犬の抗てんかん薬について(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2019.09.06更新
■犬の抗てんかん薬について
この項ではイヌの抗てんかい剤について解説します。
ゾミサミド製剤・上から
イヌ用(コンセーブ®、エピレス®)
ヒト用(エクセブラン®)
■ゾニサミド(Zonisamide)
1888年にヒト用で日本で発売された薬剤(エクセグラン®)です。2000年に入りアメリカでイヌに使用したところ、抗てんかん薬として高い評価を得てその後日本でも使用するようになりました。大脳ニューロンの興奮ニューロンを抑える作用が主な作用です。
2014 年イヌ用(コンセーブ®、エピレス®)が日本から販売され、その後の抗てんかん薬はこの薬剤を中心に使用されています。
コンセーブ®は裸錠で砕いて使用も可能です。エピレス®はメープルシロップが含有されており嗜好性が良い点が特徴です。当院ではエピレス®を好んで使用しています。
特発性(強直間代けいれん発作)、焦点性の発作をすべてに効能を示します。
この薬剤の特徴は副作用が少なく、4-5日投与で血液中のゾニサミド濃度が治療域になるケースが多い点です。(抗てんかん薬は薬物半減期×5で定常状態になります。)
ただし個体差がありますので、必要に応じて血液・生化学検査、血中濃度を定期的にモニターすることをお勧めします。
臭化カリウム、レペチラセタムとの併用は可能ですが、フェノバルビタールからゾニサミドにかえる場合は注意が必要です。
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フェノバルビタール製剤
特徴として錠剤(写真右)・シロップ(写真左)・粉など
薬剤形態はさまざまなものがあります。
■フェノバルビタール(Phenobarbital)
2014 年イヌ用(コンセーブ®、エピレス®)が日本から販売されるまで、最も多く使用されてきました。長所は錠剤(写真右)・シロップ(写真左)・粉など薬剤形態はさまざまなものがあり、剤形を選べる点です。錠剤しかないゾニサミドに比べるとバリエーションがあります。
GABAaレセルターに作用してCl-流入を促進して、主に抗閾値作用を示します。80%前後のてんかんに有効です。抑制ニューロンをより強化する薬剤です。
この薬剤はは長い使用歴史があり一番詳細が解明されています。投与を始めて約2週間投与もかかってやっと血中濃度が治療領域になります。ゾニサミドは上記のように4-5日投与でゾニサミド濃度が治療域になることくらべたら、時間がかかる点は欠点です。
血中薬物濃度が15-35μg/mlで安定していることが理想とされてます。36μg/ml以上の時期が長いと将来的に肝臓障害、食欲亢進、他の薬剤との併用に注意を要するなど副作用をおこすことが多いです。用量の調節、別の薬剤への移行を考慮しなければなりません。
臭化カリウム、レペチラセタムとの併用は可能です。上記しましたが、フェノバルビタールからゾニサミドにかえる場合は注意が必要です。
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プレガバリン製剤
■プレガバリン(Pregabalin)
難治性てんかんに使用されている薬剤です。使用の際は低用量からが良いといはれています。まだ多くは使用させていないので詳細は不明ですが長期投与しても可能な意見もあります。
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■臭化カリウム(Potassium bromide)
イヌでは単独でのコントロールは難しいので、フェノバルビタールまたゾニサミドとの併用で使用されています。粉しか剤形はありません。ネコは禁忌です。
GABAbレセルターに結合します。作用機序は生体内でBr-がCl-の代わりに細胞内に流入して過分極を生じ、抗閾値作用を示すことで大脳皮質の知覚並びに運動領域の興奮を抑制します。抑制ニューロンをより強化する薬剤に入ります。
この楽剤はBr-と性質の近いCl-との競合作用には注意が必要で、イヌと海水浴に出かけた後、尿路結石に罹患して塩分の多い食事に変更になった後は効能が減弱します。
半減期が長く(16.5-25日)この薬剤も血液中薬物濃度測定が大切です。臭化物の濃度に達するまでに2-3週間、治療領域まで3-4ヶ月を要します。(単剤でのデーター)
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ジアゼパム坐薬、
自宅で痙攣がおきた場合はこの座薬がお薦めです。
ジアゼパム注射液
■ジアゼパム(Diazepam)
ジアゼパムはベンゾピアシリン系薬剤に属します。ヒトでは長時間効能を示しますが、犬では速効性のある短時間作用型の薬剤です。そのためてんかんの維持使用は不向きです。てんかんで痙攣がおきている場合のみとして有効な薬剤です。
犬で長期的に連続使用をすると、耐性ができやすく効果がなくなっていくことががわかっています。動物病院では注射液の使用が多いですが、坐薬があり(写真)発作時に自宅で入れてもらうことでも利用できます。
またジアゼパムをこれまで多く使用している犬は、他の抗痙攣作用のあるベンゾピアシリン系薬剤を使用しています。(ミダゾラム、フルニトロゼパム)
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そのため漢字では、坐薬と記載するのが正解ですが、ヒトでは座ってのむ薬と勘違いして正座して坐薬を飲んだ方がいるそうです。
坐薬は医療品を基材に坐薬基材を均等に混和して、肛門・膣より挿入しやすい形状に成型した外用剤です。挿入後、体温により溶けるか、軟化するか、また分泌物で徐々に溶けるものと定義されています。
坐薬は歴史的には17世紀から使用されています。写真のカカオ脂が18世紀になって発見され、坐薬基材として優れていることがわかり、実用化されるようになりました。ヒトではカカオ脂より生成されるチョコレートは口の中にはいるとすぐに溶けます。この性質を利用して、坐薬が肛門内にはいるとするに溶けることにも気づき、坐薬の最適基材としてよく使用されてきました。現在の坐薬はカカオ脂ではなく、その薬剤にあった基材が研究され使用されています。
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レペチラセタム
■レペチラセタム(Levetiracetam)
ベンゾピアシリン系薬剤でも痙攣がとまらない場合はレペチラセタム(イーケプラー®)を使用しています。注射剤は緊急事に静注使用が可能です。
錠剤は抗てんかん剤の薬剤変更時などの痙攣発作に短期で使用しています。この薬剤は長期使用は耐性を生じる場合も報告されており使用は注意が必要です。
またどの抗痙攣剤にも反応しないときは麻酔薬を使用しています。
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