酵母様真菌の診られたダックスフンド(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2018.06.20更新
診られるダックスフンド
この犬はいつも幼少期から、酵母菌真菌がみられます。(裸眼とグラム染色)
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2018.06.20更新
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2018.06.14更新
■犬用コクシジウム駆除剤、プロコックス®が販売されました。
2017年9月に日本初、犬用コクシジウム駆除剤プロコックス®が販売されました。
有効成分はトルトラズリル(コクシジウムの抗Isospora作用)にエモデプシド(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫駆除剤)を配合した合剤です。コクシジウム感染犬は犬回虫も混合感染しているケースが比較的おおいので2種類が配合されています。日本で犬用コクシジウムは初の認可薬です。
トルトラズリルの単独製剤は、すでに大動物用でバイコックス®という商品名で2008年に販売されています。
コクシジウムにはイソスポラ科(オーシスト内のスポロシスト2つ、スポロシスト内のスポロゾイト4つ)とアイメリア科(オーシスト内のスポロシスト4つ、スポロシスト内のスポロゾイト2つ)の2種があります。
犬猫はイソスポラ科の感染でおき、ウサギはアイメリア科でおきます。
当院ではこれまで、効能外使用の承諾を取ったうえでバイコックス®を、犬、猫。うさぎ、文鳥、ニワトリのコクシジウム症に投与して、副作用もなく、良好な成績を上げてきました。トルトラズリルはコクシジウムのイソスポラ科のみではなく、アイメリア科にも効果があるよう考えています。
犬用、プロコックス
■犬のコクシジウム
犬のコクシジウムはIsospora canisとIsospora obioensisの2種類の感染でおきます。
臨床症状として、嘔吐、頻回の下痢、血便が診られます。軽度な場合は回復可能ですが、重症なケースでは食欲不振から栄養障害、成長障害をおこし、最悪、悪液質になり死亡したケースもあります。
なお不顕性感染(虫卵の感染は診られるが、下痢など臨床症状がない状態)も多く、ワクチン接種時、偶然検便で発見されるケースもよくあります。
この臨床症状があるなし、重傷化は、感染年齢、摂取オーシシトの数、全身の健康状態により決まります。
また鶏では病原性の強いコクシジウム(Eimeria.tenellaの一部の株)と、弱いコクシジウム(Eimeria.acervulinaなど)が存在します。
一般的に、検便のみで臨床症状の重症化や、強弱の鑑別は不可能なため、コクシジウムを発見したら駆虫剤の投与がベストです。
コクシジウム生活環の特徴は無性生殖と有性生殖のステージをとることです。(1参照)
胎盤、経乳感染はなく、臨床例で多いケースでは、生後3-13週令の犬がオーシストを経口して感染は成立します。感染したオーシストはまず無性生殖を行います。腸管でスポロゾイト、トロフォゾイトとなり、腸管粘膜上皮細胞に感染しシゾントを形成します。シゾントはメロゾイトを放出し腸管粘膜上皮細胞を破壊します。多くの遊離したメロゾイトが、再び残存している腸管粘膜上皮細胞侵入し第2代シゾントになります。第2代シゾントは大量にあり、より多くの腸管粘膜上皮細胞に寄生し、第2代メロゾイトを放出し多くの腸管粘膜上皮細胞を破壊します。
このシゾントからメロゾイトの形成は栄養状態により異なりますが2-4代繰り返しおきます。
この時点で感染している犬はコクシジウム虫卵の排泄はありませんが、臨床症状として下痢がおきることがあります。(動物病院ではまた日を改めての検便が必要です。数回でコクシジウムは除外できません。)
その後メロゾイトはマクロガメート、ミクロガメートに発育して、有性生殖をしてザイゴートからオーシストを形成します。便ととも未成熟オーシストが排泄されます。排泄した虫卵は3日以内に成熟オーシストになります。
(1) コクシジウムの生活史(バイエル社の資料より引用)
オーシストの経口感染でおきるため糞便を素早くかたずけることが大切です。コクシジウムの環境の整備は下記(1)を参考ください。消毒薬には普通の使用濃度には殆ど抵抗します。
