条虫、吸虫駆虫剤 プラジクアンテル(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2015.04.20更新
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条虫、吸虫駆虫剤
プラジクアンテル(Praziquantel)とは
昔はこれらの条虫・吸虫の駆除剤は投与前後に絶食が必要で、また投与後には下剤が必要な薬剤も多くありました。1985年ごろにプラジクアンテルPraziquantelが販売されてからはその必要はなくなり副作用は少なく安心して使用可能になりました。
注意点は条虫、吸虫の種類により、駆虫剤プラジクアンテルの投与量が大きく異なることです。(マンソン裂頭条虫の駆虫薬には瓜実条虫駆虫量の約6倍量、吸虫類は約5倍量) 条虫・吸虫は神経系の発達が悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン等は効果を示しません。プラジクアンテルの作用機序は 条虫等の外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。また駆虫剤投与より中間宿主と接触させないことが大切です。
■本院で診られる条虫、吸虫の種類と駆虫法



瓜実条虫の5-6倍の投与量が必要です。調節しやすいプラジクアンテル注射剤、力価の高い経口剤ビルトリシド®の使用が適切です。また第二中間宿主(カエル、ヘビなど)との接触をさけることも大切です。マンソン裂頭条虫はヒトでも感染例があります。
◆瓜実条虫(Dipylidiasis)には
プラジクアンテルの注射・経口薬・皮膚滴下剤の駆除と中間宿主のノミの駆除が必要です。ヒトでも感染例があります。
◆文鳥の条虫
プラジクアンテルの経口剤が便利です。しかし中間宿主が不明でなかなか完全駆除には至りません。
◆小型条虫
ハムスターで診られます。経口投与も可能ですが、プロファンダー®スポット皮膚滴下剤が便利です。ヒトでも感染例があります。
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■薬剤各論
■プラジクアンテルの注射剤 商品名・ドロンシット®注射液
ウルザネ条虫・マンソン裂頭条虫・壺型吸虫の駆除に使用される薬剤です。特にマンソン裂頭条虫・壺型吸虫の駆虫には高用量が必要なため、注射剤は投与量が調節でき使用しやすいです。
■プラジクアンテル含有の皮膚滴下剤 商品名・プロフェンダー®スポット 犬猫用
成分名・線虫駆虫薬エモデプシド21.43mg/ml(1.5-3mg/kg)、条虫駆虫薬プラジクアンテル85.75mg/ml(5.4-9.8mg/kg)が含有され、グリセリン類似物質に溶解している皮膚滴下剤です。犬猫回虫、犬猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫をほとんど同時に駆除可能です。7週齢、500g以上の犬猫から使用可能です。とくに猫は経口投与が大変な場合もあり重宝な薬剤です。瓜実条虫の駆虫量でプラジクアンテルが製剤されており、マンソン裂頭条虫などの駆除にはエモデプシド量がオーバードーズになり使用は薦められません。
プロファンダー®スポット 背中にたらすのみです。猫回虫の駆虫も同時可能です。
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■プラジクアンテル含有の経口剤
商品名 ドロンタール®プラス 犬用
駆虫薬3種類の犬用合剤で2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除できる幅広い効能を発揮します。
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用
瓜実条虫→プラジクアンテル
の駆除を行います。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除できる幅広い効能を発揮します。
商品名 ドロンタール® 猫用
猫用で駆虫薬2種類の製品で4週齢から使用可能です。猫回虫、猫鉤虫はパモ酸ピランテルが、瓜実条虫はプラジクアンテルが駆除します。ドロンタール®に含まれるパモ酸ピランテルは猫回虫の産卵前の未成熟な寄生虫に対しても高い駆除効果があります。短所はマンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆除にはパモ酸ピランテル量がオーバードーズになり使用は薦められません。この場合はドロンシット®の注射がお薦めです。
商品名 ドロンシット®犬猫用、 ビルトリシド®ヒト用
ドロンシット®は瓜実条虫感染の場合は便利な薬剤ですが、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫駆虫には猫の例で3錠も飲ます必要があり、利便性の良い薬剤とは言えません。ヒトで使用されている条虫・吸虫の駆除剤は動物用より力価が高いことが特徴です。しかし動物では錠剤・粉薬は投薬に抵抗して涎をだして、飲ませにくい場合があります。またビルドリシド®はなるべく粉砕しないで使用することがお薦めです。
ビルドリシド®
最終更新:平成27年4月20日(月)9時28分
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