのため鞭虫が感染時、家の庭が広くなくても感染源になって、完全駆除ができないのはこのためです。寄生虫卵の消毒はハイターのような消毒剤では大変です。濃度が濃くなると動物やオーナーも中毒になる可能性が有り注意が必要です。

以上まとめると寄生虫疾患を避けるには
①生肉を食することを避けたり、
②ペットとはけじめある生活をを心掛けること、
③またペットの定期駆虫の実施が

大切です。 











投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

o

dogtigerrabbitchickコクシジウムとは


こ

文鳥のコクシジウム

 コクシジウムは腸管に寄生して幼犬、幼猫、幼ウサギでは激しい下痢を繰り返し脱水で死亡する可能性のある疾患です。しかしコクシジウムの種類によっては症状なくすごせ、また希に自然治癒することもあります。両者は顕微鏡の検便では鑑別は不可能で発見したら駆虫剤の投与がベストの選択です。
 
 コクシジウムにはイソスポラとアイメリアの2属があります。
 犬猫はイソスポラ(オーシスト内のスポロシスト2つ、スポロシスト内のスポロゾイト4つ)の感染でおきます。ウサギはアイメリア(オーシスト内のスポロシスト4つ、スポロシスト内のスポロゾイト2つ)です。 しかし両者間に駆虫薬の相違はある訳ではありません。


サルファ剤の歴史 
 サルファ剤(salfa)は一部に硫黄(sulfar)を含んでおり、これが名前の由来になっています。しかし硫黄とサルファ剤は別ものです。1932年、最初にG.J.P.ドマークらによつて合成された薬剤でスルファニルアミド基を持ちます。

 備考・獣医領域で時々使用する薬剤で、糖尿病のSU剤、アセタゾラミド(利尿剤)、ゾニサミド(抗癲癇剤)などがスルファニルアミド基を持ち これらの薬剤の使用で副作用が診られた場合はサルファ剤投与は注意が必要です。

 作用は葉酸の合成阻害です。葉酸は細菌は自身で作れますが、ヒトを含めて動物は食事から捕ります。その差を利用した薬剤です。サルファ剤は葉酸の前駆体、パラアミノ安息香酸(PABA)と同じような形状です。
サルファ剤を飲むと、PABAと競合拮抗して、PABAおしのけて、細菌の葉酸の代謝系に入り込むます。そしてジヒドロ葉酸を作れなくします。ジヒドロ葉酸はその後細菌のDNAなどを作る材料になりますので、細菌は生存できなくなります。ヒトを含めて動物はこの経路がないので副作用は少ない薬剤です

 副作用は薬学の本と臨床の場では相違が診られます。
 薬学の本では犬はアセチル化が低くサルファ剤の代謝が苦手です。長期使用で腎障害がでることがあるので注意が必要と記載されています。中毒症状として尿潜血,蛋白尿,尿排泄困難.血清クレアチニン,BUN濃度の上昇が診られるそうです。また尿が弱酸性の犬猫では希に代謝産物(おもにN4のアセチル体)が腎に析出します。ウサギは尿がアルカリ性なのでこの心配は皆無です。
 しかし副作用は臨床の場では使用期間が短いこともあり、私自身経験はありませんし、実際副作用が生じたことを聞いたことがありません。 

■サルファ剤のコクシジウムへの作用 
 サルファ剤は薬理学では抗菌剤ですが、コクシジウム虫体への浸透が良いため使用します。 
 コクシジウムは下痢でも薬剤吸収はよく、注射剤も経口剤も血中濃度は変わらい報告もありますが、本院では下痢がひどい場合は注射投与で3-4日間通ってもらっています。 主な効果は抗体産生までの増殖を抑えることで、無性生殖生活環の最後部分のtrophozoite→schizontの後期発育最終段階の抑制で、この薬剤はコクシジウムの生活環の遮断であり、殺虫効果ではありません。免疫状態は動物により異なり、そのため薬用量・期間の報告も教科書により様々です。経験的には駆虫には14-21日間を要しています。
初期のサルファ剤、スルファジアジン(sulfadiazine)は1947年にが開発され、1日2回の投与が必要がありました。