そこで、自宅では床などは、熱湯100度で1-2秒で死滅データーを引用しますが、沸騰させてから床にかけても、床の温度で冷やされ実際の温度は100度でなく低下しています。何度か行うか、熱湯後、洗い流すなどの追加処置が必要です。
また犬ちゅん使用のタオル等は洗濯機で洗浄したあと、コインランドリーまたアイロンの噴射機能の使用をお薦めします。
なお犬の皮膚に糞がついた場合はシャンプーをして、虫卵を洗い落してください。
■(1)コクシジウムの環境の整備
環境 生存期間
砂地(陽当たり) 4ヶ月
荒地(陽当たり) 6ヶ月
湿地 9ヶ月
樹木の多い陽影 18ヶ月
清水中 24ヶ月
乾燥鶏糞(陽影干し) 10ヶ月
乾燥鶏糞(天日干し ) 7ヶ月
熱湯 60度 30分
熱湯 80度 1分
熱湯 100度 1-2秒
熱風 80度 5分
熱風 100度 3分
■プロコックス®の詳細
●トルトラズリル(Toltrazuril)
これまでコクシジウムの駆除に使用してきたサルファ剤はコクシジウムを直接殺滅する訳でなく、無性生殖ステージのシゾントからメロゾイトになる部分の発育をとめ、コクシジウムの免疫が成立するまで増殖を抑える目的で使用されてました。しかし動物により免疫状態は異なるため、薬用量・期間の報告は様々で、一般的に2-3週間位はかかりました。
今回発売されたプロコックス®は無性生殖と有性生殖の両方のさまざなステージに対して、極めて広く作用を及ぼします。基本的には1回の投与で駆虫可能ですが、2週後、経過によっては再投与が必要な場合もあります。
注意点としてコクシジウムで下痢がおきている場合は、この薬剤は下痢に効能を示す訳ではありません。特に仔犬の場合、下痢に対する対称療法は大切です。
●エモデプシド(Emodepside)
エモデジプトは犬回虫(Toxocara canis)、犬鉤虫(Ancylostoma caninum)、犬鞭虫(Trichuris vulpis)に効能を示します。前記しましたが、統計上、犬回虫はコクシジウムとの混合感染が多いのでこの薬剤は重宝です。
欠点は、MDR1に変異(脳脊髄門の機能が他の犬より弱い体質)のあるコリー種、およびその系統には注意が必要です。
私感ですが、犬種によってはエモデプシドが入っていない牛用、豚用バイコックス®をオーナー承諾のもと使用するか、サルファ剤を使用した方が安全かもしれません。
犬用、プロコックスと牛用、バイコックス
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【他の動物へのプロコックス®効能外使用例】
■プロコックス、猫のコクシジウムへの使用例
■文鳥(学名:Padda oryzivora)のコクシジウム(Coccidium)
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2018.06.11更新
■旅行から帰宅して下痢のイヌ
診療中にした下痢便(写真1)
大きな車に変えて初めて旅行にいった柴犬の症例です。
広い車に買い替えてオーナーも犬ちゅんもリラックと考えたいものですが、
犬ちゃんは車を変えたことで、車内での居場所に困ってしまったそうです。
またドライブコースもアップダウンの激しい山道に出かけられました。
帰宅すると3日間下痢が止まらなくなり、嘔吐も1回あったため本院を受診しました。
写真1は診療中にした便です。元気、食欲はありますが未消化のドックフードが診られました。
写真2・簡易染色で、芽胞菌が多く診られた。
検便では虫卵は診られず、簡易染色で、芽胞菌が多く診られました。(写真2)また便の回数も多い症例でした。
検査結果、臨床症状からフラジール®、ザラゾピリン®を処方しました。
以前に経験した同様の症例は伊勢志摩を犬ちゅんと何拍はで旅行後下痢が治らず、同様の処置で回復しました。
この症例は伊豆箱根の日帰りでしたが、その後2日位で回復したと後日連絡ありました。
【下痢、寄生虫関連ページ】
■酵母様真菌(Cyniclomyces guttulatus)の診られるダックスフンド
■犬用コクシジウム駆除剤、プロコックス®が販売されました。
■犬の代表的な外部寄生虫
■犬のジアルジア(Giardia)症
■子犬の下痢
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2018.06.02更新
■犬小回虫(Toxascaris leonina)
本症例
犬小回虫・虫卵 顕微鏡写真(×1000)
4月に田舎に帰省していたら、『便の中に虫が診られたり』、『胃の中から白い虫のようなものを吐くことがある』との稟告で、1歳のワイマラナーが多摩区南生田から来院ました。検便で犬小回虫が発見されました。
