酵母様真菌の診られたダックスフンド(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2018.06.20更新
診られるダックスフンド
この犬はいつも幼少期から、酵母菌真菌がみられます。(裸眼とグラム染色)
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2018.06.20更新
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2018.06.15更新
肛門から異物がでて来院した犬
肛門から異物がでてきたので来院しました。4歳雌のイングリッシュコッカ・スパニエルです。
本院で引っ張ると、肛門からとれました。採れたものをみたところペットシーツを誤食したものみたいです。
これらが腸に詰まり腸閉塞になる可能性もありますので日頃から注意が必要です。
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2018.06.14更新
■犬用コクシジウム駆除剤、プロコックス®が販売されました。
2017年9月に日本初、犬用コクシジウム駆除剤プロコックス®が販売されました。
有効成分はトルトラズリル(コクシジウムの抗Isospora作用)にエモデプシド(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫駆除剤)を配合した合剤です。コクシジウム感染犬は犬回虫も混合感染しているケースが比較的おおいので2種類が配合されています。日本で犬用コクシジウムは初の認可薬です。
トルトラズリルの単独製剤は、すでに大動物用でバイコックス®という商品名で2008年に販売されています。
コクシジウムにはイソスポラ科(オーシスト内のスポロシスト2つ、スポロシスト内のスポロゾイト4つ)とアイメリア科(オーシスト内のスポロシスト4つ、スポロシスト内のスポロゾイト2つ)の2種があります。
犬猫はイソスポラ科の感染でおき、ウサギはアイメリア科でおきます。
当院ではこれまで、効能外使用の承諾を取ったうえでバイコックス®を、犬、猫。うさぎ、文鳥、ニワトリのコクシジウム症に投与して、副作用もなく、良好な成績を上げてきました。トルトラズリルはコクシジウムのイソスポラ科のみではなく、アイメリア科にも効果があるよう考えています。
犬用、プロコックス
■犬のコクシジウム
犬のコクシジウムはIsospora canisとIsospora obioensisの2種類の感染でおきます。
臨床症状として、嘔吐、頻回の下痢、血便が診られます。軽度な場合は回復可能ですが、重症なケースでは食欲不振から栄養障害、成長障害をおこし、最悪、悪液質になり死亡したケースもあります。
なお不顕性感染(虫卵の感染は診られるが、下痢など臨床症状がない状態)も多く、ワクチン接種時、偶然検便で発見されるケースもよくあります。
この臨床症状があるなし、重傷化は、感染年齢、摂取オーシシトの数、全身の健康状態により決まります。
また鶏では病原性の強いコクシジウム(Eimeria.tenellaの一部の株)と、弱いコクシジウム(Eimeria.acervulinaなど)が存在します。
一般的に、検便のみで臨床症状の重症化や、強弱の鑑別は不可能なため、コクシジウムを発見したら駆虫剤の投与がベストです。
コクシジウム生活環の特徴は無性生殖と有性生殖のステージをとることです。(1参照)
胎盤、経乳感染はなく、臨床例で多いケースでは、生後3-13週令の犬がオーシストを経口して感染は成立します。感染したオーシストはまず無性生殖を行います。腸管でスポロゾイト、トロフォゾイトとなり、腸管粘膜上皮細胞に感染しシゾントを形成します。シゾントはメロゾイトを放出し腸管粘膜上皮細胞を破壊します。多くの遊離したメロゾイトが、再び残存している腸管粘膜上皮細胞侵入し第2代シゾントになります。第2代シゾントは大量にあり、より多くの腸管粘膜上皮細胞に寄生し、第2代メロゾイトを放出し多くの腸管粘膜上皮細胞を破壊します。