■スルファモノメトキシン sulfamonomethoxine 
 1日2回は不便のためスルファモノメトキシンは1958年頃に販売されました。投与後の血中濃度は延長して投与回数の減少(1日1回)、副作用の軽減目的(腎臓のアセチル体の沈殿を少なくしたり)を目的に作製されたスルファジアジンの誘導体です。この薬剤は動物病院ではではコクシジウムの駆除によく使用されてます。
 ヒト用、動物用共にダイメトンという商品名が有名です。ヒト用は製造中止になりました。また犬猫用もないため、小動物診療では現在、大動物用を使用しています。
 犬・猫・ウサギのコクシジウムの駆除に感受性がよく、好んで使用しています。

■スルファジメトキシン sulfadimethoxins 
  この薬剤も動物病院ではコクシジウムの駆除によく使用されてます。
 ヒト用、動物用共にアプシードという商品名が有名です。ヒト用はシロップ製剤・注射剤があります。ダイメトン同様、犬猫用はないため大動物用を使用している施設もあります。本院では文鳥始め鳥類のコクシジウムの駆除に使用しています。


その他コクシジウム駆虫剤
■トリラズリル Toltrazuril
 3週間に1回の経口投与でコクシジウムの駆虫可能なトリトラズリルは牛・豚のコクシジウムには認可されてます。 有性生殖・無性生殖両方に効能を示します。本院の使用経験で小動物(犬・ウサギ・文鳥など)に効能外使用は効果はあるようにおもいますがが、症例が少なくまだ詳細は不明です。使用の際は担当獣医師とよくお話ください。

■アセチルスピラマイシンSpiramycin Acetate 
 筆者はマクロライド系抗生剤のアセチルスピラマイシンもは犬猫コクシジウムに使用したことはあります。(ウサギは禁忌)使用した経験では確かにサルファ剤と同等の効能があるようにおもいます。
 医療ではアセチルスピラマイシンはマクロライド系抗生剤としての価値は低く、産科関係でトキソプラズマ(学名:Toxoplasma gondii)に使用される薬剤です。 トキソプラズマはアピコンプレックス門コクシジウム綱に属して動物のコクシジウムと分類が似ています。そのため効能があるのではと筆者は推測しています。
 サルファ剤で副作用がでる症例などは使用価値はあるとおもいますが、二重盲検などのデーターもみあたらず、開業獣医師の経験的な使用法で『有効』と判断してるにすぎないので、エビデンスとしてはサルファ剤より低い薬剤になります。


コクシジウム感染型oocystの生存期間、 
便に排泄されたオオシスト(oocyst)は1-3日で感染型oocystに変化します。

環境          生存期間
砂地(陽当たり)     4ヶ月
荒地(陽当たり)     6ヶ月
湿地           9ヶ月
樹木の多い陽影   18ヶ月
清水中         24ヶ月
乾燥鶏糞(陽影干し) 10ヶ月
乾燥鶏糞(天日干し)  7ヶ月

oocystの駆除法
熱湯   60度     30分
熱湯   80度       1分
熱湯   100度    1-2秒

熱風   80度      5分
熱風   100度     3分

消毒薬には殆ど抵抗します。






投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

お

tigerトリコモナス(Trichomonas fetus)は猫に見られる原虫疾患で、

大腸性の下痢を主訴に来院します。 


 と

ライトギムザ染色した猫トリコモナス(写真1)

 トリコモナスは大腸性の下痢を主訴に来院します。困ったことに、検便法では検出が低く(14%)、遺伝子検査 検出率(86%)が必要な場合もあります。今回の症例はタイミングが良く、検便でトリコモナスが発見されました。確定診断のためライトギムザ染色をしました。(写真1)

