■線虫類
線虫類は蠕虫の中で最も発達した線形動物で、雌雄異体の擬体腔動物です。
体表は細長い円筒形で全身はクチクラに覆われているため、駆虫薬の吸収はできない。そのため栄養の摂取・吸収が行われる三放射相称の口、筋肉質の食道、消化管の経路を介して駆虫剤は作用点の神経節また神経筋接合部に働くと推察されています。
神経の中枢は食道を囲む神経環で前方と後方に6本の神経幹が走り、所々に神経節があり、はしご状の神経繊維が全身に分布する。そして背筋、腹筋にまたがる神経繊維を交互に弛緩、収縮させて、腸管の蠕動運動に逆行して寄生生活をしている。線虫の駆虫薬は主にこの逆行運動を阻害する目的で、神経節また神経筋接合部のシナプス前部に働くパモ酸ピランテル・エモデジプトなどが使用されている。
犬鞭虫は同じ線虫類でも犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫と駆虫薬が多少異なります。
線虫類は駆虫のためにプリパテントピリオドを考え、複数回の投与が必要です。
本院の使用薬剤
■レボリューション®ファイザー株式会社 犬猫用 皮膚滴下剤
成分名のセラメクチンが猫回虫、ノミ、耳ダニの駆除とフィラリア予防をおこないます。
ノミと回虫の同時寄生時に便利で6週齢の子猫から投与できます。
犬回虫には効果はあまりありません。
■商品名 プロフェンダー®スポット 猫用(バイエル薬品、皮膚滴下剤)
成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
両薬剤とも頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。
■ドロンタール® 猫用(バイエル薬品、錠剤・駆虫寄生虫はプロフェンダースポットと同じ)
猫は経口投与が大変な場合もあります。虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。
■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違
猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現
◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダー®スポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。
◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2週間あけて、2回の投与は必要です。
■商品名 プロフェンダー®スポット
■成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬
猫用です。猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。
7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
猫は経口投与が大変な場合もあるので、重宝な薬剤です。
■プロフェンダー®スポットの特長
猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現
◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダー®スポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
ただし希にぶ形剤のグリセリン様物質にアレルギーを起こして、毛が抜けることはあります。
◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2-4週間あけて、2回の投与は必要です。
◆豆知識 ノミ・ダニの駆虫剤と併用 ノミ・ダニの駆虫剤と併用する場合はプロフェンダー®スポットを滴下して皮膚が乾いたことを確認した後、離した箇所の皮膚に滴下してください。
ぶ形剤は薬剤で相性が異なるので、皮膚上でぶ形剤の共有をさけ、薬剤の吸収、分布に影響を与えない為の処置です。
◆【回虫症の関連記事】
・犬の回虫症
・猫の回虫症
・鳥類の回虫症
■商品名 ドロンタール®プラス
■3種の薬剤が入っている犬用経口剤です。
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)、
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用、
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel)
が駆除を行います。
◆犬は2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫)の成虫を効果的に駆除できます。しかし虫卵には効果ないため、寄生虫のプレパテント・ピリウドを考慮して、犬回虫、犬鉤虫は2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が、犬鞭虫は2-3ヶ月あけて複数回の投与が必要です。
ウリザネ条虫も効果的に駆除できます。ウリザネ条虫の再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
◆【線虫類の関連記事】
・犬の鞭虫症
・犬の回虫症
・犬のウリザネ条虫
■商品名 ドロンタール®
■2種の薬剤が入っている猫用経口剤です。猫は鞭虫の感染がないので犬用と異なり2種類の合剤です。
猫回虫、猫鉤虫→パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel)の駆除を行います。
