■犬フィラリア
■心臓に感染している犬フィラリアの標本(目黒寄生虫博物館)
フィラリアとは蚊の媒介により犬の心臓や肺の血管に寄生し、血液中の栄養分を吸って生きている糸状の長さ約17~28センチの寄生虫です。犬では主に肺動脈にも寄生し、全身の血液循環や内臓にも深刻な障害を与える恐ろしい寄生虫です。動物は短命になる傾向が多く、20-25年前は5-6才でこの病気でなくなる犬も多くいました。
現在では予防薬の普及ため本院では殆ど診ない病気になっています。そのためフィラリアのことを知らないオーナーをもどきどき訪れるケースもあり、 「フイラリアはなぜ予防が必要か」と質問されることもあります。
フィラリアは犬・フェレットでかかりやすい病気です。猫も多い見解もあります。
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■予防法
蚊で媒介されるため、蚊の発生時期に併せて予防薬を投与することで可能です。
予防薬を本院で希望する場合は必ず犬ちゃんをお連れく頂き、フィラリアの血液検査が必要です。理由はフィラリア検査が陽性の個体に予防薬を飲ませると重傷な副作用がでることがあるためです。
フィラリアの血液検査が陰性の場合に限り、予防薬の投与になります。
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フィラリア検査、陰性の場合はこちらへ
本院のある川崎市多摩区近郊なら、蚊のでるシーズン(5月-11月または12月間)に①月1回の経口投与薬、②皮膚への滴下剤で予防できます。また③年1回投与のフィラリアの注射でも予防できます。
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■フィラリア検査
■犬フィラリア抗原検査キット
この検査がどの動物病院でも多く使用されています。
■犬のフィラリア感染は犬フィラリア抗原検査キットで診断します。
最も感度の高い検査です。
写真の左がフィラリア陰性、右がフィラリア陽性になります。
〇の部分に血液を1-2滴たらし、試薬をいれると3分位で結果がわかります。
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■ヘマトクリット毛細管、集中法によるフィラリア検査
■ヘマトクリット毛細管のバフィーコート部分を顕微鏡で拡大します。
■ミクロフィラリアの顕微鏡所見
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■血液の直接鏡検によるフィラリア検査
このように血液中のミクロフィラリアを直接顕微鏡で診ることもできます。フィラリアの親虫は雄と雌がいて交尾してこのような仔虫(ミクロフィラリア)ができます。
まとめ 集中法、直接法はフィラリアをリアルに診られますが。
欠点は検出率が落ちます。そのため上記した犬フィラリア抗原検査キットが動物病院では使用されています。
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■蚊の予防について
日本ではアカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、カラツイエカ、ネッタイイエカ、ヨツボシイエカ、トウゴウヤブカ、ヒトスジシマカ、キンイロヤブカ、ネッタイシマカ、ホッコクヤブカ、アカンヤブカ、チシマヤブカ、カラフトヤブカ、シナハマダラカ、アシマダラヌマカ、合計16種類の蚊がフィラリアを媒介します。
2014年秋にデング熱で世間を騒がせたヒトスジシマカも冬になると気温に耐えられいため卵で越冬します。小さな水たまりなどがあればどこでも産卵す性質があり、卵の状態で冬の寒さに耐え、春になり気温が上がると2-3日して、卵が孵りボウフラになり、ヒトスジシマカの成虫に成長します。秋期にヒトスジシマカが卵を産みつけやすい場所のひとつに植木鉢の受け皿があります。よくブラシなどで落とすことをお薦めします。体長は約5mmで、明るい間に活動し、夜は活動しません。本州(東北南部以南)から四国・九州に分布しています。余談ですが、来年、卵からデング熱のウイルスをもったヒトスジシマカに成長する確率は0.2%あるそうです。
チカイエカは冬でも活発に活動し、ヒトを刺すことは証明されています。そのため動物も同様なことがおきていると推測されます。主に夜間に吸血します。吸血しなくても1回は産卵することができる習性があります。発生箇所は、ビルの地下の水たまり、地下鉄の線路わきの溝、マンホール、自動販売機の回りなどです。そのため季節を問わずチカイエカに刺されないためには個人での予防はできません。室内に入ったところを殺虫することがベストで、リキッド型の蚊取り器を蚊が侵入する窓際へ設置することをお薦めします。またチカイエカも水周りに集まる習性があるため、室内なら台所付近にも設置すると有効性がより高まります。リキッド型の蚊取り器は、ペットへの影響は少ないとされていますが、詳細は使用メーカーにお尋ねください。またあまりにチカイエカが多い環境で動物を飼育している方は、年中のフィラリア予防薬の投与をお薦めします。これまで25年間獣医をしていて、5-11月にフィラリア予防薬をのましても2例フィラリアの感染経験がありますが、この蚊が原因ではと推測しています。体長は約5mmで九州、四国、本州の都市及びその近郊に分布します。沖縄での報告はされていません。
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