ハト回虫の虫卵と成虫標本(川崎市多摩区、オダガワ動物病院)
2018.03.03更新
■ハト回虫虫卵と成虫標本
犬猫の回虫の標本はみる機会は多いとおもいますが、ハトの標本はこんな様子です。
ハト回虫虫卵
ハト回虫成虫
ハト回虫成虫
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2018.03.03更新
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2018.03.02更新
本院で診られた鳥類の検便の主な症例を解説します。
小鳥は検便で真菌・原虫、線虫、条虫の感染が診られます。幼少期から診られる場合が多く、購入したらすぐに検便をお薦めします。犬猫では存在しない真菌が感染していることもが多く小鳥の検便に慣れた動物病院で行うことをお薦めします。
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■セキセイインコのメガバクテリウム症
写真はセキセイインコのメガバクテリウム。正式学名はマクロラブダス オニリソロガスター(Macrorhabdus ornithogaster)で真菌に分類される。また胃が好発部位であることからAGY(Avian Gastric Yeast)とも呼ばれていた。
■文鳥のカンジダ症 裸眼とグラム染色 (酵母様真菌)
ジアルジア症はヒトではランブル鞭毛虫 (Giardia lamblia) を原因とする原虫症です。
鳥類ではジアルジア症は(Giardia sp)セキセイインコでよく診ます。また文鳥でも発生します。
嘔吐、軟便などの臨床症状を伴う場合と伴わない場合があります。
診断は新鮮な便でないとみつからないことが多いです。
治療は抗原虫剤の投与が中心です。
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■鳥類のトリコモナス
■鳥類の回虫
■鳥類の毛細線虫症(Capillaria)
(写真はハトの毛細線虫症)
鳥類の毛細線虫症(キャピラリア)は生活史、駆虫剤などの詳細はよくわかっていない寄生虫です。本院ではハト、コザクラインコで1例診た経験がある位です。
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■鳥類の条虫(Teniasis)
(写真は文鳥の条虫)
条虫は文鳥・鶏で稀に診られます。写真のように便に「しらす」がついたように見え、自宅で十分に発見できます。確定診断のため、必ず受診する動物病院に寄生中は持参してください。
条虫駆虫薬で治療は可能ですが、文鳥の条虫は中間宿主が不明なため2-3ヶ月で再発する場合が多いです。
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2018.03.02更新
■セキセイインコ(学名:Melopsittacus undulatus)の
ジアルジア(Giardia.sp)症
■ジアルジア、裸眼(×1000)
左下、栄養型(trophozoite)
右上、シスト(cyst)
■ジアルジア(図1)
栄養型(trophozoite)のグラム染色(×1000)
健康診断にきた3ヶ月の雄のセキセイインコです。ジアルジアは本院では症状がなく健康診断で発見されるケースが多いです。幼鳥のセキセイインコには多く診られ、春から夏にかけて多い疾患です。この症例は全身状態、体重は正常範囲ですが、メガバクテリウムと混合感染した例です。重傷例は軟便、居眠りが診られ、下痢・血便の症状が現れると、生死に関係する場合もあります。診断は検便とそのう検査から行いますが、単回の検査では見つけにくい場合もあり、複数必要な場合もあります。
ジアルジアはヒトへの感染の可能性があるため、診られたら早く駆除することを薦めます。
■便中のセキセイインコのジアルジア、動画
セキセイインコのそのう、小腸に感染すると、2分裂をしながら増殖します。(栄養型、trophozoite)。
その後、栄養型のみでなく、間欠的に殻に覆われたシストと呼ばれる形態も一緒に排出するようになります。(上記の図1、動画参照)
ジアルジアの治療には抗原虫薬メトロニダゾールを投与します。初期であればこの薬剤の投与で70%は駆除できますが、環境を含めた総合的な治療が必要です。その理由は 厄介なことに、環境中に排泄されたシストは殆どの消毒液に抵抗性します。乾燥には弱いですが、水のある場所では2ヶ月位生存しています。そのため便とともに排泄されたシストが食事に付着あるいは混入して経口再感染をおこす可能性があります。
そのため現実的なシストの除去には飼育場所、また使用している玩具を熱湯をかけて、日光消毒で乾燥させることが良いと考えています。
他の動物のジアルジア症は
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2018.03.02更新
