小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.09.09更新


                    
猫の瓜実条虫 

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瓜実条虫 片節 
250-1000μm
成虫は腸管内で50cmになります。

  「米粒のような虫が糞について驚いた。」「さっきまで動いていて気味悪かった。」(写真)ことを理由に生後4ヶ月の雌の日本猫が来院しました。便の状態は普通でノミは陽性でした。

              
 





 この虫体をスライドグラス2枚で圧迫して診た標本です。(写真①)
瓜実条虫卵嚢内に卵嚢中2-30個の虫卵が視られます。写真②)また六鉤幼虫も視られました。写真③)


 これら顕微鏡検査と視診から瓜実条虫と診断して、駆虫薬投与とノミ駆除を併用して治療しました。
また今後オーナーにはノミの駆除を続けるよう指導しました。
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 (外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)

瓜実条虫は円葉条虫類に属し、寄生体との固着のために、頭節に4個の吸盤とよく発達した吻がありその周囲に多数の釣針状の鉤が3-4列並んでいます最も重要な点は体壁に子宮孔(産卵孔)がない為、片節内の卵嚢内に虫卵が貯まります。そして組織内の代謝活性が低下して、後部の老熟片節が契れて便と共に排泄される。そのため、診断は視診が主で「米粒のような虫が糞についてきた」という主訴で来院します。また肛門の回りにこの片節が付くこともあります。片節は縦長で排泄間近の時は動くが、時間の経過とともに米粒のように乾いてきます。この片節が消化管内で壊れて、検便で卵嚢の検出可能な場合も希にあります。

このように
瓜実条虫は検便では検出が容易でない点、また片節が小さく、発見がオーナーの視診によることが多く、犬猫では臨床症状は少ないため感染率は過小評価になると予想されています。
実際、生前の検便・視診では発見されてない個体を病理解剖すると意外に多く瓜実条虫は発見されています。
                                   
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ノミ成虫
 

ノミが中間宿主です。外界で露出した卵嚢はノミの幼虫(1-3令)に捕食され、ノミ腸内で六鉤幼虫が離脱する。ノミの羽化後10日 で尾部をもつ擬嚢尾虫(シスチセルコイド)に成長する。感染後1ヶ月で尾部もなくなり成熟した擬嚢尾虫になりその後ノミの腹腔内に移動する。するとノミの 動作が鈍くなり、犬猫(終宿主)が皮膚をグルーミング時に摂取しやすくなり経口感染します。
その後犬猫の腸管内で成虫になり片節を形成します。寿命は栄養状態などで異なるが約1年です。

 すべてのノミに瓜実条虫が感染している訳ではなく、調査よればニュージランドではノミ
1578匹に0匹ですが、フロリダではノミ403匹に4匹、オーストラリアではネコノミ428178匹、イヌノミ109234匹に瓜実条虫(擬嚢尾虫)が存在している報告があります。

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■治療の理想は瓜実条虫とノミの駆虫の2剤併用です。

プラジクアンテル含有製剤
 条虫駆虫剤プラジクアンテルはプロフェンダースポット®・ドロンタール®・ドロンシット®など様々な剤型があり、皮下投与、経口、皮膚滴下すべての投与法で同一量で駆除が可能です。
 まれな寄生虫ですが猫条虫もこの瓜実条虫と同じプラジクアンテル投与量で駆除は可能です。

 
ノミ駆虫製剤

 プリパテントピリオドの3週間を考慮し再投与も考えますが、ノミの駆除(セラメクチン、フィプロニール、イミダグロプリドは皮膚滴下、スピノシドは経口剤)を併用すると、プラジクアンテルの投与は1回のみで済むこと多く経験しています。またノミ駆虫ができなとなかなか瓜実条虫は駆虫できません。
 
 瓜実条虫は人畜共通の寄生虫疾患です。猫がノミに感染していると、ヒトもノミを偶発的に誤食する可能性があり毎年ノミを含めた積極的な定期駆虫が理想です。

                                  
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■ノミ駆除と瓜実条虫駆虫が2剤とも滴下剤を使用します。どうしましょう?

滴下剤製剤 
 プロフェンダースポット®とアドバンテージハート®は同一メーカーなので同時使用の実験はおこなっています。
結果は2-3cmあけて同時に皮膚にたらして併用は可能です。
 写真のようにメーカーが変わると実験はしてませんが、経口薬のデーターから考慮して、使用は可能であると推測されてます。本院では滴下日を1日ずらし、また滴下場所を変えておこなってもらっていますが、これまで副作用は経験してません。
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作者: オダガワ動物病院

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