小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2018.06.02更新

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白内障薬剤  


  白内障は卵の話に例えられます。普通の眼が生卵なら、白内障の眼は目玉焼きです。
目玉焼きは生卵に戻せません。そのため薬剤は効果ないか、進行を遅らせることがやっとで、治せる薬剤はありません。数年前、新聞にヒトの白内障治療薬があまり効能がないことが記載されたこともありました。 

 ヒトでは白内障は手術疾患で、最近は技術、設備の発達で、短時間の手術時間ですむと聞きます。 動物もヒト同様、手術疾患ですが、料金が高額になる点、全身麻酔下で網膜電図が必要な場合が多く、このような十分な施設のある動物病院は多くはなく普及はしてません。
(当院でも白内障の手術には対応してませんので、動物眼科病院の紹介になります。)

 参考までに白内障用に販売されている薬剤名を記します。( )は薬剤の作用機序を示します。
 水晶体の成分は55-65%が水です。そして白内障がおきると増加する成分として水分、不溶性蛋白、過酸化脂質、Na、Ca(唾液腺ホルモンはCa低下させる)、アルドース還元酵素(ソルビトール産生阻害剤でアルドース還元酵素を抑える。)
また減少する成分では、水溶性蛋白(チオプロニン製剤で増加)、還元型グルタチオン(タチオン点眼で増加)、K、ビタミンC、Na-kATPアーゼ、Ca-ATPアーゼが報告されています。
 このように増加する成分をカットしたり、減少成分をおぎなった薬剤が多く使用されています。その他、白内障にはアスタキサンチンが視力回復、老化防止、疲れ目解消効目的で使用されています。また駆虫薬のアンサイロール(製造中止)も以前はよく使用されていました。
 ただし前記したようにヒト、動物を含めて白内障が治る点眼が開発されたり、発生をおくらせる仕組みがわかったわけではありません。個人の感想では薬剤を使用しても変化ないと考えています。

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■当院で使用経験のある白内障の薬剤

 
白内障点眼のピノレキシン

  ピノレキシンは本院では使用は積極的には薦めていません。
 白内障発症のメカニズムで1960年代の「キノイド仮説」が注目されました。
 トルプトファンやチロシンの有機アミノ酸の代謝異常で生じるキノイドが、水晶体の水溶蛋白であるクリスタルが変性して不溶化することで水晶体が濁る考え方です。そこでキノイドの蛋白変性阻害できれば、水晶体は透明に維持できると考えできたのでピノレキシンです。水晶体の水溶蛋白であるクリスタルと結合することを競合的に結合して、水溶性蛋白クリスタルの変性を防止する効果があります。そのため水晶体が白くなる前あたりの白内障には効果がある場合も考えられます。
 しかし当院では進行してから来院する場合が多く、良くなったことはありません。

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オクルベット

 海外にある動物用白内障点眼のオクルベットは薬価も高く効能が期待されましたが、劇的な変化はなく、当院では現在使用してません。
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  日本人は薬好きで、オーナーの方はなにかしてあげられることを探す方がおられます。しかし長期の点眼は防腐剤の影響も考慮しなければなりません。またサプリメントなども長期の毒性はよくかかっていない製品もあります。イヌの白内障はサプリメントで治ることを期待してしまっていることが多いですが有効な製品はありません。どうしても薬剤・点眼を使用する場合は担当獣医師と副作用などよく注意する必要があります。
 
 白内障は希に生体の反応で、水晶体の濁りが消えることがあります。なぜおきるかは詳細は不明ですが、白内障が治ったと勘違いすることがありますが、この状態は吸収と言って治った訳ではありません。水晶体レンズは薄い状態になっています。
 このような症例がたまたまサプリメント・また点眼をしていると、サプリメントの00が、点眼00が白内障に効果あるなどミスインホメーションが流れていると筆者は考えています。

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唯一治せる可能性があるのは手術のみです。
(筆者の動物病院では白内障の手術はできません。動物の眼科専門病院の紹介になります。)

 しかし動物では白内障の手術は高額でことも事実です。また年齢が高いと他にも持病があり、手術できない場合もあります。

■人の眼科の看板 
 みなさんも町を歩いていると、このような看板はよく見るとおもいます。
 この眼科病院に限らず、どの人の眼科の看板をみても、「日帰り白内障手術可能」の記載はありますが、白内障が点眼で治る看板はありません。
 残念ながら人も犬も完治には手術しかありません。

