小鳥、ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモットと小動物の専門的な診療を続けてきた動物病院です。
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2014.10.05更新

■人の例、点眼液以外を点眼したケース
 動物では聞いたことはありませんが、ヒトで実際あったケースです。
 
 一番右の青の薬剤はパニマイシンという点眼薬です。
 一番左のラキソベロンは便秘薬で水溶性の経口薬剤です。
入れ物が似ているのでヒトで誤って、この便秘薬を点眼してしまったケースもあるそうです。そのため写真が小さく見にくいですが、ラキソベロンの上に「眼に入れないこと」と記載されています。

 そのため真ん中のニゾラールは次のように開口部を変化させました。

■ニゾラールの工夫
 前記のような誤使用例が人ではあるので、ニゾラールローション(写真)(本来は外用の坑真菌剤)は薬剤の出るところをトロッコボール状にして、点眼剤とはまず間違わないような形式をとりました。

■点眼薬メーカーが処方された点眼を正しく使用できているか、人を対象におこなったアンケートの結果です。

 ◆正しい人への点眼薬の使用法は
①「目をパチパチさせない」可能から涙管を抑える。
②「1回に1滴だけ点眼する」
③「複数の目薬をさすときは5分以上の間隔をあける」
④ 点眼時に眉毛・睫毛に触れない、点眼薬を清潔にあつかう
という4原則守ることが大切です。また点眼後5分間は目を閉じて薬の成分を浸透させます。
 

 しかし調査では適切な点眼を実行している人はわずか5.8%です。

 ①点眼後、目をパチパチさせる方がで多く、目をパチパチさせると「目薬が目全体や患部に行き渡ると思うから」と勘違いしているみたです。
 
 ②眼薬の1滴は眼の中で効果ある適切な量ですが、3人に1人が2滴以上を点眼して過剰点眼でした。
 一部点眼液の説明書に1回1-2滴点眼の記載もありますが、点眼を失敗した場合も考慮して記載されています。
 点眼は1滴で十分です。2滴点眼すると、2倍の効果なんて誤ったことは考えないで下さい。

 ③また2種類以上の眼薬を処方された場合、約5分以上の間隔を空けていない人も37.2%いました。

 ①②③の誤った方法で点眼すると、薬が眼から外に流れ出てしま い、十分な効果が得られません。

 ④また点眼メーカーに製品に異物が混入していたとクレームを付けた方もいたそうです。
 点眼液は薬事法で滅菌が義務ずけられており、点眼メーカーの点眼薬に異物は入ることはありません。
 たぶんこの方は眉毛・睫毛に点眼の先をつけてしまって異物が混ざったと推測されます。
 また点眼のキャップは清潔な場所に置くか、自身で持って点眼してください。キャップに付着したばい菌が点眼液に入ります。

 また一般的に点眼液は封を切ったら清潔に保管して1ヶ月以内の使用になります。
(薬剤により保管場所、有効期間は異なります。詳細は処方されたかたにお尋ね下さい。)

■まとめ 
 以上、ヒトが点眼薬を処方される場合も医師、薬剤師から点眼法は指示されますが意外と守られていません。

■では動物の点眼法は
 動物により眼の大きさが異なり、また協力的でない場合もあり人より数段大変です。
 
 しかし①の「目をパチパチさせない」、可能から涙管を抑える。
これを動物で実施することはむりですが、点眼をおこなう場合に最大の効果を出す努力は必要です。
 
 回数・量・複数点眼のルールがわからず「正しい点眼」ができないで、眼が悪くなっている場合も診ます。
 
 オーナーはペットが眼の病気だと眼薬の処方を期待する傾向があります。
 
 しかし協力的でない動物や目が小さい動物は点眼をしない選択も重要です。

 
■点眼量 
 上記したように、人の点眼液のメーカーの説明書には片目に1回1-2滴との記載が多く書かれていますが、基本的に1回1滴で十分です。 
 メーカーの説明書には点眼に失敗した場合も想定内に入れて多く書いてあります。

 ◆ペットのオーナーは早く疾患を治したいと考え
動物に1回2-3滴点眼した方も診たこともありますが早く治りません。悪くなる可能性があるのみです。
 
 
 目の病気によっては点眼の回数は多くなる場合もあります。
動物眼科を知っている獣医師とよくインホームドコンセントをとって進めてください。

■正しい点眼法 ヒトとの相違 
 犬・猫・うさぎは人と眼の大きさが変わりませんので、上記のように1滴で十分です。 
 本院では猫は写真のように動物の後ろに回って上眼瞼に点眼するよう説明させていただています。
 
(写真の解説)ヒトでは点眼のキャップは点眼に使用しない片手に夾み床に置かないように指導されます。キャップは床に置くとばい菌が内側に付き点眼薬を汚染するためです。
 
 しかし協力的でない動物は写真のようにキャップを片手に夾めまない場合が多いです。そのためキャップはなるべく綺麗な所において下さい。 

 またヒトでは眉毛と点眼開口部位が付かないよう指導をうけます。動物も同様で、眉毛から点眼薬にばい菌は入る可能性があり、注意しておこなって下さい。
 しかし点眼を嫌がる場合もあり、なかなかヒトのようにうまくはいきません。