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■生活史
犬小回虫は犬猫はじめ、多くの犬科、猫科動物に感染します。年齢抵抗性もなく、原則的に気管移行はなく、胎盤感染、乳汁感染もありません。
小腸内の雌成虫は未分化卵を産み、糞便中に虫卵がでます。外界の虫卵は7日位で感染虫卵になります。
この感染虫卵を犬猫が摂取すると、十二指腸で仔虫が孵化し、腸壁に侵入し、そこで14-18日までに、第四期感染仔虫になります。
35-42日目に小腸に成虫が診られ、感染後60日位で虫卵が排泄されます。
待機感染あり
感染虫卵を齧歯類など(ネズミ、ウサギ、ニワトリなど)が待機宿主にをたべられると、仔虫は腸壁に侵入して、ネズミではそこにとどまったのち、体内移行を行って主として骨格筋にはいります。これを犬猫など固有宿主が摂取すると、腸管で直接発育して、8週間後虫卵が排泄されます。
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■治療
駆虫薬としてドロンタール・プラス®を処方しました。上記で説明したように、犬小回虫はプレパテント・ピリウドは約2ヶ月なので、その時期に2回目の投与のため来院を指示しました。
ドロンタール・プラス®
この犬はレボリューション®でフィラリアの予防はしてました。レボリューション®の欠点として、犬回虫の駆虫には弱いことが挙げられます。そのため犬小回虫も駆虫できず感染してしまったと考えています。
臨床症状を頻度に示すようなら、定期的な犬小回虫の駆虫薬投与や、散歩コースの変更が必要になります。
【他の動物の回虫症は】
■犬回虫
■猫回虫
■烏骨鶏の回虫症
■ハト回虫虫卵と成虫標本
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2018.06.02更新
■犬のジアルジア(Giardia)症
写真① バイエル社資料より
ジアルジア症はヒト(Giardia.Intestinalis、Giardia.Lamblia)、イヌ(Giardia.canis)、ネコ(Giardia.cati)などで種は異なるとされてましたが、最近、遺伝子研究が進み、何れも性質が似てる点が多い結果からすべてGiardia.Intestinalis様の感染に起因する疾患と定義されるようになりました。
よって犬から人へ感染する場合も理論所は希にあります。(写真①)
栄養体(トロフォゾイト)と嚢子(シスト)の2形態からなる原虫です。感染様式は糞から口へシストを経口摂取することによりおこります。ジアルジアはもともと水中で生活した関係で、水分の多い環境では長期に生存しますが、乾燥には弱い特徴があります。
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診断
写真②(アイデックス社資料より)
写真③ 便を直接鏡検したジアルジア、
トロフォゾイト(アメーバ状)とシスト(台形状)
ジアルジアの直接鏡検法の検出率(院内検査法)は
写真②のアイデックス社資料を引用よると
感度27%、特異性31%しかありません。
写真④、特異抗原の検査(スナップ・ジアルジア)陽性例
そこでG.Intestinalisの特異抗原が使用されているスナッツプ・ジアルジアを使用すると、検出率は感度90%、特異性96%と有意に上昇します。(写真②アイデックス社資料)
そのため診断には直接鏡検に加え、特異抗原の検査が大切です。
スナッツプ・ジアルジアを使用した別の報告でも、ジアルジアは全国14ヶ所371頭27種類の犬種の調査では、陽性率は6.7-59.3%と高い値を示しています。
年齢別では1-9ヶ月 54.9%、成犬では30.9%がジアルジア陽性でした。
幼犬を中心に一番犬が感染する寄生虫と推測されます。
スナップ・ジアルジアは犬限定なため、犬以外の動物で便が多くとれた場合は検出率をあげるため、直接鏡検に加え硫酸亜鉛7水和物による浮遊法を使用する場合もあります。下記詳細。
硫酸亜鉛7水和物33.3g/水道水100ml(比重1.18)①液を作成、スピッツ管に便O.5gと①液を1/3-1/2位加え十分攪拌する。
ガーゼ1枚で別のスピッツ管にろ過し、ろ過液に①液を加え管口から1cm位に調節する。
2000-2500rpmで5分遠心すると虫卵、シストは最上層に浮遊する。管口よりかずかに盛り上がる程度まで①液を加え、ただちにカバーガラスを乗せて5-10分間後に鏡検する。硫酸亜鉛12水和物の使用は意味なし、必ず7水和物を購入のこと。