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■この猫のプロフール 
 1才の猫が下痢を主訴に川崎市多摩区南生田から来院しました。水溶性の下痢が頻回みられました。このトリコモナスは動物病院の現場では、慢性の大腸性下痢になり来院するケースが多く筆者の動物病院では6ヶ月-1年令の間の猫が多いです。

ね

  トリコモナスはやっかいなことに検便直接法で14%と検出率がよくありません。また複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用しても検出率はたかくありません。
そこで、RealPCR検査という遺伝子検査をオーナーに提示する場合もあります。この遺伝子検査ですと86%のトリコモナスはみつかります。しかしRealPCR検査は検査費が高く、本院ではオーナーの了解がとれないこともあります。そこで、あまり良い方法ではありませんが、私が猫トリコモナスに駆虫効果があると考える薬剤のトライアル治療もしています。RealPCR検査はそのほか写真のような病気の診断ができます。(アイデックス社の資料より)下痢疾患ではトリコモナスは3番目に多いみたいです。

 トリコモナスは臨床症状がなければ感染猫の90%が無治療で2年以内に改善します。しかしその後生涯その猫はキャリアーとなります。 
また排泄便はすぐに処理する必要があります。経口感染して次回の感染の源になるからです。よって駆虫しても再発する場合もあり、動物専門学校で発生したケースでは、治療には半年かかった場合もありました。
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治療
め

■メトロニダゾール(Metronidazole 
 このトリコモナスがなぜ大変かといえば、抗原虫薬の定番メトロニダゾール(商品名 フラジール®・アスゾール®)(写真)が効能を示さないことが多いからです。
 また100%治る薬剤はないと考えられています。本院でも手探り状態で治療薬を選択しています。



ち

■チニダゾール(Tinidazole 
 そこで筆者の経験では猫のトリコモナスにチニダゾールが良好と考えています。チニダゾールは耐性寄生虫がおきにくい薬剤です。
 この猫は2病日目に下痢も止まり元気になりました。
 家庭で2匹飼っている方だったので、もう1匹にもチニダゾールを飲ませてもらいました。
 また糞の始末もしっかりしてもらいました。
しかし多頭飼育の場合など、なかなかこのようにうまくいなない症例もあり長期間薬剤が必要なこともあります。
 今回の症例は、無事なおりよかったです。
 追記 2年経ちましたが、下痢の再発はありません。 

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■ロニタゾール(Ronidazole)  
 海外ではロニタゾール(Ronidazole)が良いという見解もありますが日本では発売されてません。
(本院もロニタゾールはありません。)



最終更新:平成27年4月20日(月)13時52分









投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

odagawamouseハムスターのジアルジア症


 

ハム下痢

 

生後7ヶ月の雄ハムスターが下痢を主訴に来院しました。 体重は78gと少々やせ気味です。またこれまで軟便のことが多かったそうです。今日はとくに下痢がひどいので来院しました。触診では体温が低く危険な状態です。 

down arrow検便でジアルジアが確認されました。

ハムスターのジアルジアは常在している原虫です。ハムスターの具合が悪くなるとでてきます。

この症例も抗原虫剤を処方しましたが、予後は厳しいと予想されます。


【関連記事】
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 エキゾチックに安全に使用できるノミ、ダニ製剤 
ハムスターのアレルギー疾患

最終更新:平成27年4月20日(水)9時57分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

お
壺型吸虫 Pharyngostomum cordatumcamera


壺型吸虫、虫卵 1000倍

 壺型吸虫の虫卵(105-120×70-90μm)は、やや大きめのきれいな楕円形を呈し、黄褐色で表面に亀甲状の紋理をもち、壺のような形をしていることが名前の由来です。終宿主は猫で、十二指腸から空腸上部に寄生します。