このシゾントからメロゾイトの形成は栄養状態により異なりますが2-4代繰り返しおきます。
この時点で感染している犬はコクシジウム虫卵の排泄はありませんが、臨床症状として下痢がおきることがあります。(動物病院ではまた日を改めての検便が必要です。数回でコクシジウムは除外できません。)
その後メロゾイトはマクロガメート、ミクロガメートに発育して、有性生殖をしてザイゴートからオーシストを形成します。便ととも未成熟オーシストが排泄されます。排泄した虫卵は3日以内に成熟オーシストになります。
(1) コクシジウムの生活史(バイエル社の資料より引用)
オーシストの経口感染でおきるため糞便を素早くかたずけることが大切です。コクシジウムの環境の整備は下記(1)を参考ください。消毒薬には普通の使用濃度には殆ど抵抗します。
そこで、自宅では床などは、熱湯100度で1-2秒で死滅データーを引用しますが、沸騰させてから床にかけても、床の温度で冷やされ実際の温度は100度でなく低下しています。何度か行うか、熱湯後、洗い流すなどの追加処置が必要です。
また犬ちゅん使用のタオル等は洗濯機で洗浄したあと、コインランドリーまたアイロンの噴射機能の使用をお薦めします。
なお犬の皮膚に糞がついた場合はシャンプーをして、虫卵を洗い落してください。
■(1)コクシジウムの環境の整備
環境 生存期間
砂地(陽当たり) 4ヶ月
荒地(陽当たり) 6ヶ月
湿地 9ヶ月
樹木の多い陽影 18ヶ月
清水中 24ヶ月
乾燥鶏糞(陽影干し) 10ヶ月
乾燥鶏糞(天日干し ) 7ヶ月
熱湯 60度 30分
熱湯 80度 1分
熱湯 100度 1-2秒
熱風 80度 5分
熱風 100度 3分
■プロコックス®の詳細
●トルトラズリル(Toltrazuril)
これまでコクシジウムの駆除に使用してきたサルファ剤はコクシジウムを直接殺滅する訳でなく、無性生殖ステージのシゾントからメロゾイトになる部分の発育をとめ、コクシジウムの免疫が成立するまで増殖を抑える目的で使用されてました。しかし動物により免疫状態は異なるため、薬用量・期間の報告は様々で、一般的に2-3週間位はかかりました。
今回発売されたプロコックス®は無性生殖と有性生殖の両方のさまざなステージに対して、極めて広く作用を及ぼします。基本的には1回の投与で駆虫可能ですが、2週後、経過によっては再投与が必要な場合もあります。
注意点としてコクシジウムで下痢がおきている場合は、この薬剤は下痢に効能を示す訳ではありません。特に仔犬の場合、下痢に対する対称療法は大切です。
●エモデプシド(Emodepside)
エモデジプトは犬回虫(Toxocara canis)、犬鉤虫(Ancylostoma caninum)、犬鞭虫(Trichuris vulpis)に効能を示します。前記しましたが、統計上、犬回虫はコクシジウムとの混合感染が多いのでこの薬剤は重宝です。
欠点は、MDR1に変異(脳脊髄門の機能が他の犬より弱い体質)のあるコリー種、およびその系統には注意が必要です。
私感ですが、犬種によってはエモデプシドが入っていない牛用、豚用バイコックス®をオーナー承諾のもと使用するか、サルファ剤を使用した方が安全かもしれません。
犬用、プロコックスと牛用、バイコックス
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【他の動物へのプロコックス®効能外使用例】
■プロコックス、猫のコクシジウムへの使用例
■文鳥(学名:Padda oryzivora)のコクシジウム(Coccidium)
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2018.06.02更新
■子犬の下痢
子犬が急に下痢になりました。昨日、川崎市の夜間で処置をしてもらい下痢は止まっていました。今朝確認のため来院しました。
ウサギの酵母菌⇩
本院の検便ではウサギの酵母菌が診られました。ウサギの酵母菌は時々犬でみますが、ひどい下痢になった記憶はありません。
ジアルジア検査(陽性)
