小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2017.11.01更新

あbookコクシジウムの駆除剤


 コクシジウムは腸管の感染する原虫です。
本院では幼犬、幼猫、幼ウサギ、文鳥、烏骨鶏で経験があります。
無症状でワクチン時偶然発見される場合もあれば、また激しい下痢を繰り返し脱水で死亡することもありました。

 コクシジウムにはイソスポラ属とアイメリア属があります。
 dogtigerright arrow犬猫はイソスポラ属(オーシスト内のスポロシスト2つ、スポロシスト内のスポロゾイト4つ)で待機感染があります。
犬(Isospora canis、Isospora obioensis )、猫(Isospora felis、Isospora revolta) の2種類の感染

rabbitright arrowウサギはアイメリア属(オーシスト内のスポロシスト4つ、スポロシスト内のスポロゾイト2つ)の感染で待機感染はありません。
chick鳥類はアイメリア属が多いですが、文鳥、カナリアはイソスポラ属です。
 しかし両者間に駆虫薬の相違がある訳ではなく、発見したら駆虫剤の投与がベストの選択です。
これまで駆虫剤はサルファ剤が主でしたが、2017年9月に犬のコクシジウムにプロコッカス®(成分名トルトラズリル他)が認可されました。これからはこの薬剤が中心になると考えられます。

right arrowdogトルトラズリル
right arrowコクシジウムの生活環はこちらへ

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■治療薬

あcamera1)バイエル社の資料より引用

■トルトラズリル

あ
 1985年海外でニワトリ抗コクシジウム剤で販売されたのが始まりとされています。日本には2015年9月に豚用で販売されました。コクシジウムの各ステージに対して広く作用を及ぼし、すぐれた効果を発揮します。(camera1)
 
 犬用は認可済み製剤ですが、本院の使用経験では小動物(猫・ウサギ・文鳥など)に効能外使用で用いた経験では、効果はあるようにおもいます。しかし症例が少なく、使用の際は担当獣医師とよくお話ください。

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■サルファ剤
 サルファ剤は一部に硫黄を含んでおり、これが名前の由来になっています。しかし硫黄とサルファ剤は別ものです。1932年、最初にG.J.P.ドマークらによつて合成された薬剤でスルファニルアミド基を持ちます。トリブリッセン®(製造中止)に含まれるスルファジアジンが古典的なサルファ剤にあたります。その後作用時間を延長させたり、また副作用を減らしたスルファモノメトキシン、スルファジメトキシンが販売され現在使用されています。

 備考・獣医領域で時々使用する薬剤で、糖尿病のSU剤、アセタゾラミド(利尿剤)、ゾニサミド(抗癲癇剤)などがスルファニルアミド基を持ち これらの薬剤の使用で副作用が診られた場合はサルファ剤投与は注意が必要です

■サルファ剤のコクシジウムへの作用 
 サルファ剤は薬理学では抗菌剤ですが、コクシジウム虫体への浸透が良いため使用します。 
 コクシジウムは下痢でも薬剤吸収はよく、注射剤も経口剤も血中濃度は変わりません。主な効果は抗体産生までの増殖を抑えることで、無性生殖生活環の最後部分のtrophozoite→schizontの後期発育最終段階の抑制で、(camera1参照)殺虫効果ではありません。免疫状態は動物により異なり、そのため薬用量・期間の報告も教科書により様々です。経験的には駆虫には14-21日間を要しています。

■スルファモノメトキシン(sulfamonomethoxine) 
 スルファジアジンの1日2回は不便のため、作用時間を長くしたスルファモノメトキシンは1958年頃に販売されました。投与回数の減少(1日1回)、副作用の軽減目的(腎臓のアセチル体の沈殿を少なくしたり)を目的に作製されたスルファジアジンの誘導体です。この薬剤は動物病院ではではコクシジウムの駆除によく使用されてますが、動物での使用は1日2回が良いように感じます。大動物用のダイメトン®という商品名が有名です。ヒト用、犬猫用もないため、小動物診療では現在大動物用を使用しています。

■スルファジメトキシン(sulfadimethoxins

  この薬剤も動物病院ではコクシジウムの駆除に使用されてます。
 ヒト用、動物用共にアプシード®という商品名が有名です。ヒト用はシロップ製剤・注射剤はあります。散在は犬猫用はないため大動物用を使用しています。本院では文鳥のコクシジウム駆除に使用していますが上記したトルトラズリルのほうが効果あるように感じています。