◆猫は2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類(回虫・鉤虫)の成虫を効果的に駆除できます。虫卵には効果ないため、プレパテント・ピリウドを考慮して、2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が必要です。
ウルザネ条虫も効果的に駆除できます。ウルザネ条虫の再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
粉にしても効能はありますが、猫が嫌がって涎をだして抵抗される場合があり、筆者の動物病院では駆虫には主にプロフェンダー・スポットを使用しています。
■商品名 コンバントリン®
■成分名 パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)
人用のパモ酸ピランテル製剤もあります。動物でも効果はあります。単独製剤である点は症例によっては魅力です。
人の回虫症はパモ酸ピランテルよりアルベンダゾールの使用が多いみたいです。
■商品名 イベルメック®
■成分名 イベルメクチン(Ivermectin)、パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)
本来はフィラリア予防剤ですが、パモ酸ピランテルも含有されているため犬回虫、犬鈎虫の駆除も同時にできます。
チュアブルタイプなので嗜好性は良いです。(98%の犬が食べてくれます。)
■注意
①フィラリア陽性犬、
②またチュアブル製剤のため食事アレルギーのある犬には積極的には薦められません。
これらの場合は絶対禁忌ではありませんが、担当獣医師とよく相談して使用して下さい。
コリー・オーストラリアンシェパードなどでは、
この薬剤はフィラリア予防量での使用可能ですが、高用量の使用は控えた方が良いです。
■豆知識 チュアブルとは
チュアブルとはかみ砕くことが(chew)できる(able)の造語です。
かみ砕いても味良く吸収できることが特長です。
くれぐれもチュアブル錠を動物の届くところに置かないでください。1年分のフィラリア薬を誤飲されたケースはよくあります
■ミルベマイシン Milbemycin
ミルベマイシンは北海道の美瑛の土壌から抽出された成分です。
本来はフィラリア予防ですがフィラリア予防量で犬回虫、犬鈎虫の駆除に使用できます。
最大の利点はフィラリア予防量の2倍量で鞭虫駆除が可能で、
フィラリア予防薬の中ではではフィラリア予防量と鞭虫駆除量の差が一番ありません。
そのため本院℡044-9008588では鞭虫卵が庭や散歩コースに多くいるケースにフィラリア予防と兼ねて使用しています。
◆豆知識
鞭虫卵は地面に便と共にでると、1年以上は感染力があります。鞭虫の感染した場合は便は早めにかたづけることを薦めます。
また他からの感染疑いの場合は散歩コースの変更を薦めています。
■注意
フィラリア陽性犬は投与はしないほうが良いです。
コリー・オーストラリアンシェパードにもフィラリア予防量・鞭虫駆除量では使用可能ですが、それ以上の高用量は控えた方が良いです。
■寄生虫の人への感染
寄生虫は時代と共に減ってはきており、医学部の寄生虫学教室(医学では医動物の呼称ですが)も年々減少しています。
特に都会では寄生虫はないと考えている方もいるとおもいますが、人でも油断していると寄生虫疾患は存在します。
減少はあっても絶滅はできないのが寄生虫の特長かもしれません。
■そこでこの項では動物の回虫が人に感染したケースを中心に話します。
人の寄生虫外来の医師の話では、犬回虫・猫ウルザネ条虫の感染は時々あるそうです。
人では動物の回虫は居心地が悪く、人の眼、消化管などに迷入しますので、重症な寄生虫感染になります。検便では殆ど意味なく、視診、レントゲン検査、血清診断などを総合して診断します。
原因として
①人でも豚・鳥・牛の生レバーを食べたり、
②ペットと過度なスキンシップにより偶発的な感染(ペットとキス、同じ食器で食事を食べるなど)
③原因は不明
で人に動物の回虫の感染が報告されています。
また寄生虫卵は産み落とされると結構長い期間感染力を持ちます。
例えば研究でよく調べられている豚回虫の虫卵は土の中に入れば1年たっても感染力があるそうです。
そのため生まれた年に駆虫したのみでは
日頃散歩する犬や沢山ペットが集まる場所にいくことが多い場合や、また寄生虫駆虫薬の網の目を潜って、
「ペットが回虫・条虫などの寄生虫に感染している可能性は考えられる。」
これが人の寄生虫疾患を診療している医者の見解です。
生まれた年だけ駆虫して100%駆虫できていれば、人の寄生虫外来にペットが原因の寄生虫で来院する訳ないからです。(生レバーを食べた場合は除く)
ペットに少数の回虫が寄生した場合は、発見は検便のみでは不十分と考えられ、現実的にはできませんが、ペットも血清診断が可能なら、診断の補助に使用できるかもしれません。
■そこで現実的にはペットの定期駆虫が重要な訳です。
(ペットの定期駆虫期間はバイエル社のホームページに記載されているように3ヶ月に1回が理想です。
しかし治療費の件もあるので、著者の動物病院ではせめて年1回は薦めてますが、なかなか浸透はしません。)
また必要に応じて、便の消毒を兼ねて、寄生虫卵の消毒も必要です。
寄生虫卵の消毒は100度の熱湯が一番です。
床がステンレス・タイルなどしっかりしていれば、100度の効果で虫卵は絶滅します。
しかし熱湯をまく場所が土だと温度は80度ぐらいに下がり、虫卵はあまり死にません。複数回まく必要になります。
そのため鞭虫が感染時、家の庭が広くなくても感染源になって、完全駆除ができないのはこのためです。
寄生虫卵の消毒はハイターのような消毒剤ではなかなか大変みたいです。濃度が濃くなると動物やオーナーも中毒になる可能性が有り注意が必要です。
以上まとめると寄生虫疾患を避けるには
①生肉を食することを避けたり、
②ペットとはけじめある生活をを心掛けること、
③またペットの定期駆虫の実施が
大切です。

