犬猫・マダニの生態(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2017.11.27更新















写真の右2つは若ダニ、左3つは成ダニと推定されます。
マダニは寄生する機会を待ちながら草丈30cm位で生活しています。
■マダニの生態
マダニの寄生部位は主に動物の皮膚です。分類学的にはダニ目マダニ亜目(以前は後気門亜目と呼ばれていた)に属し、マダニは血を吸うことに特化した生き物です。
餌となるのは動物の血です。そのためイノシシ、シカ、犬、ヒトなど野生動物の皮膚に感染を狙っているので最適な高さとされる30cm位の葉の裏などで潜んでいます。これら動物の二酸化炭素などを感知してが、草から動物に飛び乗ります。
また実験でシャレーにマダニをいれて息をかけると活発にうごきまわります。これは第一脚末結節のハラー氏器官が検知するためです。第一脚を左右に振って移動います。二酸化炭素、赤外線、脂肪酸の量が多い方向に第一脚を動かして向かうよう振動します。左右でそれらの量が同じになると第一脚の動きは同じになります。
脚末は簡単に表現すると、じゃんけんの『パー』と『キョキ』になります。平面では脚末を『パー』にして吸盤のようにして安定させます。草木の多い場所では『キョキ』にして挟んで登ります。2-3ミリしかないマダニですが、1時間で4メートル移動した報告もあります。
皮膚に乗ってもすぐに吸血はしないで、適した場所を探します。(2時間位皮膚の上を歩く場合も)
犬では耳介、鼻の周りなど皮膚の柔らい場所に寄生をはかり種族維持をしています。
以上の理由から、散歩に行くイヌ、屋外で飼育しているネコにはマダニ類『tick』まで駆除が可能な薬剤の使用をお薦めします。またオーナー自身も野山の散歩の際は長袖、長ズボンを装着し、休憩時はパーカーなど草むらに置かないなど注意が必要です。(草むらに放置したパーカーにマダニが移り、ヒトに感染したケースも)
)TBSテレビ 新・情報7daysニュースキャスター。平成17年7月29日放送より
寄生すると、睡液に含まれる酵素で皮膚を溶かし、また鋏角と言う『高性能な枝切り挟みのようなもの』で動物の皮膚を切開します。次に口下片という横に棘をもった突起物をその穴に押し込みます。すると口下片の鉤状の歯と鋏角にから、セメント様物質がでてマダニが皮膚に固定し落下できなくなり、その状態で知らぬ間に吸血されます。このとき局所麻酔様の物質をだしているため罹患しても痒みはありません。ヒトでは家族の方に発見されるケースが多いそうです。マダニは種類によっては皮膚から外れにくく、強引にとるとマダニの口部は皮膚に残ります。
メルク社の資料より
動物に寄生するマダニは3宿主性で、幼ダニ(3-4日)、幼ダニ吸血(数日-10日)、落下して脱皮(10-18日)、若ダニ吸血(数日-10日)、落下して脱皮(12-20日)、雌成ダニ吸血(数日-10日)、そして皮膚からおちて産卵します。雌成ダニで血を吸うと100倍、約3cmの大きさのもなり血を沢山蓄えられる構造になっています。吸血量は48時間以後に最高になります。逆に1匹の成ダニが飽血状態に達すると吸血された動物は5mlの血を失う見解もあります。
3年の寿命のうち3回吸血します。(幼ダニ、若ダニ、成ダニ)吸血期間は1ステージ当たり、上記したように数日かた10日ですが3回合計日数で約20-30日間吸血しています。しかしヒトで40日間吸血したケースもあり個体差はあります。

腫瘍ができたと勘違いして来院するケースもあります。
マダニは本来山林にいて、イノシシ、シカなど野生動物を吸血源で共存してました。SFTSウイルスも同様に共存していたと考えられます。近年これらの生息地域が宅地開発されたことから、山中で生活していたマダニが見られるようになりました。そのためヒトもマダニに吸血される機会が増え、SFTSウイルス感染が報告されるようになったと推察されています。
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