どの烏骨鶏かかりませんが、持参された便は血便をしていました。検便ではコクシジウムと回虫が発見され血便の原因はどちらの虫卵か不明です。両方の駆虫剤(回虫はパモ酸ピランテル、コクシジウムはトリトラズリル)を4匹分処方しました。
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他の動物の回虫症は
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■犬小回虫
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2018.02.02更新
ハムスターはジアルジア・大腸蟯虫(Syphacia mesocriceti)・盲腸蟯虫(Syphacia obvelata)がときどき診られます。
購入後はぜひハムスターを診療している動物病院での検便をお薦めします。
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■ハムスター盲腸蟯虫、虫卵 ■ハムスター大腸蟯虫、虫卵
蟯虫の成虫は便に「しらす」がついたような状態で診られます。(ウサギの例、ハムスターもほぼ同様)
ハムスターでは蟯虫は大腸蟯虫・盲腸蟯虫(写真)がいます。
駆虫は回虫などと同じ線虫類なので、同様の駆虫剤を使用します。片利寄生性のためハムスターには害はないという意見もあります。
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■原虫
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エキゾチックに安全に使用できるノミ、ダニ製剤
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投稿者:
2018.02.02更新
■ハムスターのジアルジア症
生後7ヶ月の雄ハムスターが下痢を主訴に来院しました。 体重は78gと少々やせ気味です。またこれまで軟便のことが多かったそうです。今日はとくに下痢がひどいので来院しました。触診では体温が低く危険な状態です。
検便でジアルジアが確認されました。
ハムスターのジアルジアは常在している原虫です。ハムスターの具合が悪くなるとでてきます。
この症例も抗原虫剤を処方しましたが、予後は厳しいと予想されます。
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2017.11.17更新
■コクシジウムとは
文鳥のコクシジウム
コクシジウムは腸管に寄生して幼犬、幼猫、幼ウサギでは激しい下痢を繰り返し脱水で死亡する可能性のある疾患です。しかしコクシジウムの種類によっては症状なくすごせ、また希に自然治癒することもあります。両者は顕微鏡の検便では鑑別は不可能で発見したら駆虫剤の投与がベストの選択です。
コクシジウムにはイソスポラとアイメリアの2属があります。
犬猫はイソスポラ(オーシスト内のスポロシスト2つ、スポロシスト内のスポロゾイト4つ)の感染でおきます。ウサギはアイメリア(オーシスト内のスポロシスト4つ、スポロシスト内のスポロゾイト2つ)です。 しかし両者間に駆虫薬の相違はある訳ではありません。
サルファ剤の歴史
サルファ剤(salfa)は一部に硫黄(sulfar)を含んでおり、これが名前の由来になっています。しかし硫黄とサルファ剤は別ものです。1932年、最初にG.J.P.ドマークらによつて合成された薬剤でスルファニルアミド基を持ちます。
備考・獣医領域で時々使用する薬剤で、糖尿病のSU剤、アセタゾラミド(利尿剤)、ゾニサミド(抗癲癇剤)などがスルファニルアミド基を持ち これらの薬剤の使用で副作用が診られた場合はサルファ剤投与は注意が必要です。
作用は葉酸の合成阻害です。葉酸は細菌は自身で作れますが、ヒトを含めて動物は食事から捕ります。その差を利用した薬剤です。サルファ剤は葉酸の前駆体、パラアミノ安息香酸(PABA)と同じような形状です。
サルファ剤を飲むと、PABAと競合拮抗して、PABAおしのけて、細菌の葉酸の代謝系に入り込むます。そしてジヒドロ葉酸を作れなくします。ジヒドロ葉酸はその後細菌のDNAなどを作る材料になりますので、細菌は生存できなくなります。ヒトを含めて動物はこの経路がないので副作用は少ない薬剤です。
副作用は薬学の本と臨床の場では相違が診られます。
薬学の本では犬はアセチル化が低くサルファ剤の代謝が苦手です。長期使用で腎障害がでることがあるので注意が必要と記載されています。中毒症状として尿潜血,蛋白尿,尿排泄困難.血清クレアチニン,BUN濃度の上昇が診られるそうです。また尿が弱酸性の犬猫では希に代謝産物(おもにN4のアセチル体)が腎に析出します。ウサギは尿がアルカリ性なのでこの心配は皆無です。