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症例
先日の症例は購入したばかりの子犬が下痢が止まらず来院しました。検便では陰性でしたが、特異抗原検査(スナップ・ジアルジア)では陽性を示し、(写真④)メトロニダゾールの投与でよくなりました。
ジアルジアの吸着円盤が消化管の管腔内壁に付着すると、腸管の栄養を吸収する上皮に吸盤が付着するため、食べ物の吸収がうまくいかず、浸透圧下痢をおこし脂肪便になることがあります。
この症例は下痢の症状がありましたが、特異抗原検査が陽性でも無症状な犬もいます。子犬のジアルジア感染は90%が1歳位になると自己の免疫力で自然治癒する意見もありますが、最近は遺伝子検査によりヒトに希に感染する可能性が指摘されているので、駆虫した法が良いと本院では考えています。
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生活環
生活環は単純でトロフォゾイトとシストの2形態からなります。
感染様式は典型的な糞から口への感染で,シストを経口摂取することにより感染します。
顕微鏡ではトロフォゾイトは直進性運動をしますが、シストは台形様に診られます。(写真②)感染の能力があるのはシストのみです。下痢の激しい疾患では、シストの形成ができずトロフォゾイトのみ排泄される場合もあります。
トロフォゾイトは外界で死滅しますが、シストは排泄と同時に感染力を獲得しますので家庭では早めに便の処置が必要です。特に水分の多い環境では長期に生存します。環境中のシストの除去のため、トイレ、床は可能なら熱湯消毒がベストです。熱湯消毒できないものは日光消毒、アイロンの噴霧機能がお薦めです。犬に下痢便が付いた場合は、シャンプーもよい方法です。なおシストも乾燥には弱く、短時間で感染力はなくなります。
犬猫における生活環の詳細日数は不詳ですが、ヒトではジアルジアはシストの経口感染で、感染後6-15日で典型的な症状がでて、急性期2-4日経過、その後治るか、慢性期に移行するそうです。プレパテント・ピリオドは実験例で犬、5-12日(平均8日)、猫、5-16日(平均10日)と報告されています。
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治療(駆虫薬)
抗原虫薬フラジール®(成分名、メトロニダゾール )(写真⑤)の投与で70%はよくなります。
効果ない場合はチニダゾール(写真⑤)、ドロンタールプラス®(写真⑥)また一部の抗生剤を使用しています。しかし原虫の感染数が多かったり、飼育環境が劣悪だと、次から次と感染がおこり、駆虫薬も効果を示さない場合もあります。そのため上記した消毒との併用は大切です。
単独飼育のときは7日位で回復することをが多いです。多頭飼育の環境(約20頭位)にいるジアルジア駆虫を診療したことがありましたが、同時駆虫薬の使用をおこない、熱湯消毒を徹底させましたが、完全駆虫には半年ぐらいかかりました。
(写真⑤) 抗原虫薬フラジール®(成分名、メトロニダゾール Metronidazole)と
ハイチジン(成分名、チニダゾール、Tinidazole)
(写真⑥)ドロンタールプラス®
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2018.06.02更新
■犬の糞線虫
私の開業している地域では糞線虫まず診ません。東京・神奈川では少ないのかもしれません。
犬では九州・沖縄地方が多いことが記載されている本もありますが、東北地方の動物病院の研究報告も診ます。
犬はしつこい下痢で来院します。粘膜に穿孔している寄生虫ではないので、血便は殆どありません。診断は新鮮便でラブジチス型幼虫をみつけます。(L1・雌2mm)しかし検出率は良くなく、複数検便が必要な場合もあります。
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■寄生は雌のみ
この寄生虫は動物(犬・人にも)感染しすると、ラブジチス型幼虫(R型)という形式で小腸に感染します。寄生すると雄は必要なくなり、処女生殖で数時間で卵内に幼虫が形成され孵化していきます。この孵化した幼虫をラブジチス型幼虫(L1)と呼び、腸腔に出て糞便を食べて成長しラブジチス型(L2)になり外界へ排便と共に出されます。
■外界での発育
ラブジチス型幼虫(L2)は、その時の環境で二つの道(①寄生世代・②自由世代)のいずれかをとって発育します。
