小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.08.15更新


ウサギの白内障
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ウサギの白内障 右眼                左眼
 症例は7歳半の雄のウサギです。地元川崎市多摩区からの来院です。
最近は10歳位まで生きるウサギも多くなり白内障も診ることも多くなりました。
 
 この症例のように水晶体が白濁している疾患を白内障といいます。
白内障の治療は手術が基本です。しかし本院は白内障の手術は対応はできません。また全国的にもウサギの白内障手術は多くされていません。また手術適応外の症例も多くいます。1)を参照
 
 手術を希望しないで経過を観察する場合には眼科検診が大切です。
理由は白内障時に水晶体ブドウ膜から緑内障を併発するとウサギに痛みが生じ生活に支障が生じるためです。
 
 水晶体の進行がとまっていれば良いですが、進行する場合もあり獣医師の立場だと頭の痛い疾患です。
白内障の原因の一部はエンセファリトゾーン症との関係も示唆されています。

 この症例は2年前より白内障が始まりましたが、特に処置はしてませんが当時より進んでいません。
この症例も暗くなると見えにくいようなら、家の地図が頭に入っている慣れた環境にいることをつたえました。

 1)・ 犬の白内障手術は動物の眼科専門病院の紹介になります。手術費のみでアニコム調査では犬の片目全国平均35万ぐらいかかるので普及はしてません。また本院 の調査でウサギの白内障の手術をしている動物病院は存じてません。動物ではヒトのように80年も長く生きれませんので、手術適時が高齢になり全身麻酔が必 要な点、そしてすでに網膜の機能も失われて手術適応でない場合もあります。そのため手術しても、視力回復が期待できない症例もあり、術前に網膜電図をとる 必要がありヒトよる数倍大変です。
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白内障薬剤
  ヒトでは白内障は手術疾患で、サプリメントで白内障が治ったなんてきいたら、変な話と思うことが普通です。 
 動物の白内障に効能がある点眼薬・サプリメントの広告も多く見ます。また下記のようにヒト、動物の薬理の本をみると白内障薬剤は沢山記載はされています。
 しかし数年前、『ヒトの白内障、薬剤は効能なし』と新聞にも大きく載り、記載どうり効果ある薬剤はありません

参考までに薬剤名を記します。
( )は人の白内障に使用された薬剤の作用機序を示します。
他にも使用された薬剤はあります。
人の研究ですが水晶体の成分は55-65%が水です。
◇そして白内障がおきると増加する成分として水分、不溶性蛋白、過酸化脂質、Na、Ca(唾液腺ホルモンはCa低下させる)、アルドース還元酵素(ソルビトール産生阻害剤でアルドース還元酵素を抑える。)
◇減少する成分では水溶性蛋白(チオプロニン製剤で増加)、還元型グルタチオン(タチオン点眼で増加)、K、ビタミンC、Na-kATPアーゼ、Ca-ATPアーゼ
が報告されています。
◇その他、犬では駆虫薬のアンサイロールがあります。

以上、沢山薬剤が報告されている疾患は、良い薬剤がないことが多いです。

本院で使用経験のある白内障の薬剤
 白内障点眼のピノレキシン
  ピノレキシンは本院では使用は積極的には薦めていません。
 白内障発症のメカニズムで1960年代の「キノイド仮説」が注目されました。
 トルプトファンやチロシンの有機アミノ酸の代謝異常で生じるキノイドが、水晶体の水溶蛋白であるクリスタルが変性して不溶化することで水晶体が濁る考え方です。そこでキノイドの蛋白変性阻害できれば、水晶体は透明に維持できると考えできたのでピノレキシンです。水晶体の水溶蛋白であるクリスタルと結合することを競合的に結合して、水溶性蛋白クリスタルの変性を防止する効果があります。そのため水晶体が白くなる前あたりの白内障には効果がある場合も考えられます。
 しかし本院では進行してから来院する場合が多く、良くなったことはありません。
 オクルベット
 海外にある動物用白内障点眼のオクルベットです。
 薬価も高く効能が期待されましたが、劇的な変化はなく、本院では現在使用してません。
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  ヒト、動物を含めて白内障が治る点眼が開発されたり、発生をおくらせる仕組みがわかったわけではありません。
日本人は薬好きで、オーナーの方はなにかしてあげられることを探す方がおられますが、白内障ではなにかしてあげてより悪くしているケースもあります。

 長期の点眼は防腐剤の影響も考慮しなければなりません。
またサプリメントなども長期の毒性はよくかかっていませんが、、動物はなぜかサプリメントで治ることを期待してしまっていることが現状です。
そのため薬剤・点眼を使用する場合は担当獣医師と副作用などよく注意する必要があります。
 
 白内障は希に生体の反応で、水晶体の濁りが消えることがあります。なぜおきるかは詳細は不明ですが、白内障が治ったと勘違いすることがありますが、この状態は吸収で水晶体レンズは薄い状態になり治った訳ではありません。
 このような症例がたまたまサプリメント・また点眼をしていると、サプリメントの00が、点眼00が白内障に効果あるなどミスインホメーションが流れていると筆者は考えています。
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■本当にあった困った話。眼が白い、必ず早く動物病院で診療を 
 
 眼圧は76mmmHgありました。、犬の正常眼圧10-20mmmHgです。
 ①白内障を緑内障と間違えたオーナーのケース 
 柴犬のケースですが「眼が白いとなんでも白内障」と診断してしまうオーナーがいました。
このオーナーは旅行先で犬が急に『白内障』になったと電話を頂きました。
「ネットでみたら眼が白くなったら白内障と書いてあるので、帰たら診療を頼みます」との内容でした。
いやな予感がしたので、すぐに近くで眼科対応可能な動物病院の診療を薦めました。旅行を1日繰り上げて帰宅しましたが、急性緑内障(眼圧は76mmmHg)をおこし失眼してました。
 緑内障でおきる角膜の白色(フレアー)を白内障と間違いしたケースです。緑内障は早期なら視力を保てる可能性が少しはあるので残念です。また白内障と緑内障では対応が全く異なります。
 
 ②治療費がかかるのがいやで、電話で診断を要求した方。
 また以前に診療したウサギが2年たって「眼が白いので白内障かどうか電話で診断してくれ」電話で診断を要求した方もいました。獣医師は実際に動物を診て必要な検査して始めてコメントできる職業です。治療費がかかるのがいやで電話で診断で判断されても困ります。ヒトが眼が白くなるようなことになれば眼科を訪れ、眼を診てもらうはずです。電話でヒトの眼科医に診断名をきく人はいないとおもいます。忙し時間帯にこんな電話されてもはっきり迷惑なだけです。

①の例のように診断を間違えているオーナーもいます。眼が白くなったら必ず眼科対応可能な動物病院で診療をしてから次に進んでください。
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作者: オダガワ動物病院