しかし副作用は臨床の場では使用期間が短いこともあり、私自身経験はありませんし、実際副作用が生じたことを聞いたことがありません。
■サルファ剤のコクシジウムへの作用
サルファ剤は薬理学では抗菌剤ですが、コクシジウム虫体への浸透が良いため使用します。
コクシジウムは下痢でも薬剤吸収はよく、注射剤も経口剤も血中濃度は変わらい報告もありますが、本院では下痢がひどい場合は注射投与で3-4日間通ってもらっています。 主な効果は抗体産生までの増殖を抑えることで、無性生殖生活環の最後部分のtrophozoite→schizontの後期発育最終段階の抑制で、この薬剤はコクシジウムの生活環の遮断であり、殺虫効果ではありません。免疫状態は動物により異なり、そのため薬用量・期間の報告も教科書により様々です。経験的には駆虫には14-21日間を要しています。初期のサルファ剤、スルファジアジン(sulfadiazine)は1947年にが開発され、1日2回の投与が必要がありました。
■スルファモノメトキシン sulfamonomethoxine
1日2回は不便のためスルファモノメトキシンは1958年頃に販売されました。投与後の血中濃度は延長して投与回数の減少(1日1回)、副作用の軽減目的(腎臓のアセチル体の沈殿を少なくしたり)を目的に作製されたスルファジアジンの誘導体です。この薬剤は動物病院ではではコクシジウムの駆除によく使用されてます。
ヒト用、動物用共にダイメトンという商品名が有名です。ヒト用は製造中止になりました。また犬猫用もないため、小動物診療では現在、大動物用を使用しています。
犬・猫・ウサギのコクシジウムの駆除に感受性がよく、好んで使用しています。
■スルファジメトキシン sulfadimethoxins
この薬剤も動物病院ではコクシジウムの駆除によく使用されてます。
ヒト用、動物用共にアプシードという商品名が有名です。ヒト用はシロップ製剤・注射剤があります。ダイメトン同様、犬猫用はないため大動物用を使用している施設もあります。本院では文鳥始め鳥類のコクシジウムの駆除に使用しています。
その他コクシジウム駆虫剤
■トリトラズリル Toltrazuril
3週間に1回の経口投与でコクシジウムの駆虫可能なトリトラズリルは牛・豚のコクシジウムには認可されてます。 有性生殖・無性生殖両方に効能を示します。本院の使用経験で小動物(犬・ウサギ・文鳥など)に効能外使用は効果はあるようにおもいますがが、症例が少なくまだ詳細は不明です。使用の際は担当獣医師とよくお話ください。
■アセチルスピラマイシンSpiramycin Acetate
筆者はマクロライド系抗生剤のアセチルスピラマイシンもは犬猫コクシジウムに使用したことはあります。(ウサギは禁忌)使用した経験では確かにサルファ剤と同等の効能があるようにおもいます。
医療ではアセチルスピラマイシンはマクロライド系抗生剤としての価値は低く、産科関係でトキソプラズマ(学名:Toxoplasma gondii)に使用される薬剤です。 トキソプラズマはアピコンプレックス門コクシジウム綱に属して動物のコクシジウムと分類が似ています。そのため効能があるのではと筆者は推測しています。
サルファ剤で副作用がでる症例などは使用価値はあるとおもいますが、二重盲検などのデーターもみあたらず、開業獣医師の経験的な使用法で『有効』と判断してるにすぎないので、エビデンスとしてはサルファ剤より低い薬剤になります。
コクシジウム感染型oocystの生存期間、
便に排泄されたオオシスト(oocyst)は1-3日で感染型oocystに変化します。
環境 生存期間
砂地(陽当たり) 4ヶ月
荒地(陽当たり) 6ヶ月
湿地 9ヶ月
樹木の多い陽影 18ヶ月
清水中 24ヶ月
乾燥鶏糞(陽影干し) 10ヶ月
乾燥鶏糞(天日干し) 7ヶ月
oocystの駆除法
熱湯 60度 30分
熱湯 80度 1分
熱湯 100度 1-2秒
熱風 80度 5分
熱風 100度 3分
消毒薬には殆ど抵抗します。
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2017.11.01更新
■条虫、吸虫駆虫剤
プラジクアンテル(Praziquantel)とは
◆瓜実条虫(Dipylidium caninum)
注射・経口薬・皮膚滴下剤どれでも駆虫可能です。薬剤より重要なことは、中間宿主のノミの駆除が大切です。ヒトでも感染例があります。
◆文鳥の条虫
経口剤が便利です。しかし中間宿主が不明なため、完全駆除には至りません。
◆小型条虫
本院ではハムスターで診られました。経口投与も可能ですが、プロファンダー®スポットの皮膚滴下剤が便利です。ヒトにも希に感染例があります。
■薬剤各論
■プラジクアンテルの注射剤
◆ 商品名・ドロンシット®注射液 犬猫用
瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆除に使用される薬剤です。特にマンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆虫には高用量が必要なため、注射剤は投与量が調節でき使用しやすいです。
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■プラジクアンテル含有の皮膚滴下剤
◆商品名・プロフェンダー®スポット 猫用
成分名・線虫駆虫薬エモデプシド21.43mg/ml(1.5-3mg/kg)、条虫駆虫薬プラジクアンテル85.75mg/ml(5.4-9.8mg/kg)が含有され、グリセリン類似物質に溶解している皮膚滴下剤です。猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、多包条虫をほとんど同時に駆除可能です。
7週齢、500g以上の犬猫から使用可能です。とくに猫は経口投与が大変な場合もあり重宝な薬剤です。
プロファンダー®スポット 背中にたらすのみです。
猫回虫、猫鉤虫、瓜実受注の駆虫ができます
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■プラジクアンテル含有の経口剤
◆商品名 ドロンタール®プラス 犬用
犬用駆虫薬、3種類の合剤で生後2週齢から使用可能です。
1回の投与で線虫類および条虫類を効果的に駆除可能です。
瓜実条虫→プラジクアンテル
犬回虫、犬鉤虫→パモ酸ピランテル
犬鞭虫→パモ酸ピランテル・フェバンテールの相乗作用
で駆除を行います。
◆商品名 ドロンタール® 猫用
猫用で駆虫薬2種類の製品で、4週齢から使用可能です。
猫回虫、猫鉤虫はパモ酸ピランテル、
瓜実条虫はプラジクアンテルが駆除します。
パモ酸ピランテルは猫回虫の産卵前の未成熟な寄生虫に対しても高い駆除効果があります。
◆商品名 ドロンシット®犬猫用、 ビルトリシド®ヒト用
共にプラジクアンテルの単独経口剤です。
ドロンシット®は犬猫用で瓜実条虫感染の場合は便利な薬剤ですが、マンソン裂頭条虫、壺型吸虫の駆虫には猫で3錠も飲ます必要があり、利便性の良い薬剤とは言えません。
ビルトリシド®はヒトで使用されている条虫・吸虫の駆除剤です。動物用より力価が高いことが特徴です。
しかし猫では錠剤・粉薬は投薬に抵抗して涎をだして、飲ませにくい場合があります。
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竜ヶ岳、ダイヤモンド富士(1月)
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2017.11.01更新
■条虫類、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫の
診断と駆虫薬の相違
条虫類は扁形動物に属し雌雄同体で無体腔動物です。呼吸、循環、骨格、消化管はなく、線虫のような激しい運動性もありません。頭節のみ寄生体へ固着しているため、吸溝、吸盤、嘴、小鉤など吸着器官があり、その後方に片節が未熟、成熟、老熟と滑車のように連なって体表にクチクラはありません。
写真② マンソン裂頭条虫に代表される擬葉(裂頭)条虫類です。
当院ではいずれの寄生虫も犬猫のみ感染が診られています。
両者の相違は、診断方法、中間宿主の数、
条虫駆虫剤プラジクアンテルの薬用量が異なります。
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写真③ (外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)
前者瓜実条虫片節の最も重要な点は体壁に子宮孔(産卵孔)がない為、(写真③)片節内の卵嚢内に虫卵が貯まります。そして組織内の代謝活性が低下して、後部の老熟片節が契れて便と共に片節が排泄されます。そのため、診断は視診が主で「米粒のような虫が糞についてきた」という主訴で来院します。
また写真①の瓜実条虫は中間宿主はノミで1つです。
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写真④(外部・内部寄生虫の駆虫薬 鈴木 透、CAP No294 2013 12より)
後者のマンソン裂頭条虫片節は瓜実条虫に比べて横に約1.5倍長くなっています。相違は体壁に子宮孔(産卵孔)があり虫卵が寄生体の腸管内に排泄される点で、写真②のように虫卵で排泄されます。片節の排泄は殆どなく、診断にはまず検便が必要な点です。中間宿主は2つあります。
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●プラジクアンテル製剤
駆虫剤プラジクアンテルの薬用量はマンソン裂頭条虫の駆虫には瓜実条虫の約6倍も必要な点も重要です。
