小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2017.11.01更新

あ book線虫類は蠕虫の中で最も発達した線形動物で、雌雄異体の擬体腔動物です。 


■作用部位
 線虫類の体表は細長い円筒形で全身はクチクラに覆われているため、体表から駆虫薬の吸収はできません。そのため駆虫剤の作用点は栄養の摂取・吸収が行われる三放射相称の口、筋肉質の食道、消化管の経路を介して吸収されて、神経節また神経筋接合部に働くと推察されています。

 神経の中枢は脳ではなく、食道を囲む神経環で前方と後方に6本の神経幹が走り、所々に神経節があり、はしご状の神経繊維が全身に分布します。そして背筋、腹筋にまたがる神経繊維を交互に弛緩、収縮させて、腸管の蠕動運動に逆行して寄生生活をしています。

 線虫の駆虫薬は主にこの逆行運動を阻害する目的で、神経節また神経筋接合部のシナプス前部に働くパモ酸ピランテル・エモデジプトなどが使用されています。。

 線虫類は駆虫のためにプリパテントピリオドを考え複数回の投与が必要です。right arrow犬鞭虫は同じ線虫類でもright arrow犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫と駆虫薬が多少異なります。

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各論
■商品名 プロフェンダー®スポット 猫用(バイエル薬品、皮膚滴下剤)

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 成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
 7週齢、500g以上の子猫から投与できます。
猫は経口投与は大変な場合もあるので、重宝な薬剤です。頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。

 ■ドロンタール® 猫用(バイエル薬品、錠剤・駆虫可能な寄生虫はプロフェンダースポットと同じ) 
 2種の薬剤が入っている猫用経口剤です。猫は鞭虫の感染がないので犬用と異なり2種類の合剤で、2週齢から使用可能です。
猫回虫、猫鉤虫→パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel)の駆除を行います。
パモ酸ピランテルは虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。1回の投与で線虫類(回虫・鉤虫)の成虫を効果的に駆除できます。虫卵には効果ないため、プレパテント・ピリウドを考慮して、2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が必要です。
 プラジクアンテルも含有されているので、ウルザネ条虫も効果的に駆除できます。ウルザネ条虫は再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
 猫は経口投与が大変な場合もあります。粉にしても効能はありますが、猫が嫌がって涎をだして抵抗される場合があり、筆者の動物病院では駆虫には主にプロフェンダー・スポットを使用しています。

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■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違 
 猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現
◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダー®スポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
 ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。
◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2週間あけて、2回の投与は必要です。
◆ノミ・ダニの駆虫剤と併用 ノミ・ダニの駆虫剤と併用する場合はプロフェンダー®スポットを滴下して皮膚が乾いたことを確認した後、離した箇所の皮膚に滴下してください。
 ぶ形剤は薬剤で相性が異なるので、皮膚上でぶ形剤の共有をさけ、薬剤の吸収、分布に影響を与えない為の処置です。

 

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■商品名 ドロンタール®プラス 犬用(バイエル薬品、錠剤)
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3種の薬剤が入っている犬用経口駆虫剤剤で、生後2週齢から使用可能です。
right arrow犬回虫、犬鉤虫はパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)、
right arrow犬鞭虫はパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)とフェバンテールの相乗作用、
瓜実条虫はプラジクアンテル(Pragiquantel
が駆除を行います。
 

 1回の投与で線虫類(right arrow犬回虫、犬鉤虫、right arrow犬鞭虫)の成虫を効果的に駆除できます。しかし虫卵には効果ないため、寄生虫のプレパテント・ピリウドを考慮して、right arrow犬回虫、犬鉤虫は2-4週間あけて最低2回の投与、right arrow犬鞭虫は2-3ヶ月あけて複数回の投与が必要です。瓜実条虫は再感染防止のためには、中間宿主ノミの駆虫剤の併用必要です。


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■商品名 イベルメック®

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■成分名 イベルメクチン(Ivermectin)、パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)含有
 イベルメクチンは伊豆の川奈の土壌から抽出された成分でフィラリア予防がメインの薬剤です。
 イベルメクチンは単独でも高用量を使用すれば、right arrow犬回虫、犬鈎虫の駆除も同時にできますが、本剤はフィラリア予防がメインのため、コリー犬、オーストラリアンシェパード犬、なMDR1(multidrug resistance protein1)遺伝子の変異犬などイベルメクチン感受性のある犬にもフィラリア予防で使用できるようイベルメクチンを少量にしました。そのためパモ酸ピランテルを含有させて、線虫類の駆除効果も持たしています。
right arrowチュアブルタイプなので嗜好性は良いです。(98%の犬が食べてくれます。)しかし牛肉をベースに製薬ざれているので、それらに食事アレルギーのある犬には薦められません。またフィラリア陽性犬は使用は控えた方がよいです。


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■ミルベマイシン Milbemycin 
 ミルベマイシンは北海道の美瑛の土壌から抽出された成分です。
本来はフィラリア予防ですがフィラリア予防量でright arrow犬回虫、犬鈎虫の駆除にも使用できます。最大の利点はフィラリア予防量の2倍量でright arrow犬鞭虫駆除が可能で、フィラリア予防量と鞭虫駆除量の差が少ない薬剤です。そのため当院では鞭虫卵が庭や散歩コースに多くいるケースにフィラリア予防と兼ねて使用しています。ただしフィラリア陽性犬は投与は禁忌です。
◆備考 鞭虫卵
 鞭虫卵は便と共にでると、地面で1年以上は感染力があります。鞭虫の感染した場合は便は早めにかたづけることを薦めます。また他からの感染疑いの場合は散歩コースの変更を薦めています。


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■商品名 レボリューション®犬猫用 (ファイザー株式会社 皮膚滴下剤)あ
 成分名のセラメクチンは犬猫のフィラリア予防、ノミ予防、耳ダニ駆虫、猫回虫の駆除をおこないます。right arrow犬回虫には効果はありません。 
  6週齢の仔犬、仔猫から投与できます。またコリー犬、オーストラリアンシェパード犬、なMDR1(multidrug resistance protein1)遺伝子の変異犬などイベルメクチン感受性のある犬にも使用可能です。
 イベルメクチンの第三世代とも称されますが、薬剤が不味いため、経口剤としては販売されませんでした。皮膚浸透性の良い性質を利用して、皮膚滴下剤(容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤)のみの販売になりました。

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■商品名 コンバントリン® 
 成分名 パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate) 
 ヒト用のパモ酸ピランテル製剤もあります。動物でも効果はあります。単独製剤である点は症例によっては魅力です。パモ酸ピランテルは消化管から吸収されないので、腸管のみの駆虫になります。


 

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投稿者: オダガワ動物病院

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