おおまかな検討はされていますが、どちらの世代をとるか詳細はよくわかっていません。
■外界での発育①
①不利な条件下では24時間で寄生世代(別呼・直接発育)になることが多いです。
ラブジチス型幼虫は二回脱皮をして古い皮を被ったフイラリア型(F型・L3)の感染幼虫になります。フイラリア型の特長はラブジチス型幼虫と異なり、口が閉ざされ栄養物を取れないので、一定期間しか生きられないことです。
その間に犬・人の皮膚から侵入したり、また経口感染できればフイラリア型から動物体内でラブジチス型幼虫になり、次の世代を残せますが、感染の機会がなければ死んでしまいます。
■外界での発育②
②食事が十分にあって、温度も適温で(20-30度)、混み合っていないときは自由世代(別呼・間接発育)を選ぶ傾向が多いです。
この経路はラブジチス型幼虫(L2)のまま4回脱皮を重ねて36時間前後でラブジチス型幼虫(L5)にまでなり、雌雄の各々の成虫に変化し交尾します。しかし雄はすぐに死亡し、雌も同様卵を産むとすぐに死亡します。寿命は二日間ぐらいしかないそうです。
卵はすぐ孵化してラブジチス型幼虫(L1)として生まれますが5-6日でラブジチス型幼虫(L2)を経て、フイラリア型幼虫(L3)となり、寄生世代との共通経路に入り同様の運命を辿ります。
■その他の発育③
③他にラブジチス型幼虫が腸内で自家繁殖する経路が知られています。この経路が活発になると人では重傷化します。
以上糞線虫はこのようなバリエーションの多い生き方をしているので、駆虫薬が効きにくい訳です。
他の寄生虫
■ウリザネ条虫の猫
■ウサギのコクシジウム症
■ハト回虫 虫卵と成虫標本
■マンソン裂頭条虫
■犬回虫症
■猫回虫
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2018.06.02更新
■子犬の下痢
子犬が急に下痢になりました。昨日、川崎市の夜間で処置をしてもらい下痢は止まっていました。今朝確認のため来院しました。
ウサギの酵母菌⇩
本院の検便ではウサギの酵母菌が診られました。ウサギの酵母菌は時々犬でみますが、ひどい下痢になった記憶はありません。
ジアルジア検査(陽性)
子犬の下痢で多い疾患に原虫疾患のジアルジアがあります。このジアルジアの特長は、顕微鏡での糞便検査ではなかなか発見されません。そのため抗原検査が必要です。
この症例は遺伝子検査は陽性でしたが、本日は下痢は止まっているので、ジアルジア駆虫は行いませんしでした。
陽性でも便が普通ならジアルジア駆虫は行わなくてもよいケースもあります。その理由は1年位たつと免疫で自然治癒することも多い原虫のためですが最近は駆虫する傾向になっています。
しかし最近はヒトの感染する可能性が示唆されており、駆虫を推進する意見が多いです。
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2018.06.02更新
■犬鉤虫症(Ancylostoma caninum)とは
(1)犬鉤虫 虫卵 長径65μm
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■症状
本院では殆ど診ない寄生虫です。犬鉤虫の成虫は体長約1-2cmの寄生虫が小腸の絨毛に咬みついて寄生しています。
鉤虫は口に3対の大きな鉤があるのが特徴です。吸盤状の鉤が腸の中について吸血し、小腸壁に傷がつき血便を呈して来院します。また栄養の吸収不全がおき削痩して来院するケースもあります。
■感染様式
犬鉤虫は①被嚢子虫の経口感染、②経皮感染、③経乳感染、④胎盤感染、⑤待機宿主の補食で感染します。
犬回虫は卵殻が硬く虫卵ごと捕食されますが、犬鉤虫卵は外界に出ると卵殻が薄いため夏場なら半日から分裂が始まり、約7日間で幼虫が出現します。そのため①被嚢子虫の経口感染は幼虫の捕食になります。幼虫は腸管で成虫になり、気管型移行、体内型移行はおこなわず、経口感染の場合は腸管のみで生活環を過ごします。
外界で幼虫になるため、②のように犬の皮膚から感染して、気管型移行を行い、腸管に感染する特徴があります。
母犬から胎盤や母乳を介して感染することがあるため、子犬でも発症することがあります。希に健康診断どき、検便で虫卵が診られますが、体の未熟な子犬が鉤虫に大量に寄生すると、重い貧血を起こし、命に関わることもあります。(③経乳感染、④胎盤感染)
⑤待機宿主の補食については多くは事例は報告されてません。