作用機序は条虫の繊毛から侵入して外皮を破壊し、そして内容物を体外へ放出し、主に無機イオンの能動的な移動を阻害して効能を示します。
なお条虫類は神経系の発達は悪く、抑制性神経伝達物質(GABA)は存在しないため、イベルメクチン類は効果を示しません。
条虫の生活史には必ず中間宿主が必要です。著者の考えは瓜実条虫、マンソン裂頭条虫の再寄生の防止のためにはプリパテントピリオドを考慮した再駆虫より、中間宿主と接触させないことが大切です。
中間宿主は瓜実条虫はノミに接触後16-21日で、マンソン裂頭条虫はカエル、ヘビなどに接触後約14日で感染します。
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塔の岳(丹沢山系)からの日の出(1月)
江の島の上空に日が昇ります。
投稿者:
2017.11.01更新
■線虫類は蠕虫の中で最も発達した線形動物で、雌雄異体の擬体腔動物です。
■作用部位
線虫類の体表は細長い円筒形で全身はクチクラに覆われているため、体表から駆虫薬の吸収はできません。そのため駆虫剤の作用点は栄養の摂取・吸収が行われる三放射相称の口、筋肉質の食道、消化管の経路を介して吸収されて、神経節また神経筋接合部に働くと推察されています。
神経の中枢は脳ではなく、食道を囲む神経環で前方と後方に6本の神経幹が走り、所々に神経節があり、はしご状の神経繊維が全身に分布します。そして背筋、腹筋にまたがる神経繊維を交互に弛緩、収縮させて、腸管の蠕動運動に逆行して寄生生活をしています。
線虫の駆虫薬は主にこの逆行運動を阻害する目的で、神経節また神経筋接合部のシナプス前部に働くパモ酸ピランテル・エモデジプトなどが使用されています。。
線虫類は駆虫のためにプリパテントピリオドを考え複数回の投与が必要です。犬鞭虫は同じ線虫類でも犬回虫・犬小回虫・犬鉤虫と駆虫薬が多少異なります。
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各論
■商品名 プロフェンダー®スポット 猫用(バイエル薬品、皮膚滴下剤)
成分名 エモデプシド(Emodepside)・プラジクアンテル(Pragiquantel)の合薬で猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫、多包条虫の内部寄生虫をほとんど同時に駆除が可能です。
7週齢、500g以上の子猫から投与できます。猫は経口投与は大変な場合もあるので、重宝な薬剤です。頸背部の被毛を分け、容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤です。
■ドロンタール® 猫用(バイエル薬品、錠剤・駆虫可能な寄生虫はプロフェンダースポットと同じ)
2種の薬剤が入っている猫用経口剤です。猫は鞭虫の感染がないので犬用と異なり2種類の合剤で、2週齢から使用可能です。
猫回虫、猫鉤虫→パモ酸ピランテル (Pyrantel pamoate)
瓜実条虫→プラジクアンテル(Pragiquantel)の駆除を行います。
パモ酸ピランテルは虫体の神経-筋接合部に作用し痙性の運動神経麻痺を示しコリンエステラーゼ抑制作用を有します。薬剤の腸管からの吸収は殆どありません。1回の投与で線虫類(回虫・鉤虫)の成虫を効果的に駆除できます。虫卵には効果ないため、プレパテント・ピリウドを考慮して、2-4週間あけて最低2回の複数回の投与が必要です。
プラジクアンテルも含有されているので、ウルザネ条虫も効果的に駆除できます。ウルザネ条虫は再感染防止のため、ノミの駆虫が併用して必要です。
猫は経口投与が大変な場合もあります。粉にしても効能はありますが、猫が嫌がって涎をだして抵抗される場合があり、筆者の動物病院では駆虫には主にプロフェンダー・スポットを使用しています。
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■プロフェンダー®スポットとドロンタール®錠の駆虫の相違
猫の回虫卵は便と共に未分化卵が排泄されます。
①そして10-30時間で幼虫形成卵になる。
②この幼虫形成卵を経口摂取すると、1-3時間でふ化します。
③2日間で肝臓・肺に移行
④6日以後か肺に移行(第3期幼虫)
⑤10-21日で胃・腸に出現(第4期幼虫)
⑥28日で成虫が出現
◇経口剤は主に⑥の猫回虫成虫に効能を示します。
◇皮膚に滴下するプロフェンダー®スポットは④⑤⑥のステージでも約94%の効果を示します。猫回虫成虫のみでなく幼虫移行症にも効能を示すのでこの薬剤がお薦めです。
ただし希にぶ形剤(グリセリン様物質)にアレルギーを起こして、毛が抜けることも希にあります。
◇しかしどちらの薬剤も猫回虫には2週間あけて、2回の投与は必要です。
