条虫類(瓜実条虫、マンソン裂頭条虫)診断と駆虫薬の相違(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2017.11.01更新
■条虫類、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫の
診断と駆虫薬の相違
条虫類は扁形動物に属し雌雄同体で無体腔動物です。呼吸、循環、骨格、消化管はなく、線虫のような激しい運動性もありません。頭節のみ寄生体へ固着しているため、吸溝、吸盤、嘴、小鉤など吸着器官があり、その後方に片節が未熟、成熟、老熟と滑車のように連なって体表にクチクラはありません。
そのため濃厚感染でない限り下痢など臨床症状がない特徴があります。
小動物臨床でよく遭遇する条虫類は写真① 瓜実条虫に代表される円葉条虫類と
写真② マンソン裂頭条虫に代表される擬葉(裂頭)条虫類です。
当院ではいずれの寄生虫も犬猫のみ感染が診られています。
両者の相違は、診断方法、中間宿主の数、
条虫駆虫剤プラジクアンテルの薬用量が異なります。
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写真③ (外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)
前者瓜実条虫片節の最も重要な点は体壁に子宮孔(産卵孔)がない為、(写真③)片節内の卵嚢内に虫卵が貯まります。そして組織内の代謝活性が低下して、後部の老熟片節が契れて便と共に片節が排泄されます。そのため、診断は視診が主で「米粒のような虫が糞についてきた」という主訴で来院します。
また写真①の瓜実条虫は中間宿主はノミで1つです。
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写真④(外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)
後者のマンソン裂頭条虫片節は瓜実条虫に比べて横に約1.5倍長くなっています。相違は体壁に子宮孔(産卵孔)があり虫卵が寄生体の腸管内に排泄される点で、写真②のように虫卵で排泄されます。片節の排泄は殆どなく、診断にはまず検便が必要な点です。中間宿主は2つあります。
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●プラジクアンテル製剤
駆虫剤プラジクアンテルの薬用量はマンソン裂頭条虫の駆虫には瓜実条虫の約6倍も必要な点も重要です。
作用機序は条虫の繊毛から侵入して外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。
なお条虫類は神経系の発達は悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン類は効果を示しません。
条虫の生活史には必ず中間宿主が必要です。著者の考えは瓜実条虫、マンソン裂頭条虫の再寄生の防止のためにはプリパテントピリオドを考慮した再駆虫より、中間宿主と接触させないことが大切です。
中間宿主は瓜実条虫はノミに接触後16-21日で、マンソン裂頭条虫はカエル、ヘビなどに接触後約14日で感染します。
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