子犬の下痢で多い疾患に原虫疾患のジアルジアがあります。このジアルジアの特長は、顕微鏡での糞便検査ではなかなか発見されません。そのため抗原検査が必要です。
この症例は遺伝子検査は陽性でしたが、本日は下痢は止まっているので、ジアルジア駆虫は行いませんしでした。
陽性でも便が普通ならジアルジア駆虫は行わなくてもよいケースもあります。その理由は1年位たつと免疫で自然治癒することも多い原虫のためですが最近は駆虫する傾向になっています。
しかし最近はヒトの感染する可能性が示唆されており、駆虫を推進する意見が多いです。
他の寄生虫疾患は
■ウリザネ条虫の猫
■ウサギのコクシジウム症
■ハト回虫 虫卵と成虫標本
■マンソン裂頭条虫
■犬回虫症
■猫回虫
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2018.06.02更新
■犬鉤虫症(Ancylostoma caninum)とは
(1)犬鉤虫 虫卵 長径65μm
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■症状
本院では殆ど診ない寄生虫です。犬鉤虫の成虫は体長約1-2cmの寄生虫が小腸の絨毛に咬みついて寄生しています。
鉤虫は口に3対の大きな鉤があるのが特徴です。吸盤状の鉤が腸の中について吸血し、小腸壁に傷がつき血便を呈して来院します。また栄養の吸収不全がおき削痩して来院するケースもあります。
■感染様式
犬鉤虫は①被嚢子虫の経口感染、②経皮感染、③経乳感染、④胎盤感染、⑤待機宿主の補食で感染します。
犬回虫は卵殻が硬く虫卵ごと捕食されますが、犬鉤虫卵は外界に出ると卵殻が薄いため夏場なら半日から分裂が始まり、約7日間で幼虫が出現します。そのため①被嚢子虫の経口感染は幼虫の捕食になります。幼虫は腸管で成虫になり、気管型移行、体内型移行はおこなわず、経口感染の場合は腸管のみで生活環を過ごします。
外界で幼虫になるため、②のように犬の皮膚から感染して、気管型移行を行い、腸管に感染する特徴があります。
母犬から胎盤や母乳を介して感染することがあるため、子犬でも発症することがあります。希に健康診断どき、検便で虫卵が診られますが、体の未熟な子犬が鉤虫に大量に寄生すると、重い貧血を起こし、命に関わることもあります。(③経乳感染、④胎盤感染)
⑤待機宿主の補食については多くは事例は報告されてません。
実際あったケースで、地域のOO公園に散歩にいく犬は犬鉤虫に感染するケースがありました。短期間でこの寄生虫によく罹患する場合は定期的駆虫、散歩コース、飼育環境の変更が大切です。
■治療
線虫なので、犬回虫と同じ薬剤になります。本院ではドロンタールプラス®を主に使用しています。裸錠ですが大抵の犬に投薬は可能です。
味に敏感な場合は嗜好性のよいイベルメック®などのチュアブル錠をフィラリア予防とリンクして使用しています。
また最近販売されたプロコックス®も犬鉤虫の対称になります。
本院ではイベルメック®とプロコックス®の使用の際はフィラリア陰性を確認しています。
ドロンタールプラス®
イベルメック®
駆虫薬は成虫には効いても、卵には全く効きません。そのため犬鉤虫のプレパテントピリオド(経口感染15-26日、経皮感染17-21日、経乳感染10-14日、胎盤感染10-14日)、(参考 猫鉤虫は経口感染で14-21日)を考慮して駆虫薬を再投与が大切です。
ヒトには感染幼虫が皮膚から侵入し、皮膚炎を起こすことがあります。幼虫移行症に発達する場合もあります。
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■瓜実条虫について
■犬回虫
■犬鞭虫症とは
■犬のコクシジウム
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2018.06.02更新
■犬回虫症(Toxocara canis)とは
ヒト回虫は、戦後はヒトにも多くいましたが、現在、殆どみられなくなりました。
しかし当院では、犬回虫は幼少期に時々診ます。
(1)犬回虫 虫卵 75-80×65-70μm
