----------------------------------------------------------------------

しかし屋外で保護された場合に発見されることは多いです。
今回の症例は4ヶ月のメスの子猫に2種類の寄生虫がみつかりました。
川崎市多摩区からの来院です。
■猫回虫について
①
②
猫回虫 虫卵 68-75×60-67μm 嘔吐した猫回虫第4期幼虫
③
駆虫薬で排泄後の猫回虫 成虫、別症例、 雄3-7cm 雌4-12cm
「口から寄生虫を吐いた。」ことを理由に来院した。(写真②)
吐いた虫と検便(写真①)から猫回虫と診断し、プロフェンダースポット®を皮膚に滴下した症例です。便の状態は正常で、吐いた虫は猫回虫の第4期幼虫で気管移行時に起きたと推察されます。プレパテントピリオドを考え再投与を1ヶ月後に薦めました。
猫回虫は①被嚢子虫の経口、②経乳感染、③待機宿主の補食から感染し、幼猫期に多い寄生虫である。被嚢子虫の経口摂取した場合、猫は犬と異なり、年齢に関係なく気管移行型、体内移行型の両方が起こることが特徴である。気管移行型は未分化卵で外界に排泄したのち①10-30時間で幼虫形成卵になる。②この幼虫形成卵を経口摂取すると1-3時間で小腸にて孵化する。③2日間で肝臓・肺に移行する。④6日以後に肺へ移行(第3期幼虫)する。⑤10-21日で胃・腸に移行(第4期幼虫)する。⑥28日で成虫が出現する。⑦56日で虫卵が排泄されます。(写真①)猫免疫不全ウィルス感染の症例で回虫卵が時々発見されるのはこの経路のためです。
プリパテントピリオドはさまざまで、4-5週で犬回虫よりやや長めの報告が多い。
体内移行型は犬回虫と同じような経路を採ると推察される。しかし猫回虫は胎盤感染がなく、子猫が乳汁を飲み腸管内で直接成虫になる。(経乳感染)
猫は補食動物なため待機宿主(齧歯類など)からの感染が多いとされているが、現在動物病院に来院する9割程が室内飼いのため少なくなっていると考える。待機宿主からの感染した場合も幼虫は腸管で直接成虫に成長する。寿命は犬回虫と同様1-1.5年です。
---------------------------------------------------------
治療
レボリューション®、ドロンタール®は主に⑥の猫回虫成虫のみに効能を示し、プロフェンダースポット®は④⑤の幼虫ステージと⑥の成虫に約94%の効果を示します。
またレボリューション®を除き瓜実条虫にも効能をしめします。
ドロンタール錠を飲ませたらよだれをだして抵抗した猫
---------------------------------------------------------
猫の経口薬の欠点として、錠剤また錠剤を粉にして投与した際に涎を出して抵抗される場合が意外に多く、皮膚滴下剤開発の一因になりました。
猫の食道の筋肉は平滑筋で食道の運動が1-2cm/secと弱く、錠剤投与の際に食道内に残り狭窄をおこす可能性がある。そのため筆者は胃まで薬剤が通るよう念のため、必ずスポイドなどで水の追加投与を指示する。
猫はドキシサイクリン錠剤で比較的多く生じる副作用だが、他錠剤でもおきる可能性はある。ヒトでも仰向けに寝ながら水を使用しないで錠剤を飲んだ方が、後に食道狭窄になった例がある。
以上の点から猫には薬剤の確実性が要求される駆虫には皮膚滴下剤の使用を薦めます。
---------------------------------------------------------