実際あったケースで、地域のOO公園に散歩にいく犬は犬鉤虫に感染するケースがありました。短期間でこの寄生虫によく罹患する場合は定期的駆虫、散歩コース、飼育環境の変更が大切です。
■治療
線虫なので、犬回虫と同じ薬剤になります。本院ではドロンタールプラス®を主に使用しています。裸錠ですが大抵の犬に投薬は可能です。
味に敏感な場合は嗜好性のよいイベルメック®などのチュアブル錠をフィラリア予防とリンクして使用しています。
また最近販売されたプロコックス®も犬鉤虫の対称になります。
本院ではイベルメック®とプロコックス®の使用の際はフィラリア陰性を確認しています。
ドロンタールプラス®
イベルメック®
駆虫薬は成虫には効いても、卵には全く効きません。そのため犬鉤虫のプレパテントピリオド(経口感染15-26日、経皮感染17-21日、経乳感染10-14日、胎盤感染10-14日)、(参考 猫鉤虫は経口感染で14-21日)を考慮して駆虫薬を再投与が大切です。
ヒトには感染幼虫が皮膚から侵入し、皮膚炎を起こすことがあります。幼虫移行症に発達する場合もあります。
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2018.06.02更新
■私の開業している地域で診る
犬の消化管寄生虫を説明します。
都市近郊の動物病院では、寄生虫疾患は最近はあまり見なくなりました。
当院では線虫・条虫は減少傾向ですが、原虫類の感染は多く診ます。
またいろいろな施設の結果をみるとまだまだ寄生虫はいるようです。
ペットショップ・愛護施設などで1-2回検便が終了していても、生活史の関係で購入してから発見される寄生虫もいます。
また屋外で保護された動物は寄生虫はいることが多いです。
まれにヒトに感染する寄生虫もいますので、必要に応じて、かかりつけ獣医師で複数回の検便(直接法・遠心法など)また特殊検査を受けることをお勧めします。
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◆駆虫とは
ペットショツプで一般的言はれる「駆虫」は犬回虫・犬鉤虫・原虫類の駆除を指す場合が多いです。しかし限られた期間で駆虫できない寄生虫もあります。
●本院では寄生虫の種類により下記の3つのグループに分けて考えおこなっています。
①犬回虫・犬鉤虫はともに線虫類に属し同じ薬剤で効果があります。
線虫類の駆除に必要な概念で、宿主に感染した後、虫卵を排出するまでの日数をプレパテント・ピリオドと言います。みせかけの陰性の期間を示し。この期間は感染していても検便で虫卵は見つけられません。
期間は犬回虫と犬鉤虫は2-4週間、犬鞭虫で2-3ヶ月です。以上の理由で線虫類の駆虫にはこの期間を開けてして再投与が必要です。
なお犬鞭虫も線虫類ですが犬回虫・犬鉤虫と駆虫薬の種類と用量などが一部異なります。
②原虫類のジアルジア・トリコモナス・コクシジウムは、その原虫に適した薬剤を1-2週間短期集中に使用します。他に便の処置を早くおこなうことが大切です。適した薬剤を使用しても、再発の多い厄介なケースもあります。
③最近、犬では殆どは診ませんが条虫・吸虫類は適した駆虫薬に加え、中間宿主と隔離が大切です。
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■犬回虫(Toxocara canis)
犬回虫は本院でもときどき診ます。成虫は「そうめん」状で雄雌がいて、
交尾して写真のような形状の卵(顕微鏡所見)を生みます。
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■犬鉤虫(Ancylostoma caninum )
犬鉤虫は体長約1-2cmの寄生虫が小腸の絨毛に咬みついて寄生しています。
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■犬鞭虫(Trichuris vulpis)
犬鞭虫は7ヶ月以上の犬で感染が診られます。後天的感染です。
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■犬のコクシジウム(Isospora canis、Isospora obioensis )
犬のコクシジウムは
①頻回の下痢で発見されたり、②また偶然検便で診られることもあります。
特に子犬で下痢が続く場合は、脱水して死亡する場合もありますので注意が必要です。
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■犬ジアルジア症は
