小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.13更新

 rabbitウサギの両瞬膜の突出

4才の雌のドアーフ系ウサギが川崎市宮前区から来院しました。
 1ヶ月位前から、左右の瞬膜が突出することが気になり本院を受診しました。 
 
 オーナーさんは眼の病気と思って来院しました。
瞬膜がでている症例はウサギで責任病変が見つかりにくいことも多くありますが、本院では70%位は胸部疾患(心臓病・胸部腫瘍)であることが多いです。

 この疾患も精査したところ眼の病気ではなく、前縦隔の腫瘍と診断した疾患

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■右眼の所見
前縦隔1
■ホイネル症候群とは
 瞬膜の突出をホイネル症候群といいます。

フェニレフリンは交感神経薬なので、ホーナー症候群の病変部位の診断に使用できます。
 症状は①宿瞳・②第三眼けんの突出・③眼けん裂の狭小化・④眼球陥没が犬での定義ではありますが、このウサギは①②のみが診られ、眼は突出しているように診られました。
 
頭部より一次ニューロンがでて
胸椎(T1)胸椎(T2)胸椎(T3)の二次ニューロンになります。
そして中耳の手前から3次ニューロンになります。

                         損傷部位     10%フェニレフリン点眼試験 
一次ニューロン 頭蓋内・頚椎病変   60-90分
二次ニューロン 腕神経・胸部      <45分 
三次ニューロン 中耳病変・眼球異常  <20分  
日本のフェニレフリンでは5%なので上記の1.5倍の時間で診ています。
このウサギは自宅から電話で2時間位で反応がありました。レントゲン所見と合います。

■左眼の所見

前縦隔2
右眼と同様です。

■左右眼検査         
          
          右眼     左眼
ダズル反応     あり       あり
シルマーティアー9mm    7mm
         眼圧     19mmHg  14mmHg
フルオルテスト     弱陽性     弱陽性
 
フルオルテスト弱陽性は眼が前に出気味なので、涙が十分にいきわたらないため生じていると判断して、ヒアレインを点眼してもらいました。また眼圧は正常です。

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■レントゲン検査
 胸腔の場合は、レントゲンを行います。
この症例は、前縦隔に腫瘍性病変が確認できました。

前縦隔3

前縦隔4

 この腫瘍が神経を圧迫して瞬膜がでていることが予想されます。
 瞬膜を治すには、この腫瘍を治療しなければなりません。

 腫瘍の確定診断には細胞診が必要です。
ウサギは胸腔を穿刺するとショックが稀におきます。
そのためこの症例は今元気なので、これ以上の精査はしませんでした。

 このような症例は比較的多く、来院します。腫瘍の種類としてリンパ腫、胸腺腫などの報告があります。
その場合、治療はステロイド剤や抗癌剤の投与になります。
今後1-2ヶ月に1回のレントゲン・眼科検査をしながら経過をおってゆく必要があります。
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作者: オダガワ動物病院