小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.04更新

■猫へモプラズマ(旧名は猫ヘモバルトネラ、猫伝染性貧血)
 猫の赤血球に寄生し(写真)、
下記の3種類の混合また単独感染で元気消失・食欲低下・貧血・黄疸・間歇的な発熱が診られる疾患です。

●Mycoplasma haemofelis
●Candidatus Mycoplasma turicensis
●Candidatus Mycoplasma haemominitus
  

■感染 
ノミ・ダニ・輸血で感染します。

■病原性は 
 Mycoplasma haemofelisが最も病原性が高いです。 
 Mycoplasma turicensis、Mycoplasma haemominitusは病原性は低く、感染があっても、症状をだすことは少ないです。
 
 以前は猫白血病・猫エイズ・免疫状態がよくない猫で発症が多いとされていましたが、Mycoplasma haemofelisは単独でも感染します。
 
 年齢別では1歳未満の猫は、重傷・再発症例が多いですが、1歳以上になると重傷・再発症例は多くありません。

 また日本の統計調査(遺伝子診断)では33%(個体数91例)も感染が報告されていますが、重度の貧血の症状をだすのはそのうちのわずかです。
1-2週間で自然治癒する場合もあります。

■診断 
 診断は写真の血液塗抹標本で赤血球に寄生しているヘモプラズマを探します。
 この方法は古くから行われていますが、専門書では33-50%の診断率で感度の良い方法ではありません。

■ヘモプラズマの遺伝子診断
 そこで最近は検査費は高くなりますが、遺伝子診断が使用されています。
 動物の検査センターに本院で採取した血液を郵送して診断してもらいます。
 
 ヘモプラズマは上記した血液塗抹だと診断感度が33-50%ですが、この検査では感度が87%に上昇します。
またMycoplasma haemofelis、Candidatus Mycoplasma turicensis、Candidatus Mycoplasma haemominitusの3種類の感染の有無がわかります。

 写真の症例ではMycoplasma haemominitの陽性がわかると思います。

■治療 
 治療はテトラサイクリン系抗生剤のドキシサイクリンがファーストチョイスになります。
 ドキシサイクリンの投与ができない個体はニューキノロン系のエンロフロキサシンも考慮します。
 また症例では輸血・ステロイド剤の短期投与が必要な場合もあります。


ドキシサイクリン塩酸塩とヘモプラズマ(doxycycline hydrochloride, DOXY) 
 ドキシサイクリン塩酸塩(doxycycline hydrochloride, DOXY)はテトラサイクリン系の抗菌剤で商品名はビブラマイシンが有名です。

 分子量は大きいが油性で、細胞内に入り蛋白合成を阻害する特徴があるため、抗菌剤のみではなくヘモプラズマ、クラミジア、リケッチア、マイコプラズマなどに対しても活性が認められます。

◆治療の注意点
 ①ドキシサイクリン塩酸塩は名前ごとく酸性で、猫は食道の運動が弱い為、錠剤を飲ませたあと水をあげないと、食道狭窄の原因のひとつになります。

 ②また粉砕投与は薬剤の味が悪く、嘔吐や流涎の原因になり、うまく投与できないことが多いです。

 ③幼少期(筆者は犬猫では6ヶ月以内と考えている。)ではテトラサイクリン系の抗菌剤の投与は歯のエナメル質に付着するため普通控えたほうが良いです。

 (参考・ヒトでは8歳以内の子供にはそれなりの理由がないと投与しない薬剤です。)
 
 しかし猫のヘモプラズマで症状が重傷なケース・同定した種に病原性が高い場合は薬剤を投与しないと症状の悪化を招く場合が多く本院では、ドキシサイクリン塩酸塩、ケースによってエンロフロキサシンの投与をおこなう場合もあります。

■エンロフロキサシン(Enrofloxacin)とヘモプラズマ
 ニューキノロン系抗菌剤のエンロフロキサシンもヘモプラズマに効能はあります。

 商品名は犬猫用バイトリルが有名です。

 錠剤のみでなく、写真のようにフレーバー錠(写真左2つ)があるので、食べやすく工夫されています。

◆注意
①猫はエンロフロキサシンの投与量を少々多くすると、10万分の1の確率で眼に盲目の障害がおきる可能性があります。盲目は投与前予想はだれもわかりません。

②「猫は開始および使用年齢に制限なし」の記載があるように 猫は犬・ラット・マススと異なり幼少期に投与しても軟骨に異常を示さないと考えられています。
 幼少期投与の軟骨に異常は動物差があります。


◆参考・ベージック講座 ニューキノロン抗生剤と幼少期
 犬、ウサギ、ハムスターなどは幼少期は軟骨形成が異常になる場合があり、使用はしない方が良いです。
 ヒトではも基本的に犬、ラット・マススの実験報告からニューキノロン抗生剤は幼少期は使用を慎むのが現状です。しかしヒトは幼少期の軟骨形成の異常が1例もなく、一部のニューキノロン製品は幼少期に認可されています。猫はヒトと同様の傾向があり幼少期から使用は可能です。 





作者: オダガワ動物病院

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