Giardia.Intestinalis類に起因します。
犬のジアルジア症は全国14ヶ所371頭27種類の犬種の調査では、陽性率は6.7-59.3%と高い値を示しています。
(年齢別では1-9ヶ月 54.9%、成犬では30.9%がジアルジア陽性です。 だぶん一番犬が感染する寄生虫と推測されます。)
◆注意 人にも感染する可能性があります。犬ちゃんを飼育の際は検査をお薦めします。
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2018.06.02更新
■犬回虫症(Toxocara canis)とは
ヒト回虫は、戦後はヒトにも多くいましたが、現在、殆どみられなくなりました。
しかし当院では、犬回虫は幼少期に時々診ます。
(1)犬回虫 虫卵 75-80×65-70μm
検便にて顕微鏡で上記のような虫卵が診られます。
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(2)犬回虫 成虫 雄3-10cm 雌5-18cm
また 糞便中に上記(2)のように肉眼で成虫を見つけて来院されるケースもあります。
検便の方が感度は良いです。
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■症状
犬回虫は感染数が少なければ症状はありません。
しかし多数が寄生すると症状は一変し、嘔吐、下痢はじめ、回虫が消化管内で縺れることで腸閉塞になった例もあります。
少数の感染では宿主に害を及ぼしませんが、一度に大量寄生があると命を落とす状態まで進行することもある寄生虫です。
他の動物の回虫症は
■猫回虫
■烏骨鶏の回虫症
■ハト回虫虫卵と成虫標本
■感染様式
幼犬期の寄生虫疾患です。
犬回虫は①被嚢子虫の経口、②経乳感染、③胎盤感染、④待機宿主の補食で感染します。
鶏の回虫と異なり産卵の季節性はありません。
被嚢子虫の経口感染について解説します。
(3)直後の便 子犬は、未分化卵で回虫卵を排泄します。
(4)2週間後の便(上記写真2枚は本院の庭での実験)
犬回虫卵は25度2週間で感染力をもつ幼虫包嚢卵になります。鶏の回虫と異なり産卵の季節性はありません。
排泄直後の便より、このような便を犬ちゃんが臭いを嗅いかいた場合の方が犬回虫の経口感染は心配です。
また土の中でも幼虫包嚢卵は1-2年生存し、冬場に排泄されても、卵は春先まで生存して新たな感染源になります。 稀に人にも感染します。
待機感染はネズミなどが、幼虫包嚢卵を食べると筋肉内に被嚢します。そのネズミを犬が食べた場合におきる感染様式です。
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生後3ヶ月未満の若い犬が虫卵を摂取すると気管型移行を採ります。(腸管―肝臓―心臓―肺―気管―咽頭―腸管)感染後約2週間で再度腸管に戻り、その後2週間で成熟し虫卵を排泄します。プリパテントピリオド(資料B)は3-4週です。
しかし3ヶ月以上の犬は体内型移行を採り、肺までは移動した後、その後気管へと上行せず、そのまま全身へと血流に乗って拡散される。そして1週間後全身の臓器や筋肉内で肉芽腫に囲まれて被嚢してします。体内型移行が完了した雌犬が妊娠すると、被嚢した幼虫が賦活化して胎盤を通じて、胎子内の肝臓へ移行する(胎盤感染)。こうして生まれた子犬は生後21-24日で虫卵を排出します。また出産後4日目で母体にいる被嚢幼虫は乳汁に移行し、子犬が乳汁を飲み腸管内で成虫になります(経乳感染)。
以上が犬回虫の虫卵は幼犬では出やすいが、成犬からは出にくい理由です。
但し気管型移行から体内型移行への変更時期は必ず3ヶ月前後で変わる訳ではなく、イヌの環境・性差・栄養状態などにより広い幅があります。
なお犬回虫の寿命はおよそ1-2年です。
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■治療
本院ではドロンタールプラス®(資料C)を主に使用しています。裸錠ですが大抵の犬に投薬は可能です。しかし味に敏感な場合は嗜好性のよいイベルメック®(資料D)などのチュアブル錠をフィラリア予防とリンクして使用しています。また最近販売されたプロコックス®も犬回虫の対称になります。
プリパテントピリオド(資料B)が3-4週はなので、1ケ月後に必ず再駆虫してもらっています。
(5)プロコックス®(バイエル薬品)
資料A ●犬回虫の産卵能力と検便の検出率について。