 猫がカエル、ヘビなどを捕食して感染します。本院では外猫の来院が少なく、発生は希で、感染しても無症状なことが多いです。軟便、食欲不振、栄養障害、削痩など専門書に記載されている臨床症状を呈する場合は、喧嘩、ネコカゼなどストレスをうけた状態で多く診られます。

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 外に行く猫の症例、
     壷型吸虫・マンソン裂頭条虫・猫回虫
の3種類の混合感染

 
 壺型吸虫・マンソン頭条虫、猫回虫の混合感染例です。
各寄生虫 虫卵の大きさがわかるとおもいます。
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 ■生活史
 糞便とともに排泄された壺型吸虫卵は水中で孵化しミラシジウムに成ります。
 ミラシジウムは第一中間宿主の小さな淡水産巻き貝のヒラマキガイモドキの中でスポロシスト、レジア、セルカリアへと発育し遊出します。
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次に第二中間宿主であるカエル、ヘビ、オタマジャクシなどの体内へ侵入し、その筋肉内でメタセルカリアになります。そしてこの第二中間宿主を猫が捕食することにより寄生が成立します。


 猫では壺型吸虫(写真右)はマンソン裂頭条虫(写真左)と
第二中間宿主はほぼ同じなので写真のような混合感染例は多いです。

 第一、第二中間宿主は共に田んぼ等に多い為、自然豊かな屋外で遊ぶ猫でないと感染しません。そのため室内飼育では診られず、自宅内の同居猫への感染はありません。
 また壺型吸虫はヒトへの感染は現在報告されていません。
(備考・マンソン裂頭条虫と猫回虫はヒトに感染例はあります。

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 ■疫学
 本院のある神奈川県内の保有状況は不明ですが、埼玉県内全域におけるネコに関する寄生虫類の保有状況 (2011年)では壺型吸虫は10.6%の感染が診られています。


治療
 プラジクアンテルの投与と中間宿主との接触をさけることです。 駆虫しても外で遊ぶ猫は再感染する場合はあります。

 
写真 プラジクアンテル含有剤
 (壺型吸虫の駆虫には注射剤もしくは力価の高い経口薬剤の使用しやすいです。)


【関連記事】
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最終更新:平成27年3月7日(土)16時9分


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.04.20更新

お
難治性の幼猫の下痢、遺伝子検査で発見された
猫トリコモナス症Trichomonas fetus

 他院からの転院症例の8ヶ月のスコテッシュフォーールドの雄猫です。

 前の動物病院でトリコモナス陽性と診断されメトロニダゾールの投与を受けて、遺伝子検査は陰性になりました。
 しかし軟便を繰り返すため東京都小金井市より本院を訪れました。

上記のように本院ではTrichomonas fetusは遺伝子検査で再度陽性でした。

■遺伝子検査はアイデックスRealPCRの下痢パネルを利用しています。 
 リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を利用して、猫では8種類のよく見られる病原体を検出することができます。(写真)
 ウイルス・細菌・原虫など異なる種類の病原体を一度に検査できることも大きなメリットです。

 猫下痢パネル検体必要量:便5g(最低量1g)、可能な限り新しい便が良いですが、ここ1週間以内便の合計でも可能です。  塩からなどの空き容器に入れ、冷蔵保存して本院にお持ちください。結果は7日前後かかります。

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■治療 

 

 トリコモナスはメトロニダゾールが効果あることは少なく困った疾患です。
そこで別の抗トリコモナス剤の投与をしました。(写真)
しかし薬剤をやめると2週間で再発しました。薬剤を投与しているときは良いですがこまったケースです。
そこで3ヶ月位の間、徐々に薬剤の投薬期間を延ばしてみたら軟便は収まりました。
 トリコモナスは生後2年ぐらい経てば、体の免疫が上昇して、症状はださないようになることが多い疾患です。しかしTrichomonas fetusを完全駆虫できる薬剤もないと考えています。

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【関連記事】
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ネコのトリコモナス

 

最終更新:平成27年4月20日(月)9時28分


 

投稿者: オダガワ動物病院

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