 白内障はオーナーもよく目に付き、そのためなにかしてあげたいというオーナー心理で、サプリメントや簡単に手に入る点眼が重宝しすぎる傾向があります。
 
 また人は老年性の白内障が主で進行が遅いですが、動物の白内障は遺伝性など若いうちにおき進行が早いケースもあります。

 ◆サプリメントや手に入る点眼をおこなっても良いですが、必ず動物の眼のことを知っている獣医師を受診して進めてください。
 オーナーがよしとしてやったケースが悪化したと推定されるケースを以下にあげます。
①動物用に販売されている薬剤をどこからか手に入れ悪化したケース
②白内障点眼をしていて安心してしまって悪化したメース
③また緑内障で「眼が白い」のを白内障と勘違いして来院が遅くなったケースなどがあります。

 ケースにもよりますが以上の理由で動物の眼科が好きな獣医師はサプリメントや簡単に手に入る点眼は薦めないケースが多いです。未熟白内障までなら、無処置もひとつの選択肢です。

 ◆進行して成熟白内障からは水晶体誘発性ブドウ膜炎を回避できるような使用する薬物は医療用薬品になりますので、獣医師の指導が必要です。

 ◆なお犬では稀に水晶体誘発性ブドウ膜炎が調節されて見た目白内障が治ったようにみえることもあります。
 ネットなどではこのことを「000サプリメントで白内障が治ると」形容していると推測していますが、この状態は水晶体は萎縮して良い状態とはいえません。
 また水晶体嚢は残っているので、この先なにかおきる可能性はあると筆者は推測しています。

■白内障の薬剤

◆人の研究ですが水晶体の成分は55-65%が水です。
◇そして白内障がおきると増加する成分として
水分、不溶性蛋白(ピノレキシンで低下)、過酸化脂質、Na、Ca(唾液腺ホルモンはCa低下)、アルドース還元酵素(ソルビトール産生阻害剤でアルドース還元酵素を抑える。)

◇減少する成分では、水溶性蛋白(チオプロニン製剤で増加)、還元型グルタチオン(タチオン点眼で増加)、K、ビタミンC、Na-kATPアーゼ、Ca-ATPアーゼ

◇抗酸化剤で(唾液腺ホルモン・アスタキサンチン・ルティン)が使用されています。

が報告されています。

なお赤い字は人の白内障に使用されている薬剤名を示します。
他にも使用された薬剤はあります。

◆しかし
このようにたくさん薬剤があげるのは、著効な薬剤がない証拠でもあります。


■成分名 ピノレキシン  
 写真の白内障点眼のピノレキシンの作用機序 
 白内障発症のメカニズムで1960年代の「キノイド仮説」が注目されました。
 
 ◆トルプトファンやチロシンの有機アミノ酸の代謝異常で生じるキノイドが、水晶体の水溶蛋白であるクリスタルが変性して不溶化することで水晶体が濁る考え方です。
 そこでキノイドの蛋白変性阻害できれば、水晶体は透明に維持できると考えできたのでピノレキシンです。
 水晶体の水溶蛋白であるクリスタルと結合することを競合的に結合して、水溶性蛋白クリスタルの変性を防止する効果があります。
 
 ◆この薬剤は人の老化性の白内障が適応です。老化性の白内障は作用がゆっくりなタイプです。
 そのため人では水晶体が少し白くなった位の白内障には効果がある場合も考えられます。
 
 ◆動物で遺伝性など幼犬より白内障は診られ、進行が早いことが特徴でこの薬剤は不向きと考えられます。
 また長期投与は防腐剤のことも考慮しないといけません。

■アスタキサンチンAstaxanthin
 アスタキサンチンはルティンの2.75倍の抗酸化力があるとの報告もあり、その高い抗酸化力から、人同様にペットの健康維持、老化防止の効果も期待されています。
 臨床的に白内障が治ることはありません。

■ルテイン 
 ルテインは、カロテノイドという色素の一種で野菜や果物、海草などの食品に含まれます。
 
 眼は特に活性酸素の害を受けやすいところです。ルテインは強力な抗酸化剤として活性酸素を抑え、眼の健康補助食品として注目されています。

■その他抗白内障薬
 セレン、ビタミンE、オルゴテイン、アスコルビン酸亜鉛、アセチルカルノシリンなど色々なサプリメント・薬剤の記載はありますが

◆臨床効果を示す証がなく、試験管内のみのデーターが主体です。
 
 未熟白内障での使用なら可能ですが、進行が早い場合もあり、眼の診療が好きな獣医師によく診せる必要はあります。
 
 しつこいようですが、白内障は手術で治る病気です。
抗白内障薬の点眼やサプリメントで絶対安心しないでください。

 成熟白内障からは使用する薬物は医療用薬品になりますので、獣医師の指導が必要です。


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投稿者: オダガワ動物病院

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