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うさぎの診療講座  うさぎの麻酔法

02年.08月号NJK(ペットメデカル社)寄稿

今回は、ウサギの麻酔法についてお話しします。これまで私は多くのウサギを麻酔し てきましたが、確実に言えることは、ウサギは犬や猫とまったく違う草食獣だということです。

麻酔のポイント ウサギの犬猫の麻酔と最も違う点は以下の3点です。

1.長期の絶食はよくない ウサギはご存知のようにひどくストレスに弱く、空腹にも弱い動物です。6時間以上 の絶食をさせることで、生命に危険を及ぼすこともあります。ですから、絶食は麻酔 前2時間で十分です。

2.ウサギは草食獣で環境適合性の結果、アトロピン類を含む葉を食べても中毒がお きないといわれている。よって、アトロピンは効かない個体が多い 麻酔の前処置としてアトロピンを使うと、かなりの確率で効かない場合があります。 また前投薬に鎮静剤を使用することにより、術後に影響を及ぼすことがあります。

3.注射薬は個体差が激しく、投与量が犬猫に比べはるかに多い ウサギの麻酔の本で麻酔量を見ると、犬猫に比べ2〜3倍近く表記されているものが ほとんどです。 これは先の前麻酔で書いたように、ウサギ自身が草食で、これまで自然界の様々な毒 を摂取し、解毒することにより肝臓自体に様々な耐性ができたためと思われます。

各麻酔薬については、以下に記します。文献で紹介されていたものを実際に行ってみ て、その経験に基づいたものを紹介します。

ウサギの麻酔薬・鎮静剤 メデトミジン メデトミジンを前投与剤として100ug/kgしたところ呼吸が弱くなり、アンチセダンの 投与で救われたこともありました。またキシラジン、メデトミジンのα2拮抗剤は心 疾患には禁忌とされています。ウサギは心/体重比が0.2〜0.4%(犬は1%)しかな く、相対的に心臓が小さく、心疾患の診断が難しい動物です。そのため、なるべくこ れらの薬剤は回避したほうが賢明だと考えます。

ケタミン 単独使用の場合は、ケタミン40mg/kg imして去勢可能なウサギもいれば、ケタミン 60mg/kg imしても効きずらいウサギもおり、個体差はあります。また、ケタミンの 前投薬として鎮静剤を使用するとケタミンの量を少なくできますが、個体差は生じま す。 ジアゼパム5mg/kg+ケタミン10mg/kg 皮下注15分後イソフルレン導入・維持 導入時の不安を取り除く意味で前投薬は有効と思われます。しかしリスクが低い症例 は良好ですが、リスクの高い症例は麻酔中に死亡または予後に影響を及ぼす場合があります。覚醒にまで8時間位かかります。

プロポフォール チオペンタール いずれも呼吸停止を起こしやすく、気管挿管が犬猫に比べ多少時間がかかるのでお勧 めはできません。

以上の経験をふまえて、私は主にイソフルレン単独麻酔を行っています。

イソフルレン単独麻酔の注意点 病院にきてすぐに麻酔をすると、効きにくい傾向があります。心拍数が落ち着くのを 待つのも兼ねて、2時間絶食をさせて病院の静かな場所におくのがよいでしょう。

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導入

1. 麻酔をかける時にウサギが暴れるため、それを押さえることでストレスがかか ることを考慮して前麻酔をかける場合が多いようですが、猫袋を使うことで、無理な 保定をすることなくイソフルレンの単独麻酔で導入を行っています。暴れるので腰くだけに注意してください。(図1)

2. 酸素は2l/mでイソフルレンの濃度は3.5%まで、それ以上にはしない方がよい。肺活量が少なく、細胞のイソフルレン濃度が上がるためです。イソフルレンの濃 度を4%にしたところ呼吸停止を起こしたことがあります。

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3. 2時間たっても興奮していて猫袋が使えないウサギは、水槽に入れ、酸素5 l、イソフルレン5%で行います。水槽の大きさにもよりますが、5〜10分位で導入 可能です。ここまでが導入です。(図2)

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左からレギラーの子犬・猫用マスク

シャンプーの先を切った兔用マスク

消毒液の底をきった兔の鼻用マクス

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4. 次に維持ですが、歯科の処置には小型マスクを作成して、鼻のみにイソフルレ ンを吸引させます。次にエキゾチック用の開口器で開き、口腔内の処置をします。(図3、4)

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5. 簡単な手術はマスクのみで維持します。イソフルレンは犬・猫より25%増の濃 度で、ウサギの大きさに合ったマスクを作ってつけるのが望ましいでしょう。(図 3、5)

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6. 長期オペの場合、気管チューブを入れています。ブラインド挿管法は既に学会 や雑誌で紹介されており、簡単にできるので高い評価を得ています。方法はウサギを 仰臥位に保定し、頚部の下にタオルを入れ気道走行を水平にしてから甲状軟骨を触知 して外径3.3mm、内径2.5mm3.0カフなしの気管チューブを挿入します。喉頭の入口に チューブの先が達すると曇り、咳をするウサギが多いが、そのまま挿入します。 チューブが食いちぎられるのを防ぐため、バイトブロックの使用を考慮中です。(図 6、7)

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外径3.3mm、内径2.5mm3.0カフなしの気管チューブとバイトブロック。

7. 術中は後耳介静脈または橈側皮静脈を使用して、手術開始から最初の1時間は 10ml/kg/hourで、2時間目からは5ml/kg/hourでラクトリンゲルを点滴します。後耳介静脈からの点滴は橈側皮静脈にくらべ装着は楽ですが、3日以上使用すると耳介に穴があくことがあります。また後耳介静脈からの点滴が漏れると耳が壊死したケースもありますので注意して下さい。

8.心電図はクリップ電極使用の場合は犬猫と同様な方法で、貼り付け電極の場合 は、耳介と下腹部を剃毛し、電極を貼ることで測定できます。 また、血圧計の測定も可能です。

術後管理

術後は抗生物質を加えます。ニューキノロン系抗生物質が望ましいでしょう。私はエンロフロキサシン10mg/kg・bidを好んで使用しています。犬猫同様点滴を続行しても いいのですが、回復傾向にあるウサギはチューブを切ってしまうことがあるので有用 ではありません。また、前述のとおり絶食が命にかかわるので、覚醒した時点で餌を与えます。食欲のない場合は、強制給餌をします。給餌する流動食の内容自家製食は栄養のバランスと嗜好性も考えます。私は、ゆで野菜(にんじん、ブロッ コリーに葉物をプラス)の裏ごしかミキサーにかけたものに、ヨーグルト(無糖)を 加えています。市販の草食獣専用強制給餌食、クリティカルケアもあります。 給餌ルート 口径の広いシリンジに入れて経口的に行います。 投与法 自家製食なら体重1kg当たり10〜20mlを1回量として1日2〜3回与えます。

1)ウサギの気管内挿管について ブラインドによる経口挿管法の変法 第22回動物 臨床学会 Nov.01 田中治

2)ウサギの外科診療 第130回多摩獣医師会 Apr.99 斉藤久美子

Tech. Mag. Vet. Surg. Vol.6 No1 Jun.02

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