検便にて顕微鏡で上記のような虫卵が診られます。
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(2)犬回虫 成虫 雄3-10cm 雌5-18cm
また 糞便中に上記(2)のように肉眼で成虫を見つけて来院されるケースもあります。
検便の方が感度は良いです。
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■症状
犬回虫は感染数が少なければ症状はありません。
しかし多数が寄生すると症状は一変し、嘔吐、下痢はじめ、回虫が消化管内で縺れることで腸閉塞になった例もあります。
少数の感染では宿主に害を及ぼしませんが、一度に大量寄生があると命を落とす状態まで進行することもある寄生虫です。
他の動物の回虫症は
■猫回虫
■烏骨鶏の回虫症
■ハト回虫虫卵と成虫標本
■感染様式
幼犬期の寄生虫疾患です。
犬回虫は①被嚢子虫の経口、②経乳感染、③胎盤感染、④待機宿主の補食で感染します。
鶏の回虫と異なり産卵の季節性はありません。
被嚢子虫の経口感染について解説します。
(3)直後の便 子犬は、未分化卵で回虫卵を排泄します。
(4)2週間後の便(上記写真2枚は本院の庭での実験)
犬回虫卵は25度2週間で感染力をもつ幼虫包嚢卵になります。鶏の回虫と異なり産卵の季節性はありません。
排泄直後の便より、このような便を犬ちゃんが臭いを嗅いかいた場合の方が犬回虫の経口感染は心配です。
また土の中でも幼虫包嚢卵は1-2年生存し、冬場に排泄されても、卵は春先まで生存して新たな感染源になります。 稀に人にも感染します。
待機感染はネズミなどが、幼虫包嚢卵を食べると筋肉内に被嚢します。そのネズミを犬が食べた場合におきる感染様式です。
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生後3ヶ月未満の若い犬が虫卵を摂取すると気管型移行を採ります。(腸管―肝臓―心臓―肺―気管―咽頭―腸管)感染後約2週間で再度腸管に戻り、その後2週間で成熟し虫卵を排泄します。プリパテントピリオド(資料B)は3-4週です。
しかし3ヶ月以上の犬は体内型移行を採り、肺までは移動した後、その後気管へと上行せず、そのまま全身へと血流に乗って拡散される。そして1週間後全身の臓器や筋肉内で肉芽腫に囲まれて被嚢してします。体内型移行が完了した雌犬が妊娠すると、被嚢した幼虫が賦活化して胎盤を通じて、胎子内の肝臓へ移行する(胎盤感染)。こうして生まれた子犬は生後21-24日で虫卵を排出します。また出産後4日目で母体にいる被嚢幼虫は乳汁に移行し、子犬が乳汁を飲み腸管内で成虫になります(経乳感染)。
以上が犬回虫の虫卵は幼犬では出やすいが、成犬からは出にくい理由です。
但し気管型移行から体内型移行への変更時期は必ず3ヶ月前後で変わる訳ではなく、イヌの環境・性差・栄養状態などにより広い幅があります。
なお犬回虫の寿命はおよそ1-2年です。
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■治療
本院ではドロンタールプラス®(資料C)を主に使用しています。裸錠ですが大抵の犬に投薬は可能です。しかし味に敏感な場合は嗜好性のよいイベルメック®(資料D)などのチュアブル錠をフィラリア予防とリンクして使用しています。また最近販売されたプロコックス®も犬回虫の対称になります。
プリパテントピリオド(資料B)が3-4週はなので、1ケ月後に必ず再駆虫してもらっています。
(5)プロコックス®(バイエル薬品)
資料A ●犬回虫の産卵能力と検便の検出率について。
犬回虫卵は1日の10kg雌犬の推定便量130g中に900-2000個の犬鞭虫卵を産みます。糞1gあたり154-1540個に相当します。直接法で検便を診るとプレバラート1枚当たり便量は2-3mgになり、0.3個-4.6個の犬回虫卵が見れる計算になります。そのため直接法で検便をしても検出率はまずますです。 浮遊法・遠心法の中で最も検出率のよいとされる硫酸亜鉛遠心法(その1・その2)は便0.5gの回収率を50%として計算するとプレバラート1枚当たり39-390個の犬回虫卵が見れる計算になります。