犬回虫卵は1日の10kg雌犬の推定便量130g中に900-2000個の犬鞭虫卵を産みます。糞1gあたり154-1540個に相当します。直接法で検便を診るとプレバラート1枚当たり便量は2-3mgになり、0.3個-4.6個の犬回虫卵が見れる計算になります。そのため直接法で検便をしても検出率はまずますです。 浮遊法・遠心法の中で最も検出率のよいとされる硫酸亜鉛遠心法(その1・その2)は便0.5gの回収率を50%として計算するとプレバラート1枚当たり39-390個の犬回虫卵が見れる計算になります。
以上犬回虫は単回の検便では検出ができない場合もあり、診断には複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用することがベストです。試験的に回虫の駆虫剤を投与して様子を診ることも可能です。
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資料B
子犬に犬回虫が経口感染した場合、プレパテントピリウド注1)は50-60日です。このプレパテントピリウドの期間中に検便してた場合、虫卵は検出されません。感染は成立しても検便では陰性になる訳です。また糞便は、均一分布して、回虫がいる訳ではありませんので、直接糞便検査、集卵法をもちいても見逃す可能性はあります。
注1) 宿主に感染後、虫卵や幼虫を排泄できるまでの期間をさします。犬回虫の場合、卵に効果ある薬剤はないので、卵から成虫になる約30日後に再駆虫します。寄生虫の種類により異なります。
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資料C
ドロンタールプラス錠®(バイエル薬品)
犬用の裸錠で本品1錠中にプラジクアンテル50mg(5-10mg/kg)、パモ酸ピランテル144mg(14.4-28.8mg/kg)、フェバンテル150mg(15-30mg/kg)を含有する。2週齢以上の500g以上の子犬で認可。
パモ酸ピランテルが犬回虫、犬鉤虫を、パモ酸ピランテルとフェバンテルの相乗作用で犬鞭虫を、プラジクアンテルが瓜実条虫を駆除する。メトロニダゾールの誘導体フェンベンダゾールのプロドラックがフェバンテルである。フィラリア陽性犬でも使用可能。
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資料D
イベルメック®(フジタ製薬)
イベルメクチン(5-11μg/kg)でフィラリア予防、パモ酸ピランテル(14.4-28.8mg/kg)で犬回虫、犬鉤虫駆除が可能な合剤でチュアブル錠。イベルメクチンはミクロフィラリアの陰性を確認後投与のこと。チュアブルとは『噛むこと』のチュア(chew)と『できる』の(able)造語です。普通の錠剤は胃で溶けて小腸から吸収されて薬効を示しますが、チュアブル錠は薬剤を噛んでも小腸から吸収できる薬剤形態です。水無しでも投与でき、苦味がなく、嗜好性が良い(イベルメック®で98%)薬剤形態です。なお食事アレルギーの既往歴ある場合はアレルゲンとチュアブル錠内容物の確認が必要になります。美味しいため犬舎の上など犬が届く場所にチュアブル錠を置くと、オーナーの目を盗んで、すべてのチュアブル錠を犬が誤食してしまう恐れがあるため、薬剤管理は大切です。
●症例
ポメラニアン 雄 4ヶ月です。ペットショップから購入後1週間で、混合ワクチン接種とフィラリア予防で来院した例です。
検便をオーナーに切り出したところ、「便の状態は正常で、検便はペットショップで済んでいる。」との理由で行わず、フィラリア予防薬にはイベルメック®(資料D)を処方しました。そしてこの薬剤は犬回虫、犬鉤虫にも効果のある点も強調しました。
翌朝、オーナーが「お尻から、そうめんのような虫が便と一緒に出た」(2)ことに驚いて再来院しました。
「検便はペットショップで済んでいるのに何故いるのか。」という質問があったため、回虫など消化管寄生虫は検便の回数が少ないと検出され難いこともあり、そのため昨日検便を薦めた理由も再度伝えました。(資料A、B)
またイベルメック®がフィラリア予防のみではなく回虫の駆虫薬である旨も再度伝え、その後も月1回投与を続けることを指示した。
『検便はペットショップで済んでいる。』を100%虫はいないと勘違いしてしまうオーナーはよくみかけます。ここに示したようなからくりはありますますので注意が必要です。
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