症例は7才雄のミニチアシュナウザー雄です。多飲・多尿を主訴に来院しました。
血液・生化学検査、尿検査をおこない 臨床症状 血糖313mg/dl、 尿糖(+)、糖化アルブミン 14.8%、インスリン5.03ngmlの結果を得て、犬では珍しいⅡ型糖尿病と診断した症例です。
そこでインスリン製剤として、ノボリンNPH(写真左)の皮下注射をおこないました。しかし1週間たっても臨床症状の改善もなく、血糖の低下もありません。
次にインスリンレペニルを使用しましたが、同様の結果でした。
血液・生化学検査、尿検査からインスリン抵抗性疾患は疑いにくいため、もっとも吸収性がよいインスリン、ノボリンRの皮下投与に切り替えました。
すると血糖は下がり、その後糖尿病は良好に維持しています。
名称のRははでレギュラー(Regular 正規)に由来します。
速攻型インスリンで長所は吸収が良い点です。欠点は作用時間が短く、この症例は1日3回の皮下投与が必要です。 臨床の場では インスリン抵抗性を疑う前に投与して、血糖減少があるか、投与する必要がある薬剤です。
通常インスリン分子は、亜鉛分子を中心とした倒立した三角錐が6つ集まった立体構造=6量体をとり、この構造で溶媒内で安定性を保っています。6量体で投与されたインスリンは皮下組液により希釈され2量体、さらに単量体へと解離し、毛細血管から吸収され、作用を発現します。
この項、冒頭で紹介したノボリンNの正式名称はNPH(Neutral Protamine Hagedorn)で、6量体の回りに、鮭の精巣から分離、合成したした硫酸プロタミンが配布されています。そのため注射液は混濁しています。1回の注射でインスリンを長い時間作用させることにはできることが長所で、通常はこの薬剤でコントロールされることが多いです。しかし本症例のように希に、吸収問題が生じる場合もあります。
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