小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2015.07.13更新

オダガワ
dog糖尿病の犬、ケトアシドーシス


  糖尿病とは、インスリンというホルモンの作用が低下したため、体内に取り入れられた栄養素がうまく利用されず血糖値の高い状態が続く疾患です。血糖値が高いだけだと自覚症状はありませんが、様々な病気を引き起こすことにつながります。それが「合併症」です。血管が痛むために目や腎臓などに障害がでやすいです。

  糖尿病は膵臓からのインスリンの分泌不足による場合(インスリンが足りない状態)Ⅰ型糖尿病と、インスリンは分泌されていますが、肥満、感染症などによりインスリンの作用(効果)が出にくいの場合(インスリンが有っても血糖値が下がらない状態)Ⅱ型糖尿病とが有ります。犬の糖尿病は自己免疫疾患で、膵島が破壊されておきます。インスリンはでなくなります。そのためインスリンの投与が必要です。

多飲・多尿を主訴に14歳の避妊済み雌犬が来院しました。本日はなにも食べないそうです。川崎市多摩区登戸からの来院です。年齢が高齢でありことより、レントゲン・エコー・血液検査・生化学精査を勧めました。

来院した14才の犬


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●血液・生化学検査


 レントゲン検査・エコーは大きな異常はありませんでした。GLU上昇より糖尿病が疑われました。また中性脂肪の上昇が診られます。糖尿病は状態が進むと、いくら体内にブドウ糖があっても、そのブドウ糖をエネルギー源に分解するインスリンが分泌がないため、脂肪がエネルギー源として使われ、ケトン体が増えます。この状態をケトアシドーシスといい、その脱出が必要です。
またLIPの高値より、膵疾患も疑われました。---------------------------------------------------------------------
●尿検査
  
尿検査でもブドウ糖が強陽性です。ケトン体はやや陽性位でした。---------------------------------------------------------------------

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追加検査として犬インスリンの測定、糖化アルブミン、犬膵特異的リパーゼの測定をおこないました。

犬インスリン 0.55(ng/ml)  正常値0.27-0,65
糖化アルブミン 42.4(%)   正常値8.8-14.5
犬膵特異的リパーゼ 627   正常値<200


以上の結果から、軽度のケトアシドーシス併発したⅠ型糖尿病と診断しました。犬の糖尿病は自己免疫疾患で、膵島が破壊されておきます。インスリンはでなくなります。そのためインスリンの投与が必要です。また本症例はその前にケトアシドーシスの改善が必要です。



 この症例は点滴をしたところ、入院した夜より食欲が回復し、翌日よりインスリンの投与を開始しました。
その後、月1回のGLU・LIP・糖化アルブミンのをして診ていきその後2年生存しました。

あ この症例に使用したノボリンN


 

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【break time】

あ

 flower2ラ・フランス

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: オダガワ動物病院

2015.07.11更新

オダガワ
dogtiger糖尿病の薬剤、インスリン


a
本院で使用してるインスリン各種

 インスリン(insulin)は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるペプチドホルモンで糖質の代謝に重要な役割を果します。糖尿病になると、インスリンの不足により、高血糖になり、臓器に悪影響を及ぼします。そのため外部からインスリンを投与して、臓器の障害をおさえ、健康を保つことが大切です。
 ヒトでは1970年後半から、動物では1980年後半から、糖尿病に罹患したとき、自己注射によるインスリン療法がおこなわれています。

 インスリンは最初、1921年にハンティングにより牛の膵臓から抽出されました。当初は純品を精製することはできず、製薬される期日が異なると、不純物の関係によるアレルギー反応、薬剤劣化、作用時間の相違などが生じ、投与量を重量で求まられませんでした。

 そこでインスリン製剤は 1923 年国際連盟保健機構の標準化委員会で「健康な体重約2Kg のウサギを24 時間絶食状態にして、そのウサギにインスリンを注射して、3 時間以内に痙攣を起こすレベル(血糖値:約45mg/dL)にまで血糖値を下げ得る最小の量」 を1単位と定義しました。そのためインスリンは現在でも投与量は重量表示でなく、国際単位unit:Uの表示になっています。また例外を除き、この見解が礎になって、現在の投与量に関わっています。

 
ヒトでも長く牛、豚など動物由来のインスリンが使用されてきましたが、1987年遺伝子組み換え技術により、半合成ヒトインスリンが発売されました。2003年の狂牛病の件もあり、動物由来のインスリンは製造中止になりました。動物病院でもそれに従い殆ど使用されなくなりました。

  以下本院で使用しているインスリンの説明をします。ヒトでは超速効型インスリン. 速効型インスリン. 持効型溶解インスリン. 中間型インスリン. 混合型インスリンに分けられていますが、本院では動物に 速効型ノボリンR、中間型ノボリンN、 持効型溶解型ランタス、レペミルを症状に合わせて、使用しています。作用時間はノボリンR<ノボリンN<ランタス=レペミル、吸収はノボリンR≻ノボリンN≻ランタス=レペミルになります。

                                                                  最初に戻るup arrow

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 あ 使用動物dogtiger ノボリンRは半合成ヒトインスリンです。速攻型インスリンでレギュラー(Regular)、またリタード(Retard)を短くした名称です。水溶性で吸収が最も良好です。投与方法は静脈内投与が一番吸収は良いですが、本院では筋注にてインスリン抵抗性の有無などに使用しています。皮下注で維持使用も可能ですが、作用時間は短いことが欠点です。
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あ 使用動物dogtiger ノボリンNも半合成ヒトインスリンです。硫酸プロタミンを付加して長時間インスリンが効能を示すように作られた薬剤でイソフェンインスリン水性懸濁注射液(中間型)が正式名称です。プロタミンは魚の精子から抽出された物質なので、薬剤は白濁していると推測しています。混濁製剤のため皮下注したとき薬物吸収に問題が生じる動物はいます。動物病院では英語表記のNeutral Protamine Hagedornの頭文字をとってNPHと呼ばれていることが多いです。
---------------------------------------------------------------------あ 使用動物dogtiger さらに長時間一定に続くように作られたアナログ製剤が2000年代になると発売されました。これらの薬剤は中間型ヒト半合成インスリンと比較して、食後血糖の管理が優れていること、また、低血糖のリスクが減ったことが利点としてあげられますが、動物ではまだまだ議論の余地はあります。
 写真上のレペミル®は研究では犬猫では希釈投与が可能です。しかし投与量は注意が必要です。ランタス®はヒトの皮下のpH7.4で一度沈殿して徐々にでてくるように設定されています。犬猫でも使用は可能ですが、皮下のpHはヒトと異なりますので注意が必要です。また希釈はできません。
 両インスリンとも動物では個体差があり、実際使用してみないとどちらが良いかわかりません。         

                                                                                         最初に戻るup arrow
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・備考 動物由来のインスリン

あ

 使用動物tiger 「PZI」とは、Protamine Zinc Insulinの略で、牛の膵臓から抽出されています。インスリン構造の種差は、アミノ酸配列が原因により生じます。猫インスリンは牛インスリンに対して1つのアミノ酸が異なるのみなので、このインスリンは猫に多く使用されてきました。またプロタミンと塩化亜鉛を加えることで、皮下注射後した後、作用が穏やかに長時間持続効果あるように考案された製品です。
 写真のアメリカ製のPZI VETは90%牛と10%豚インスリンの混合で構成されています。本邦では2003年7月、狂牛病の関係で動物由来のインスリンは製造中止になり、また現在は個人輸入でも入手はできず、使用はできません。


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投稿者: オダガワ動物病院