◆ノミ・ダニの駆虫剤と併用 ノミ・ダニの駆虫剤と併用する場合はプロフェンダー®スポットを滴下して皮膚が乾いたことを確認した後、離した箇所の皮膚に滴下してください。
ぶ形剤は薬剤で相性が異なるので、皮膚上でぶ形剤の共有をさけ、薬剤の吸収、分布に影響を与えない為の処置です。
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■商品名 ドロンタール®プラス 犬用(バイエル薬品、錠剤)
3種の薬剤が入っている犬用経口駆虫剤剤で、生後2週齢から使用可能です。
犬回虫、犬鉤虫はパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)、
犬鞭虫はパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)とフェバンテールの相乗作用、
瓜実条虫はプラジクアンテル(Pragiquantel)
が駆除を行います。
1回の投与で線虫類(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫)の成虫を効果的に駆除できます。しかし虫卵には効果ないため、寄生虫のプレパテント・ピリウドを考慮して、犬回虫、犬鉤虫は2-4週間あけて最低2回の投与、犬鞭虫は2-3ヶ月あけて複数回の投与が必要です。瓜実条虫は再感染防止のためには、中間宿主ノミの駆虫剤の併用必要です。
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■商品名 イベルメック®
■成分名 イベルメクチン(Ivermectin)、パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)含有
イベルメクチンは伊豆の川奈の土壌から抽出された成分でフィラリア予防がメインの薬剤です。
イベルメクチンは単独でも高用量を使用すれば、犬回虫、犬鈎虫の駆除も同時にできますが、本剤はフィラリア予防がメインのため、コリー犬、オーストラリアンシェパード犬、なMDR1(multidrug resistance protein1)遺伝子の変異犬などイベルメクチン感受性のある犬にもフィラリア予防で使用できるようイベルメクチンを少量にしました。そのためパモ酸ピランテルを含有させて、線虫類の駆除効果も持たしています。
チュアブルタイプなので嗜好性は良いです。(98%の犬が食べてくれます。)しかし牛肉をベースに製薬ざれているので、それらに食事アレルギーのある犬には薦められません。またフィラリア陽性犬は使用は控えた方がよいです。
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■ミルベマイシン Milbemycin
ミルベマイシンは北海道の美瑛の土壌から抽出された成分です。
本来はフィラリア予防ですがフィラリア予防量で犬回虫、犬鈎虫の駆除にも使用できます。最大の利点はフィラリア予防量の2倍量で犬鞭虫駆除が可能で、フィラリア予防量と鞭虫駆除量の差が少ない薬剤です。そのため当院では鞭虫卵が庭や散歩コースに多くいるケースにフィラリア予防と兼ねて使用しています。ただしフィラリア陽性犬は投与は禁忌です。
◆備考 鞭虫卵
鞭虫卵は便と共にでると、地面で1年以上は感染力があります。鞭虫の感染した場合は便は早めにかたづけることを薦めます。また他からの感染疑いの場合は散歩コースの変更を薦めています。
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■商品名 レボリューション®犬猫用 (ファイザー株式会社 皮膚滴下剤)
成分名のセラメクチンは犬猫のフィラリア予防、ノミ予防、耳ダニ駆虫、猫回虫の駆除をおこないます。犬回虫には効果はありません。
6週齢の仔犬、仔猫から投与できます。またコリー犬、オーストラリアンシェパード犬、なMDR1(multidrug resistance protein1)遺伝子の変異犬などイベルメクチン感受性のある犬にも使用可能です。
イベルメクチンの第三世代とも称されますが、薬剤が不味いため、経口剤としては販売されませんでした。皮膚浸透性の良い性質を利用して、皮膚滴下剤(容器の先端を皮膚に付けて滴下する簡便で確実なスポットオン液剤)のみの販売になりました。
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■商品名 コンバントリン®
成分名 パモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)
ヒト用のパモ酸ピランテル製剤もあります。動物でも効果はあります。単独製剤である点は症例によっては魅力です。パモ酸ピランテルは消化管から吸収されないので、腸管のみの駆虫になります。
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