■点眼の注意 
 当然ですが点眼液は眼に入って効果を示します。
周りの皮膚についても効能は示しません。

 眼から点眼液が溢れたり、またうまく点眼ができないで周りの皮膚についた場合は動物用のコットン(写真)でふいてください。
 
 ほおっておくと、痒みを誘発して、眼の回りがはげてしまったケースもあります(下記参照)。
 
 動物の性格がきつく、点眼できないときは掛かり付けの獣医師に早く相談してください。
 経口薬への変更などその動物の症状・性格にあったアドバイスをしてくれるとおもいます。

■他院での、誤った点眼法① 
 3種類の点眼液を1日5回、点眼間に5分のインターバルをとらないで、3週間点眼した眼の写真です。(モルモット)
 セカンドオピニオンで本院を訪れました。

 眼けんの毛が点眼の影響ではげています。
基礎疾患は不明ですが、点眼を中止したところ回復しました。

■眼軟膏 
 眼の中に入れる軟膏です。眼の周りに塗る薬ではありません。
特徴は粘稠製があるため、回数が点眼液に比べて少なく済みます。

 眼軟膏は眼の中に3-4mm入れると結膜嚢に貯まり効力を示します。一部能書記載の7-10mmは必要ないと考えています。

 薬剤師に聞いた話ですが、人ではご年配の方で間違えて眼の周りに誤って眼軟膏を塗布してしまうケースは多いそうです。

 残念ですが同様に動物でも眼の周りに誤った塗布を指示する獣医師の症例はときどき診ます。 

 眼軟膏は眼の中に入れて眼の粘膜から吸収して効力を示すように設定されています。

 皮膚の軟膏は皮膚から吸収されて効力を発生できるように設定されており

 両者は別ものです。似ているのは入れ物だけです。

 次項ではその相違を詳細に説明します。

■眼軟膏と皮膚軟膏の設定について 
 眼軟膏と皮膚軟膏の相違を含有されているステロイド製剤を例に説明します。

 眼科・耳科用のリンデロンA軟膏はステロイドはベタメタゾンリン酸エステルが主成分でステロイドのランクではDランクと弱い薬剤です。
 この軟膏は眼の中や・結膜に塗布して粘膜で吸収します。副作用を少なくして、眼の病変に効能のあるような弱い薬剤設定になっています。
 またリンデロンA軟膏は眼科用を含むので無菌製剤が薬事法で必要とされています。(眼科用はすべて無菌製剤)
 そして眼に塗り易いようにノズルが鋭敏になっています。

 リンデロンVG軟膏のステロイドはベタメタゾン吉草酸エステルでステロイドのランクではBランクになりやや強い薬剤です。
 一般に皮膚のステロイド軟膏は顔・体幹などの皮膚の厚さにより設定が異なり、塗布により吸収されて皮膚病に効能を示す強さの薬剤が含有されています。
 またリンデロンVG軟膏は皮膚製剤なので滅菌は薬事法で必要ありません。
   
 これらは共に成分名に「ベタメダゾン」が使用され、また製薬にはワセリンがベースなので、眼軟膏も皮膚軟膏も同じように見える薬剤ですが使用部位を間違えることは禁忌です。
 間違えて皮膚の設定の薬剤を眼に塗布した場合、効能が強すぎるステロイドなので副作用が予想されます。
 逆に眼軟膏のリンデロンA軟膏を皮膚に塗布した場合は、皮膚の病変では弱すぎるステロイドになり効果が少ないと推察されます。 
 
 また軟膏製剤は本来毛のない人用に出来ています。毛のある動物の皮膚に直接軟膏を使用すると炎症を起こす場合もあります。

 以上より
①眼軟膏は眼の回りの皮膚に塗布する薬剤でないこと、
②また薬剤がないからと言って安易に皮膚軟膏を眼に塗布するとこが禁忌である理由は了解頂けると思います。
次項では本院で経験した実際のケースを紹介します。

 臨床家から見た困った点は、これら薬剤は写真のように名前・形式も似ていて、注意して見ないと製品によっては、眼軟膏と皮膚軟膏の区別はつきにくい点です。
 製薬会社で名称・包装はわかりやすくできないものかと思います。

■他院でも誤った眼軟膏の使用例②
 別の動物病院で眼の回りに眼軟膏を塗布するように指示され、セカンドオピニオンで本院を受診したウサギです。
 
眼軟膏の塗布が長期になるとこのように酷くなります。 

■軟膏製剤の他施設の誤使用例③・ 皮膚軟膏の眼への塗布 
 他の動物病院で皮膚軟膏をオーナーに1回のみの説明で1年半も眼に塗布たケースにも遭遇しました。
 
 この症例はドライアイの犬で、当時この薬剤は眼科用がなく皮膚軟膏を処方したと推察されます。

 上記のタクロリムスを点眼すると、涙が多くでることはありますが、前述したように製薬が異なり皮膚用を眼に塗布することは禁忌です。 当然眼に対する毒性は不明で、皮膚軟膏を眼に塗布して副作用がでた場合どうするのか、疑問の処方です。
 
 なおこの症例は皮膚軟膏でドライアイが改善された訳でもありません。効果も示していないのになぜ長期にこのうな免疫抑制のある皮膚用薬剤を眼に塗布を指示するのか疑問です。
 






 



作者: オダガワ動物病院