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■その他コクシジウム駆虫剤

■アセチルスピラマイシン(Spiramycin Acetate) 
 筆者はマクロライド系抗生剤のアセチルスピラマイシンも犬猫コクシジウムに使用したことはあります。(ウサギは禁忌)使用した経験ではサルファ剤と同等の効能があるようにおもいます。
 医療ではアセチルスピラマイシンはマクロライド系抗生剤です。しかし抗生剤としての価値は低く、産科関係でトキソプラズマ(学名:Toxoplasma gondii)の際に使用される薬剤です。 
トキソプラズマはアピコンプレックス門コクシジウム綱に属して動物のコクシジウムと分類が似ています。そのため効能があるのではと筆者は推測しています。
 この薬剤は二重盲検などのデーターはなく、開業獣医師の経験的な使用法で『有効』と判断してるに過ぎない薬剤です。そのためエビデンスレベルはサルファ剤より低い薬剤になります。


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 【break time】

あflower2シナノキンバイ(北岳、8月)


 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.09.16更新

お
 rabbitウサギのコクシジウム症
 
 当院ではウサギのコクシジウム症は開業した20年前はよく診ましたが、ペットショツプが衛生的になった現在殆ど診なくなりました。。
 この症例は『ウサギの専門店』の検便で『異常なし』とのことで購入したケースです。当院で再度検便をしたらコクシジウムが発見されました。検便は大切ですが少数寄生だったり、また虫卵は産む日と産まない日があるため、絶対の判断ができる訳ではありません。
 そのためウサギを購入したら掛かり付け動物病院で臨床症状と合わせて再検便することを強くお薦めします。

本症例のコクシジウム
  ウサギ 雌 6ヶ月 雑種、健康診断で本院を訪れました。検便をおこなうとコクシジウムが発見されました。コクシジウムはアイメリアとイソスポラに分かれます。ウサギはアイメリア(Eimeria.Spp)の感染でおこり12種以上の属が同定されています。

■ウサギのコクシジウム症
 胆管と腸に感染します。
 胆管に感染するE.stiedaiは最も病原性が強いとされています。E.stiedaのオーシストは胆管上皮で形成された後に胆汁とともに腸管腔に排泄されます。そのため通常の検便で検出は可能です。しかし発育分裂がさかんな時期には胆管上皮を破壊し、胆汁の刺激等で炎症を生じ、胆管炎を併発します。すると継続的に胆管は肥厚し胆汁のうっ滞を招き、その結果消化障害や下痢などの臨床症状もおこします。
  腸に感染するコクシジウムはEimena Perforans、Eimena.Magna、Eimena Media Eimena.Irresidue などのがいますが、病原性は種によって異なります。おこる可能性がある臨床症状は軟便、下痢です。
 
 顕微鏡所見ではウサギに診られるコクシジウムは上記のような円形の形態と下記のような楕円形の形態が診られますが、残念ながら種類の判断はつきません。中には激しい臨床症状を出す種類もあるため、コクシジウム虫卵を発見したらすぐに駆除することが重要と考えています。特に仔うさぎでは、コクシジウムが原因の下痢が始まってからでは、薬剤投与しても体力がもたず、死亡するケースが多いからです。
 
あ
サルファ剤が効く理由
 治療にはサルファ剤を使用します。尿がアルカリ性のうさぎでは殆ど副作用のない薬剤です。
 紹介した症例はサルファ剤のスルファモノメトキシン(sulfamonomethoxine)を処方して、その後よくなりました。サルファ剤は1-2週間の治療が必要でまた状態によってはもっと時間のかかる場合もあります。

 なぜかと言えばサルファ剤は直接コクシジウムに作用する特異的駆虫剤ではありません。無性生殖生活環の最後、無性生殖の二期のtrophozoiteからschizontへの発育段階を遮断します。細胞性免疫が働き抗体を作るまで、無性生殖を抑制しているに過ぎませんか、真核動物であるコクシジウムへの浸透がよい薬剤です。
 
■トルトラズリル(Toltrazuril) 
 牛用・豚用のコウクジウム駆虫剤のトルトラズリル(Toltrazuril)を使用する場合もあります。ウサギが投薬を拒否する場合など、投与が1回ですむので便利ですが、日本ではウサギに多く使用されていないため、副作用などがよく分かっていません。


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最終更新:平成27年9月16日(水)


 

投稿者: オダガワ動物病院

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