以上犬回虫は単回の検便では検出ができない場合もあり、診断には複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用することがベストです。試験的に回虫の駆虫剤を投与して様子を診ることも可能です。
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資料B
子犬に犬回虫が経口感染した場合、プレパテントピリウド注1)は50-60日です。このプレパテントピリウドの期間中に検便してた場合、虫卵は検出されません。感染は成立しても検便では陰性になる訳です。また糞便は、均一分布して、回虫がいる訳ではありませんので、直接糞便検査、集卵法をもちいても見逃す可能性はあります。
注1) 宿主に感染後、虫卵や幼虫を排泄できるまでの期間をさします。犬回虫の場合、卵に効果ある薬剤はないので、卵から成虫になる約30日後に再駆虫します。寄生虫の種類により異なります。
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資料C
ドロンタールプラス錠®(バイエル薬品)
犬用の裸錠で本品1錠中にプラジクアンテル50mg(5-10mg/kg)、パモ酸ピランテル144mg(14.4-28.8mg/kg)、フェバンテル150mg(15-30mg/kg)を含有する。2週齢以上の500g以上の子犬で認可。
パモ酸ピランテルが犬回虫、犬鉤虫を、パモ酸ピランテルとフェバンテルの相乗作用で犬鞭虫を、プラジクアンテルが瓜実条虫を駆除する。メトロニダゾールの誘導体フェンベンダゾールのプロドラックがフェバンテルである。フィラリア陽性犬でも使用可能。
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資料D
イベルメック®(フジタ製薬)
イベルメクチン(5-11μg/kg)でフィラリア予防、パモ酸ピランテル(14.4-28.8mg/kg)で犬回虫、犬鉤虫駆除が可能な合剤でチュアブル錠。イベルメクチンはミクロフィラリアの陰性を確認後投与のこと。チュアブルとは『噛むこと』のチュア(chew)と『できる』の(able)造語です。普通の錠剤は胃で溶けて小腸から吸収されて薬効を示しますが、チュアブル錠は薬剤を噛んでも小腸から吸収できる薬剤形態です。水無しでも投与でき、苦味がなく、嗜好性が良い(イベルメック®で98%)薬剤形態です。なお食事アレルギーの既往歴ある場合はアレルゲンとチュアブル錠内容物の確認が必要になります。美味しいため犬舎の上など犬が届く場所にチュアブル錠を置くと、オーナーの目を盗んで、すべてのチュアブル錠を犬が誤食してしまう恐れがあるため、薬剤管理は大切です。
●症例
ポメラニアン 雄 4ヶ月です。ペットショップから購入後1週間で、混合ワクチン接種とフィラリア予防で来院した例です。
検便をオーナーに切り出したところ、「便の状態は正常で、検便はペットショップで済んでいる。」との理由で行わず、フィラリア予防薬にはイベルメック®(資料D)を処方しました。そしてこの薬剤は犬回虫、犬鉤虫にも効果のある点も強調しました。
翌朝、オーナーが「お尻から、そうめんのような虫が便と一緒に出た」(2)ことに驚いて再来院しました。
「検便はペットショップで済んでいるのに何故いるのか。」という質問があったため、回虫など消化管寄生虫は検便の回数が少ないと検出され難いこともあり、そのため昨日検便を薦めた理由も再度伝えました。(資料A、B)
またイベルメック®がフィラリア予防のみではなく回虫の駆虫薬である旨も再度伝え、その後も月1回投与を続けることを指示した。
『検便はペットショップで済んでいる。』を100%虫はいないと勘違いしてしまうオーナーはよくみかけます。ここに示したようなからくりはありますますので注意が必要です。
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2018.06.02更新
