ウサギの蟯虫について(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2018.04.03更新
■ウサギの蟯虫について(Passalurus ambiguus)
、生後5ケ月のウサギの糞に白い虫が見つかったので
地元川崎市多摩区から来院しました。
ウサギでは蟯虫の虫体と便が一緒に排泄されて動物病院を訪れることが多いです。
この2枚の写真は他の症例(宮前区から来院)ですが、
このように濃厚感染している場合もあります。
肉眼所見、便から虫体を分離すると先が細い形態になります。
虫体の顕微鏡写真(虫体が長いので顕微鏡40倍2枚を合成)
この特徴的な成虫の形態からこの症例はウサギ蟯虫と診断しました。
小学校のときおこなったセロハンテープをお尻に付けた蟯虫検査
蟯虫はウサギのみでなく、ヒトでも診られます。お尻に小学校のときセロハンテープをお尻付けた検査(上記)を記憶している方も多い想います。あれが蟯虫検査です。
(備考・蟯虫検査は子供の検出率が1%以下のため2015年度限りで廃止)
ほかに本院に来院する動物ではハムスターにも蟯虫は診られます。
ウサギ蟯虫(Passalurus ambiguus)、ハムスター蟯虫(Syphacia mesocriceti )、ヒト蟯虫は(Enterobius vermicularis) は肉眼では似てますが、学名の英語スペルが異なるように、属が異なりお互い感染し合うことはありません。
■ウサギの蟯虫の特長
本院では来院年齢は比較的若い1-2才が多いです。見た目『気持ち悪い』と感想を述べられるオーナーが多いですが、ウサギと蟯虫は、片利寄生性という共存関係にあり、食欲不振、下痢など臨床症状をだすことはまずありません。
夕方から夜に肛門付近に出現するため、夜間に虫体が発見されるケースが多いですが、上記した理由で急いで動物病院に行く必要はない疾患です。本院では朝一番で来院するケースが多いです。
■ウサギの蟯虫の診断
診断は上記したように成虫の虫体に特徴があるので、持参された虫の視診が主です。夕方から夜に肛門付近に出現する習性を利用してその時間帯にセロハンテープをウサギの肛門付近にあてると発見されやすい場合もあります。また検便で虫卵が診られる場合もときどきあります。
別の症例で検便で虫卵が診られたケースもありました。
■ウサギの蟯虫の駆虫について
片利寄生性という共存関係にあり、駆虫はしなくてもいいのではという意見もあります。
薬剤は蟯虫は線形動物門に属するので、回虫駆虫と同じになります。
経口投与剤が主に使用されてますが、嫌がるウサギも多く、本院では写真のような皮膚にたらすスポットタイプを使用しています。
プレパテント・ピリオドが55-60日なので、2ヶ月後に再駆虫で来院してもらっています。しかし生活史が複雑なため駆虫薬を投与しても、希に蟯虫が再発する場合もあり、その度駆虫薬が必要になることがあります。この点が注意点です。
本院はこのウサギの蟯虫をこれまで何百例か診てますが、約9割のオーナーは駆虫を希望します。追跡調査が可能の範囲で、駆虫薬を投与して、再発のあったのは2例です。
皮膚にたらすスポットタイプの回虫駆虫剤
■ウサギの便が肛門、足底に付着、蛆がわくこともあります。
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