●感染
感染様式は後天的感染のみです。虫卵の経口感染でおき、腸管で成虫になり虫卵を排泄します。気管型移行、体内型移行はなく、腸管のみで生活環を過ごします。 (胎盤感染、経乳感染、待機宿主からの感染もありません。)
当院のある川崎市多摩区では、鞭虫感染は7ヶ月以上の犬でときどき診られる位です。
●症状
軽度では無症状ですが、重症では頻回の下痢、血便を呈し、ひどい場合は死亡します。
●疫学
郊外の自然豊かな場所で発生は多いですが、注意点として犬鞭虫は少数寄生で下痢が長く続くと虫卵の検出が厄介な場合もあります。
都市近郊の動物病院は「犬鞭虫はいない」ことを前提に考える傾向が強く、慢性下痢が治らず二次診療施設を訪れた際、意外に検出されるのがこの犬鞭虫です。そのため犬の慢性下痢には検便は数多く行う必要があります。15回検便を行って始めて検出されたケースも研究会で報告されてました。鞭虫駆虫剤を試験的に投与することも大切かもしれません。
なお同様に検便で発見が難しい寄生虫例は猫ではトリコモナスTrichomonas fetusで、ヒトでは横川吸虫、糞線虫が報告されています。
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■犬鞭虫卵
犬鞭虫卵の厄介な点は、外界に強く比較的高温下で発育します。しかし4度以下では発育はしません。土壌では5年間は感染能力がある報告もあります。
家の庭、犬が集まる近所の公園が汚染源になり、1回の駆虫では完全に除去はできないことが多いです。そのため犬鞭虫のプリパテントピリオドの2-3ヶ月を考慮したり、フィラリア予防薬ミルベマイシン(下記参照)を増量して、エンドレスで駆虫薬を投与する必要があることも経験しています。
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■犬鞭虫卵、理論上の検出率
犬鞭虫卵に感染すると1年間は虫卵の排泄がみられ、10kg雌犬の1日推定便量130g中に犬鞭虫卵は975-1950個の卵を産みます。
糞1gあたり犬鞭虫卵は7-15個に相当し、直接法で検便を診るとプレバラート1枚当たり便量は2-3mgになり、犬鞭虫卵で0.01個-0.05個の見える計算になる。そのため直接法で検便をしても検出率は高くありません。
浮遊法・遠心法の中で最も検出率の高い硫酸亜鉛遠心法は便0.5gの回収率を50%として計算するとプレバラート1枚当たり犬鞭虫卵は1.8-3.8個の見える計算になります。
以上の理論上では犬鞭虫は単回の検便では検出ができない場合もあり、診断には複数回の検便と硫酸亜鉛遠心法を併用することがベストです。----------------------------------------------------------------------
ドロンタールプラス錠®は犬用の裸錠で本品1錠中にプラジクアンテル、パモ酸ピランテル、フェバンテル(フェンベンダゾールのプロドラック)を含有します。2週齢以上の500g以上の子犬で認可がありフィラリア陽性犬でも使用可能です。
パモ酸ピランテルが犬回虫、犬鉤虫を、パモ酸ピランテルとフェバンテルの相乗作用で犬鞭虫を、プラジクアンテルが瓜実条虫を駆除します。
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本院では犬鞭虫の駆虫によく使用する薬剤でフィラリア陽性犬でも使用可能です。
1日1回で3日間投与が必要です。
写真の左側が日本製です。大動物用のメイポール10®(meiji seikaファルマ株式会社)、右側はアメリカ製のPanacurc®です。日本製は投与量が多くなり使用が大変です。
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2018.06.01更新
■食物アレルギーを疑う臨床症状
●食物アレルギーを疑う臨床症状
食物アレルギーは食事をたべることで、抗原が腸から吸収されて全身に症状をだします。
食事が関係するアレルギーは
Ⅰ型アレルギー・食物過敏症 と Ⅳ型アレルギー・食物不耐性
があります。
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●Ⅰ型アレルギー・食物過敏症
蛋白質はアミノ酸を30個以上もったものと定義されています。
蛋白質は分子量が8000~15000ダルトンになると、架橋を形成して抗原として認識され、アレルギーをおこします。
この現象は食事アレルギー・食物過敏症と定義され、人では卵・ソバが有名で、食べると発疹がすぐにおきます。しかし犬では少ないとされています。
動物病院でⅠ型アレルギー用の食事を購入される場合は、
分子量が12000ダルトン位にまで分解され抗原性をなくすよう作られた、低分子プロテイン(ロイヤルカナン)・Z/D(ヒルズ)や,またこれまで全く食べたことのない新奇蛋白食(ロイヤルカナン・ヒルズ・その他会社いろいろあり・自家製も含めて)が対象です。
動物病院で市販されている新奇蛋白食
ラム肉とライスはこれまで食した経験のない犬では自家製新奇蛋白食として食事アレルギーの診断に役立ちます。当院ではラム肉とライスとたべると、皮膚が丈夫になると勘違いしているオーナーを多く診ますが、
食事アレルギーの診断に役立つのみで、皮膚は丈夫になりません。またこの食事は栄養バランスがわるく1ケ月位が限界です。
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●Ⅳ型アレルギー・食物不耐性
しかし上記の食事をいろいろ変えてもよくならない症例が診られました。
成犬は蛋白質をアミノ酸まで分解されて消化・吸収をします。
しかし子犬や成犬でも消化の悪い個体は、アミノ酸の分子量まで分解できないため、リンパ球が作用して、嘔吐、下痢、皮膚疾患が現れる個体がいます。1000から1500ダルトンの分子が異物として認識され、リンパ球の攻撃を受けます。これがⅣ型アレルギー・食物不耐性です。
Ⅳ型アレルギーを回避するには、食物を超低分子(1000ダルトン以下が理想)にしなければなりません。
動物病院で食事を購入される場合はアミノペプチド(ロイヤルカナン)、アミノプロテクト(ノバルティス)が対象です。瞬時ではなく、時間をかけておきる現象です。
尚みなさんが経験あるツベルクリン反応はこのⅣ型の応用です。----------------------------------------------------------------------
●皮膚病の好発部位
ブタクサやハウスダストのアレルギーは
一般的に腹部、顔にできることが特徴ですが、
食事アレルギーは 糞便回数が日に3回以上あって便の回数が多い犬、犬の顔面、肛門周囲、背中に多く病変がみられます。
糞便回数が日に3回以上あって便の回数が多い犬は注意が必要です。
犬の顔面、肛門周囲、背中に多く病変がみられます。
とくにⅣ型はリンパ球は感作しやすい部位が背中多いためで、通常のハウスダスト、スギなどのアレルギーと異なる部位に病変が生じ易いです。
また別の症例2例ですがⅣ型アレルギーの症例には便をグラム染色すると、クロストリジウムの芽胞 ・菌が疑われる所見があります。これら症例には抗生剤の投与も併用します。
クロストリジウム芽胞の疑い
クロストリジウム菌の疑い
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●このⅠ型・Ⅳ型を区別するには検査があります。
しかし検査費が高くなる欠点が生じます。また絶対の鑑別は不可能です。
犬ちゃんがいかにしたら楽にすごせるかよく考えて、担当獣医師とご相談ください。。
●そこで、現実的には
上記の症状がみられるようならアミノペプチにドに食事に変えて、最低1ヶ月はみてあげることをお勧めします。よくなったケースも結構みられています。
他社からも上記のようなアミノ酸フードも販売されています。(ドクターズケアー犬用アミノプロテクトケア)
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